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アフリカにおける新型コロナウイルスの状況(その3)感染者の増え方

今朝起きると、日本からたくさんのメッセージが入っていました。きっと、この記事がでたからです。

「1万人にもなったらしいじゃないか」「54カ国中52カ国だって!」「アフリカで爆発的に増えているそうだけど大丈夫?」と周囲の人を心配させてしまったのですが、コロナ始まってこのかた、アフリカに関する報道は、「情報が荒すぎ」かつ「調べてなさすぎ」です。

アフリカ54カ国(55カ国)の中には、医療が比較的整った国もあればまったく心もとない国もあり、また同じ国の中でも都市部と農村部は大きく状況が違います。

コロナの不幸中の幸いは、エボラのようにアフリカの中で・地方から発生する感染症ではなく、外からやってくるもの(=空港封鎖などが有効)で、人口密度が高い都市部でリスクが高い(=相対的に医療設備が整っているので検査も治療もできる)点です。

アフリカがもしパンデミックになったら、他の地域よりも被害が大きいことは、誰でも想像がつきます。しかし、もう少し冷静にいきましょう。おおかみがくるぞーと騒いでいるだけでは、おおかみの襲来を予想できませんし、防げません。

この日経の記事の中で書かれている以下の記述が正しくないことは、

南アフリカは3月末に外出を禁止する「ロックダウン(都市封鎖)」を始めたほか、ケニアも首都ナイロビへの入境を禁止した。ナイジェリア最大都市のラゴスでは競技場を感染者の隔離施設として利用し始めた。ただ、こうした対策をとったのは一部の国にとどまる。

こちらを読んでくださった方にはおわかりと思います。

リンク先にあるように、アフリカの多くの国が、全国ロックダウンや都市部ロックダウンを含む厳しい対策を3月中旬から下旬にかけて矢継ぎ早に決定しました。リンク先の記事を4月2日以降更新していなかったのは、その頃にはもうほとんどの国が、空港封鎖、国境封鎖、都市部の外出禁止/夜間外出禁止、交通規制を行ってしまって、更新の意味がなくなってしまったからです。

あまり厳しい規制をしていない国もあります。カメルーン、タンザニア、ザンビアなどは他の国と比較して厳しくないと言えるでしょう。厳しくない国の方が一部なので、「こうした対策をとっていないのは一部の国にとどまる」が正確なところです。

どうも多くの人が、アフリカの政治家は、正しい状況認識もできずとるべき対策もとれていないという思い込みがあるようですが、こと今回に関しては、かなりしっかりと、かつスピーディーに対応しています。

3月中旬~末に決めた期限が迫り、先週から今週にかけては、多くの国がロックダウン(外出禁止+交通禁止)を延長しました。おおむね5月にむけて、感染の増え方をみていくという状況になっています。

4月18日時点の主要国のロックダウン状況

ロックダウン_20200418


それでは、実際の感染者の「増え方」はどのような状況でしょうか。アフリカが危険な状況に向かっているかどうかは、増え方で判断するのがよいと思います。

アフリカ55カ国のDAY1(感染者が初めて見つかった日)からの累積感染者数を調べ、その推移を片対数グラフにしました。縦軸が累積感染者数、横軸が各国で1人目の感染者が見つかった日からの経過日数です。直線に引かれた点線の線は、1週間で倍になるスピードで増えた場合の傾きを示します。
(初出のグラフからDouble every weekの傾きを修正しています)

Confirmed cases more than 50_20200414_修正

同じようなグラフは、世界の国のデータで作成されていますが、こちらがFinancial Timesが作成した、3月25日時点の同様のグラフです。

スクリーンショット 2020-04-15 07.27.12

日本(水色)の上にある直線が、同じく1週間で倍になる傾きです。2つのグラフを見比べると、アフリカの現在は、日本の3月25日時点と近い増え方をしている国が多く(全部ではありません。いかんせん55カ国ありますから。。。)、かつまだ1週間に2倍になる程度の増え方であるといえます。現時点では(あくまで現時点では、ですが)、イタリアやアメリカ、イギリスのようにはなっておらず、危機的な拡大は起こっていないと言えそうです。

同じデータを使って、日本企業の拠点数が多い上位10カ国に6カ国を加えた計16カ国のみでグラフを作りました。あわせて、ロックダウンを開始した日にちに星印を付けています。

Confirmed cases Selected 16_20200414_修正

日本企業がアフリカのどこに拠点をおいているかは、以下からわかります。

このグラフをみると、南アフリカやナイジェリアはロックダウンを機に感染者の拡大ペースが緩やかになっていることが分かります。一方で、エジプト、アルジェリア、モロッコの北アフリカ勢はまだ増えるペースが収まってはいません。モロッコは早くからロックダウンを行っていますがあまり効果がないようです。ケニア、ウガンダ、ルワンダ、モーリシャスの東アフリカ各国では、増え方が一定に収まりつつあります。

ただもちろん、これからについては、わかりません。いま増え方が急でないことは、今後もそうであることを約束しません。

このまま増え方が緩やかになってグラフの傾きが下がっていけばよいですが、世界において落ち着いたとみせてその後感染者が急増した国々の例があるように、アフリカも同じようになってしまう可能性はあります。厳しい規制をとっているものの、どこかで穴が空きなにかをきっかけに爆発的に感染が広がってしまうことは十分ありえます。

そうなったときのリスクの大きさが分かっているからこそ、アフリカ各国の政府は感染者がまだ少ないうちから、空港を封鎖したり外出を禁止したりしてきたのだと思います。

私がいまいるケニアでも、夜19時以降は外出禁止で、ナイロビ都市圏とそれ以外の行き来はできないのに加え、レストランはデリバリーのみ、バスや店など公共の場でのマスク着用は義務付けられています(みんなマスクしています)。政府は戸別訪問をしたりイミグレのデータを用いたりして感染者の洗い出しを徹底しています。保健大臣や大統領が毎日会見し、情報を公開するとともに、自分がすでに陽性で、まわりの人もみんな陽性だという前提で動いてくれ、と呼びかけています。

今回のコロナは、初期のまだ感染者が少ない段階での対応が抑え込みの成否を分けるとも言われています。そうであったとして、自国の医療システムや経済力に自信がある世界の強国よりも、早期に臆病な対応をとることができた、自国の弱点を知っているアフリカの国々の方がむしろ被害が少なくて済んだ。。。という結末になればいいな、と思っています(ただの願望です)。


次の記事では、実際に現地の人々を対象に行った緊急調査から、人々が自国政府の対応をどう思っていて、個人としてどのような対策をとっているのか、みてみたいと思います。

※写真は、エチオピアのアビー首相のツイッターから拝借しました。閣僚会議をテレビ会議に切り替えた際の写真とのことで、3月27日にアップされました。以下のツイッターも約3週間前になりますが、アフリカではソーシャルディスタンスの徹底がこのころすでにアナウンスされていました。


今回の感染拡大の影響を受けて、アフリカ事業の事業計画再考や出張計画の変更が必要となった企業の方々へ、サービスを提供しています。

また、このような状況を受けて、キャリアチェンジをお考えの方に、試験的に短期就労を行っていただけるよう、ご案内を行っています。


追記(4月26日): 最新の情報を新しい記事にまとめました。アフリカにおける感染者数や検査数、死亡率やDTについて一覧にしています。累積感染者の片対数グラフも最新データで更新しています。


さらに追記(5月13日):最新の状況を以下に書きました。コロナによって逆に死亡者が減少している南アや、ケニアの様子を記事にしました。
思ったより感染が拡大していないアフリカ。。。なぜでしょうか。


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