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死なないアフリカ、チュニジアは正常化へ:アフリカにおけるコロナ状況(その7)

アフリカにおける国別感染者数、検査数、検査陽性率、致死率、人工呼吸器数、ICU病床数やロックダウンの状況などを以下のサイトにまとめ、毎週日曜日に更新しています。

ここでは、これら情報への補足として、前回の記事からの推移をまとめてみます。なお、現時点の主要数値は次のとおりです。

【アフリカ大陸全体の感染状況(6月7日時点)】
累積感染者数: 183,437人
百万人あたり累積感染者数: 144人
感染者DT: 19日(先週と同数)
致死率平均: 3%(先週と同率)


ポイントとしては3つ。
・感染者は引き続き増加しているものの、指数関数的に増える様子はいまだ見られず、「感染初期のオーバーシュート」は避けられた様子
・致死率はあいかわらず3%。アフリカの感染死亡は、欧米型でなくアジア型で、人は死なない
チュニジアはピークアウトし、日常が復活。空港再開も間近

こちらが、新規感染者の推移(7日間移動平均)です。すでに1週間の新規感染者数が10人台にまで減っているチュニジアは、ピークアウトしたといっていいように思います。これに従いチュニジア政府は6月8日、夜間外出禁止を解除し、主要な行動規制を終了させました。陸空海の国境も6月27日から再開するとしています。夏のバカンスシーズンの観光に間に合う算段です。

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一方で、南アとエジプトは増え続けていますね。これに、人口2億人を抱えるナイジェリアが追随しており、累積感染者数ではこの3カ国がトップです。

増え続けているとして、これは、どれくらい心配するべき増え方なのでしょうか。アフリカの状況をわかりやすくするために、他国と比較してみたいと思います。

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米国や英国、ロシア(インドの影に隠れている青い線)は、最初の30日で急拡大が起こり、その後少しずつ新規感染者数が減少していくという推移をたどっています。

一方で、南アフリカ、エジプト、ナイジェリアは、伸びが直線です。最初にエジプトで感染者が発見された2月14日から100日以上が過ぎましたが、いまのところずっと伸び方は緩やかです。

これは、他のアフリカの国についても言えます。下のグラフは累積感染者数の推移です。ときに特定の国で一気に感染者が増えることがありますが、倍加日数が1週間を切る、つまり1週間で2倍以上のペースで拡大する(グラフではグレーの線)ことはまれです。

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アフリカについてはひとまず、米国や英国で見られたような、感染の初期におきる指数関数的増加は防げた、オーバーシュートによる医療崩壊や社会システムの壊滅は起こらずに済んだといってよいのではないでしょうか。まだ感染者がほとんどいない時期から対策をとったことが功を奏したのではないかと思います。

当初よりアフリカが心配され、悲観されていた理由は、英国やイタリアのように感染者が指数関数的に増えると、アフリカの医療体制では対応しきれず、治療ができない人や他の疾病患者の死亡が積み上がってしまうからだったと思います。

未知のウイルスですから、これから感染者が急拡大する可能性もあり、今後何が起こるかは分かりませんが、当初心配されていた「対策がとれないままの急拡大」の事態は避けられたのだと思います。

アフリカがコロナにどう対応してきたか、これまで書いた記事はこちらからまとめてご覧になれます。

ただそうはいっても、先のグラフのアフリカ上位3カ国+ケニアもそうですし、アフリカの大半の国も、まだぐんぐん感染者数は伸びており、日本やシンガポール、マレーシアのように新規感染者数が減じる傾向は見られません。インドやブラジルとも類似した伸び方です。

死亡者についてはどうでしょうか。同じ国々との比較でみると、このようになります。

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以下の表でみた方がわかりやすいですね。アフリカ各国の致死率(感染者あたり死亡者の比率)を高い順に並び替えました。濃い赤が致死率5%以上、ピンクが2~4%、グレーが1%未満の国です。

検査数など、各国の感染者洗い出し方法に影響しない、死亡率(人口100万人あたり死亡者数)も併記しています。

致死率順一覧_20200609

アフリカ全体の致死率は3%、この数値は初期からほとんど変わっていません。そしてこの数値は、5%である日本よりも低いです。感染者が増えても、死亡する人の数は一定のレンジに収まっているといえます。医療設備が整っている日本より、アフリカの方が、いまのところ致死率が低いのも不思議な話です。

百万人あたりの死亡者数は4人。シンガポール、マレーシア、インドといったアジアの国々と数値が似ています。少なくとも、百万人あたり死亡者数が300人や600人もいる米国、英国、イタリアとはまったく様相が違います。

アフリカではなぜ死亡が少ないのでしょうか。理由としては、人口構成が若年層に偏っていることや、アジアと同様に風土病や、またはBCGワクチン接種/結核の罹患により免疫が備わっていることなどが仮説として挙げられていますが、まだわかっていません。

致死率を地図にしてみると、北西で高く、南東で低い傾向が見られます。

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死亡率についてみると、高い国はアルジェリア、モーリタニア、エジプト、ガボン・・・となるとやはり北西が高いか、と思いそうですが、南アフリカとジブチもアフリカの中では高いです。なぜこのような分布になるのか、理由は不明です。

アフリカの今後については、感染者が増えていくのは当分止められないように思います。空港再開を決めたのは、前述のチュニジアと、タンザニア以外はないものの、各国は国内の行動規制は少しずつ再開させています。夜間外出禁止の時間帯を短くしたり、場所ごとに移動の制限を解除したりといった具合です。

タンザニアは、行動規制や入国制限はコロナの感染を防ぐの役立たないばかりか、経済を停滞させるだけであるという立場をとっています。

ロックダウン_20200608

南アフリカは、3月26日からかなり厳しいロックダウンを行いました。その後、警戒レベルを5段階に分け、レベルに応じて行動規制を緩めるとうガイドラインに従って、5月1日からは特定業種の事業活動が許されるレベル4に、6月1日からはほぼすべての業種で事業活動が許され、通勤も可能となるレベル3へと緩和されました。

その間の新規感染者の推移は次のようになっており、やはり、人の活動が増えるに従い、感染者も増えています。

南ア新規感染者_20200609

ただ、それでも、人は(それほど)死んでいません。南アフリカの致死率は2%、交通事故死が年間1万人起こる国で、1,000人未満です。

アフリカの感染者数のピークは、8月、9月、または来年1月だという説もあります。おおそらくこの調子で、急拡大しないもののじわじわと増え続ける状況が続き、ベッドや医療品、検査機器が不足したり、新たに調達したりということに苦労しながら、ぎりぎりで回しながら、持ちこたえていくというシナリオになるのではないかと思います。

これまでアフリカの国々は、感染者はすべて施設入所にて治療してきましたが、軽症者については自宅治療とする方針をケニアが打ち出しました。今後これに続く国がでてくると思います。

南アフリカは、地域コミュニティーで積極的に検査を行い、今日まで累計92万件、百万人あたり1.6万件という規模で検査を行ってきました(ちなみに日本の百万人あたり検査数は2463件)。ただし、すでにテストをさばくことができなくなっており、検査対象を入院患者と医療関係者だけにするべきだという意見がでています。

なお、現時点のアフリカ各国のICU床数、人工呼吸器などについては、こちらをご覧ください。

致死率、死亡率がいまの数値におさまっている限り、他の疾病や経済的な理由で人が死ぬのを防ぐため、経済や日常業務を復活させていくのが正解なのではないでしょうか。

実際、たとえば私がいるケニアでは、人の動きも車の数も店舗の開店具合も、通常ともうほとんど同じ、少なくとも7~8割程度までは戻っています。街の中心部の様子です。

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当社のナイジェリアスタッフが送ってくれた、ラゴス最大のマーケットの様子。

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ヘッダーの画像はジンバブエです。季節になると、日本の桜のように、この紫のジャカランダの花が咲き乱れます。しばらくの間、私がZoomの背景にしているアフリカ各地の写真コレクションをおひろめしてきいたいと思います笑。

アフリカのコロナ感染に関する情報は、今後も以下のページで毎週更新していきます。


なお、最新情報はこちらです。その8まで書きました。


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アフリカビジネスパートナーズ 代表パートナー ( https://abp.co.jp ) / ケニア在住 / twitter: @umemotoyukari, @ABP_Africa /Facebook AfricaBusinessPartners