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夜道を帰る中で

今年度に入ってから、できる限り定時で帰るようにしていた。超勤が続くと、健康によくないと考えるようになったからである。しかしここ数週間は何かと慌しい。年度内に幾つかある繁忙期の一つが来たらしい。それもあって、今日は帰るのが遅くなった。

最近は日が長くなってきたので、午後6時頃であれば、まだ周囲は明るい。しかし午後8時近くになると、日も沈んで、辺りが暗くなっている。その暗い夜道を、歩いて帰った。

久々に夜道を歩いてみると、周囲の音がよく聞こえてきた。水が張られた田んぼからは、蛙の合唱が聞こえてくる。道脇の草むらからは、虫の音色が聞こえてくる。

固定電話のコール音を聞いても、急かされるような感じがするばかりであるが、カエルの合唱や虫の音色を聞いていると、心が落ち着いてくる。どちらも音である筈だが、こうも感じ方が異なるというのは、不思議なものである。

帰り道には街灯が少ないため、ライトは必需品である。ライトを点けて、こちらの存在を自動車や自転車の乗り手に伝え、事故を防ぐ。これが一般に考えられている所の、夜道でライトが必要な理由であろう。しかし今日の帰り道では、思わぬ形でライトに助けられた。

ライトの照らした所を見ると、何やら細長いものがある。距離が縮まっていくと、その正体が判明した。三角形の頭と、特徴的な模様をした、小さな蛇であった。恐らくマムシだったと思う。かなり小さかったので、幼体だったのかもしれない。けれどもライトの光を当てると、口を大きく開き、牙を見せて威嚇してきた。すぐに蛇から離れたので、咬まれることなく済んだ。

ライトを持っていなければ、蛇の存在に気が付かなかっただろう。予想していた形ではないけれども、ライトの効用を確認した夜道であった。








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