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今年は、僕の中の小さな花を咲かせるための努力を続けたい。

花弁の内側が外側よりも生長が盛んであれば蕾が開くという事実が、僕たちの小説形成の生理に示唆を与えるような気がするのだ。
上林暁「小説を書きながらの感想」

 僕が上林暁という戦中〜戦後に活躍した作家の存在を知ったのは、京都市左京区にある古書善行堂さんの影響である。
 古書善行堂さんについては、このnoteで何回も書いているが、古本ソムリエという異名を持つ山本善行さんが店主をつとめる古書店だ。
 善行さんの一番のお気に入り作家が上林暁である。
 ただ、この昭和の作家の作品を新刊本書店で見かけることは、ない。
 僕が善行堂さんに関心を持つきっかけの一つは、夏葉社という出版社の存在だ。
 島田潤一郎さんが一人で経営されている一人出版社で、これまで魅力的な本を次々と出版されており、本好きの間では有名な出版社だ。
 夏葉社の本も僕の近所にある新刊書店ではお目にかかったことがない。
 いわゆる「こだわりのある本屋さん」にしか置いていないのだ。僕は夏葉社の本が読みたくてネットで検索していたときに、善行堂さんのホームページを見つけた。
 善行堂さんには、「善行堂倶楽部」という仕組みがあって、リクエストに応じて、「古本ソムリエ」の善行さんが選書した本を送ってくださる。
 僕は「夏葉社の本」をリクエストした。
 そんなことがあり、やがて僕は古書善行堂さんに定期的に通うようになった。
 そこで、善行さんから、上林暁という作家を教えていただいたのだ。
 冒頭の一文は、善行堂さんで買った「上林暁 傑作随筆集 故郷の本棚」(夏葉社・山本善行選)から拾ったものだ。

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 僕はこの随筆集を年末から少しずつ読み始めて今、読み終わったところ。
 上林の随筆は、昭和の文壇の雰囲気や上林の人柄が感じられて、どれも味わい深いものだった。
 さすが、善行さんが選んだベストだけのことはある。
 なかでも、僕はこの随筆集の最後に収録されている「小説を書きながらの感想」に最も惹かれた。
 上林が自身の作家活動の中で感じたことを綴っているんだけど、冒頭に引用した一文が特に印象的だった。
 花の蕾は、内側の生長が外側のそれを超えたときに花開くという。
 これは作家の内面の成長が作品のそれを超えたときに、初めて作家として花開くということの例えだろう。
 なにものかを創造しようとする人=クリエイターは、常に自分の内面に栄養を与え続け、自分自身の感性を磨き続けないといけない。
 そして、内面からこぼれ落ちるように生まれた作品だけが、人々に共感を呼び起こす。
 毎日noteを書き続けることも凄いけど、ぼくにはできない。続けているうちに自分の文章がスカスカになっていくような感じがする。
 読書や映画、音楽などを通じて、日々の暮らしに彩りを添えながら、心の底から沸き上がってくる、本当に書きたいと思ったことを書く。そんなスタイルで、僕は書き続けていきたい。
 そして、いつの日か僕にも小さな花が咲く日がくるといいな。
 そんなふうに思う新年の始まりである。

 
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