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コロナに関する意識行動調査 (1)ケニアの結果

このコロナ禍の中、アフリカの人々はどのように暮らし、何を考えているのでしょうか。当社のオンライン調査システムを使って、ケニアとナイジェリアでクイックに調査をしてみました。

まずは、ケニアの結果です。

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この調査は、ナイロビ首都圏がロックダウン(他との交通の遮断、外出は夜間のみ禁止)を開始した4月6日の1週間後に行われました。対象者はロックダウンの対象となったナイロビ首都圏在住者です。

こちらにも書いたとおり、アフリカ各国政府は感染者が少ないうちから、かなりクイックに先手先手で対応を行ってきました。そしていまのところは、こちらに書いたように、感染者数も少なく留まっています。

不便を強いられているナイロビの人々ですが、政府の感染対策への信任はいまのところ厚いようです。81%の人が、政府のやりかたはうまくいっていると評価しています。ケニアでは、毎日保健大臣や責任者がブリーフィングを行い、感染者数などの事実の公表と政府の対策のアナウンスを行っています。

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人々は政府のアナウンスに従って、実際に対策をとっているようです。9割の人が手洗いをふだんより頻繁に行っており、6割を超える人がマスクをし、ソーシャルディスタンスを実践していると答えています。ただ、完全に家にこもってでかけないと回答した人は16%にとどまります。

この記事のトップ画像は、いまナイロビのあちこちで販売されている、現地の布を使ったマスクです。地元のテーラーさんが作ったこのような布マスクを使う人の比率がだんだん増えてきています。

田舎で過ごすとした人が10%存在しています。政府は、都市住民が例年田舎に戻って過ごすイースターホリデー前にナイロビを封鎖し、いまは田舎に帰るなとアナウンスしましたが、この数を多いとみるか少ないと見るか。ホリデーだけでなく、ナイロビには家族を田舎に置いて出稼ぎにきている人も多いです。ナイロビでの収入が減れば、そういう人たちは田舎に戻りたいでしょう。

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感染対策には信任をおいているものの、一方で、政府の経済支援には不満です。ケニア政府はVAT(日本の消費税にあたる)の2%減税や所得税の減税、各種給付などを矢継ぎ早に発表しいるものの、73%の人が満足のいくものではないと答えています。

というのも、コロナ禍が始まって以来、家計は影響を受けています。

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データでも伺われますが、周囲を見渡しても解雇はまだ広範には起こっていないため、被雇用者は現状の収入を維持していますが、個人事業主/カジュアルワーカーの人たちは、レストランが夜間外出禁止で閉まったり、店舗が臨時休業したり、ソーシャルディスタンスの施行で人通りが減ったりすることで、生活に影響を受けています。

また、ケニアでコロナ感染者が発見される前からも、中国における感染拡大で輸出が止まり、商売に影響を受けた人も多くいます。

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「感染するかもしれない」という心配事がトップで7割を超えています。ふだんから他の感染症や命の危険に囲まれているにも関わらず、世界におけるコロナの感染拡大はケニアの人々を不安にさせています。ただ、まだ身近に感染者が発生するほどの数ではないこともあり、人々の心配は「感染するかもしれない」という点に留まり、重症化して自分や家族が亡くなるかもしれないというところまでは至っていないように見えます。

収入を失うことや、国の経済自体が悪化することが、次に大きな心配ごとです。こちらはより差し迫った目に見える危機でしょう。

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コロナによって生活に影響を受けたことで、使用をはじめたり、増えたりしたものとして、モバイルマネーが7割を超える比率で選ばれています。ナイロビに住む人でモバイルマネーを使ったことがない人はほぼいませんから、使用が増えたということでしょう。最大手通信会社サファリコムは、政府が感染を防ぐためにモバイルマネーの使用を推奨したときから、1000ksh(約1000円)未満の送金の手数料を無料としており、そのことも影響しているかもしれません。

次に増えているのはWhatsApp、Zoomなどのオンラインコミュニケーションツールの使用で、5割の人が増えたと答えています。人と会うのを避けている人が5割以上いましたが、コミュニケーションはオンラインに移行して継続して行われていそうです。

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5月にはほぼ解決するという回答が37%にも上ります。世界のメディアでは、アフリカでは感染者が1000万人になる、30万人が死ぬといった報道が相次ぎ、むしろこれから感染が広がると見られているかと思いますが、実際にまだあまり感染者が増えていないという現状に基づいているのか、ケニアの人々は楽観的にも見えます。

一方で、これが常からのスタンスだとも言えます。選挙、暴動やテロ、エボラやコレラ、水害に水不足と、生活を脅かすできごとは常にあり、それらに常に対応してきた人々からすると、今回のコロナ禍も、いまにはじまったことではない、同じようにやり過ごすだけだとも感じられるのかもしれません。

以上がケニアの結果です。ナイジェリアの結果は以下となります。

ケニア、ナイジェリアの調査の結果の要旨と、引用の方法やお問い合わせ先については、以下をご覧ください。


当調査の回答者は、オンライン調査ということで、スマホまたはインターネットにつなげる携帯を持っている人、英語が読める人となります。世帯収入は25,000Ksh(約25,000円)以下が5割を占めており、もっとも貧しい層の人たちではないが、ナイロビにおいて平均的な収入・暮らしぶりの人たちと言えるでしょう。年齢は20代と30代が中心ですが、ケニアの中位年齢は20.1歳で、20歳以上人口に占める20代と30代の割合は64%に上るため、人口構成上のマジョリティの層であるといえます。

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調査方式: オンライン調査。アフリカビジネスパートナーズのオンライン調査システムを用いて、パネル(会員)を中心に調査。回答者は携帯のWhatsAppを通じて回答
調査対象地域: ロックダウンが行われたナイロビ都市圏(ナイロビ郊外:37%、Nairobi East:22%、Nairobi South:13%など)
サンプル数: 119ss
調査期間: 2020年4月12日~14日


追記: この調査結果が、ケニアのトップビジネス紙、Business Dailyに掲載されました。ケニアの人々が5月には事態はよくなると回答しているのは楽観的であることや、人々が接触を避けるためにモバイルマネーの使用を増やしていること、政府の感染防止政策を支持していることなどが取り上げられています。

BusinessDayの記事の内容や、この調査結果の英文レポートなどは、以下からご覧ください。 




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