『桃花源記』雑感:向はんとすれば即ち背く
一陶淵明の著した『桃花源記』が、中国文学や中国文学史研究でどう扱はれてゐるのか、私は知らない。以下に記す事は、中国文学については全くの素人である私が『桃花源記』を読む中で抱いた感想である。
『桃花源記』の粗筋は次の様なものである。中国の晋の時代に、武陵といふ場所に或る漁師がゐた。或る日、漁師は谷川に沿つて航行する内に、どれ位進んだのか忘れたところ、一面に桃の花が咲き誇る林に出逢つた。漁師は林の奥へ進み、山の口を見つけてそこを通り、桃源郷へと辿り着いた。桃源郷の人々は外界から