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開高健のコテコテ文学を読む。
昨日、開高健(かいこう たけし)という作家の作品集を読み終えました。
手帳を読み返してみると、今年の1月に初めて開高さんの文学に触れて、たまたま2冊目の開高作品を昨日読み終えたことになります。
そういう意味では、今年は開高健に始まり、開高健に終わるとも言え、偶然とはいうものの、なんだかうれしい気分にもなるものです。
開高さんは1930年に生まれ、1989年に59歳で逝去されました。大阪の生まれで、サントリーでコピーライターとして活躍された後、28歳のときに「裸の王様」で芥川賞を受賞し、本格的に作家として活動を開始されました。
僕が開高さんの文章と出会ったきっかけは、昨年、鬱で体調を崩して半年間仕事を休んだことでした。
もともと本を読むことが好きな僕は、不本意ながらも、まとまった時間ができたこの機会に、普段読めない本を読もうと思い、図書館に行きました。
そこで出会ったのが池澤夏樹氏が編纂された日本文学全集(河出書房)です。
全30巻のこの全集を休んでいる間に全部読もうと思ったんですが、その中の一冊に開高健さんの巻がありました。
この全集に収録されている「輝ける闇」は、ベトナム戦争に関するルポタージュ文学となっていて、開高さんは実際にベトナム戦争の最前線に行って体験されたことをもとに創作されています。
そして、昨日読み終えたのが、ちくま日本文学全集・開高健です。
こちらには、「ベトナム戦記」が収録されていました。
どちらの作品にも共通しているのは、汗や土の臭い、汗ばんだ服の感触などを詳細に描くことで、戦地のねっとりした、澱んだ雰囲気をリアルに映し出す文体の力です。
戦争の最前線にいる兵士の日常。
そこには戦いの緊張感だけではなく、戦いに倦んだ兵士の日常があります。
米軍の兵士たちはコオロギを2匹、ザルに入れて死ぬまで戦わせます。それを見て盛り上がっている兵士たちも明日の生命は分かりません。
そのような兵士たちの日常を開高さんは丹念に描き出します。
その筆致は濃厚そのもの。濃すぎて胸焼けしそうなくらいです。
開高さんの趣味は釣りだったようです。
ちくま全集に収録されている「まずミミズを釣ること」「河は呼んでいる」は、釣りをテーマにした魅力的なエッセイです。
戦記もの、釣りものに共通しているのは、生き物が放つ生命の圧倒的な存在感です。
生きるということは決して綺麗なことばかりではありません。
ギラギラとした脂、ムッと鼻をつく臭い、それら不潔極まりない状況も含めて、すべてが生きるということだと開高さんは伝えてくれていると感じました。
日本人は綺麗好きだとよく言われますが、コロナ禍で手洗いが今まで以上に奨励され、ウイルスや菌に敏感になっている日常の中で、このコテコテの開高文学は、独特の魅力を放っています。
僕の記事を読んで気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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