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(5/5ページ)息子の卒園でつらい幼稚園ロス~悩んだからこその思い入れ~

卒園後、1人だけブルー

卒園式が終わり、数日がたった。

息子はもういつも通りに過ごしている。
卒園の寂しさの訴えもなけりゃ、入学のワクワクや不安の態度も垣間見えない。

でも自分はというと、もうこの先通園することがなくなったことを受け入れられずにいた。

卒園式で園児が合唱した「たいせつなともだち」。

卒園後も息子は自分たちで合唱した曲に思い入れがあるのか、その曲をよく流している。
それを聴くだけで、思い出してしまう。

(ダメだ!)

そのたびに感情を抑え込み、他のことを考えるようにしている。
きっと、誰もいない中この曲なんか聴いたら、涙腺瞬殺必至だ。

妻はどう思っているかわからないが、平然としているように見えていた。

そう。家族で自分一人だけ、卒園のせつなさをいつまでも引きずっていたのだ。

泣きたいときは泣くしかない。
恋人と別れた後の傷心旅行みたいなのを考えないと。

そんな時、自分はいつもわざとその時の気持ちに同調するような場所に行ったり、曲を聴いたりして、自分の中に溜まったものを吐き出している。

(この幼稚園ロスも、同じやり方で清算しないと。。。)

絶対、何もしないままでは終われないと思った。

幼稚園ロスを吐き出す【傷心旅行】

幼稚園の思い出と言えば?の問いかけに最初に出てきたのが運動会。
プレクラス当初から本入園児と一緒に参加できるもので、入園後初めての園外イベントだったから、自分の中でも思い入れが強い。

その運動会は、少し離れた場所の民営体育館で行われたのだが、そこに行って『たいせつなともだち』を聴いて思い切り吐き出そう。
そうするのが良いと思った。

というか、こんなことしてるの、世の中で俺一人だろう。
でも、いいんだ。
俺はプロの変わり者だから。

プレクラスの時、運動会は午後から行われた。
昼食は体育館近くのファストフード店だったので、当時と同じルートでバイクを走らせ、思い出に浸った。

ファストフード店で食事をしながらドキドキしていた当時を思い出し、フルフェイスメットの中でジーンとこみ上げてきた。

『あの時、すごく心配だったな・・・』

当時の気持ちを再現しながら、自分の心をえぐった。
そのまま体育館まで足を運び、バイクを停めて近くまで行った。

懐かしい・・・


体育館の門の前で曲を流し、前奏から歌い手がワンフレーズ歌い始めたとき、目から滝のように涙が溢れてきた。
「待ってました!」とでも言わんばかりに。

そして、そのまま体育館前のタイル地の上に崩れ落ち、子供のように泣きじゃくった。

自分の卒園・卒業式なんて一滴も涙なんて出てこなかったのに、なんで!?
幼稚園に通って頑張ったのは息子なのに、なんで!?
自分のことじゃないのに…

不思議でたまらない。

あのとき、このスロープの上で園児と親子で並んで開場待ちしてたなぁ・・・
そのとき、こんな景色だったよな・・・
当時とちっとも変わらない・・・

なんて懐かしいんだ…
懐かしすぎて、胸が締め付けられる。

あの頃の記憶が鮮明に蘇ってくる。
初めてのイベントでどうなるか、ドキドキだったあの頃。
なんだかんだ心配しながらも親子3人でイベントを楽しんでいた。

周りには人っこ一人いないのをいいことに、感情を出しまくった。
溢れ出す思い出に、とめどなく流れる涙。
目隠しのサングラスが役に立たないぐらいだった。

『俺たち親のことまで楽しませてくれてありがとうな。』
『息子の成長を感動とともに届けてくれてありがとうな。』

誰に向けたわけでもなく、あの時の出来事に対して感謝しながら泣いた。
どんなにあがいても、当時の出来事には二度と会えない。
楽しませてもらったあの出来事には。

それは、自分の青春時代もそうであるはずなのに。

一体、何が違うんだ?
なんでこんなに辛いんだ・・・

息子の成長は喜ばしいことなのに、その副作用とでも言うのか?

それにしては大きすぎる。

そしたら、息子のことは妻任せにして、自分はのめり込まないほうが良かったのか?
それなら、こんなに思い入れが強くならなかったのか?
でも、そんなことできるわけがない。俺の息子のことだから。

幼稚園はもう終わり。終わったんだ。
思い入れが強かったからこそ、失った喪失感は計り知れなかった。

まだ気持ちの整理がつかなかった自分は、2日目の傷心旅行を計画した。

年長の時に行った宿泊保育
年中の時の遠足

どちらも保護者は行ったことのない場所で、バイクツーリングを名目にどんなところか見たかったのもあった。


『息子、ここまで来てたのか。』

写真で見た通りの景色だったが、どこか新鮮味があった。

『ここで楽しませてもらってたんだな。』

幼稚園に対する感謝でいっぱいになった。

親の自分たちにとっても思い出詰まった幼稚園生活。いくつものシーンが頭を駆け巡り、時々目が潤んだ。

思い出の品とのお別れ

お別れはそれだけじゃない。
家の中だって整理しなくちゃいけない。

4年間お世話になった学用品、妻はそのまま捨てようとした。

そのまま無視したほうが良いか・・・

だけど、自分にはそれができなかった。
捨てたらゴミとして焼却されて永遠に葬り去られて終わり。
かといって、いつまでも家に置いておくわけにもいかない。

だったら、リサイクルに出そう。
そうすることが、4年間お世話になったものへのせめてもの恩返しになるんじゃないか。

そう考えた自分はゴミ箱から拾い上げ、リサイクルとして分別した。

普通ならスパッと捨てられるだろうけれど、俺にはどうしてもできない!
思い出詰まった学用品。じーっと眺めていると、寂しさを感じてしまう。

だから、リサイクル回収日の前日、袋に詰められた「彼ら」を抱え上げ、

『4年も長い間、ありがとうな。
明日でお別れだけど、ちゃんと再利用してもらうんだぞ!
新しい物に生まれ変わったら、大事に使ってもらえよ!』

声をかけた。

回収日の朝、後ろ髪を引かれる思いで学用品を手放し、詰められた袋が見えなくなるまで振り返って出勤に向かった。
家へ帰ってきて、回収されたのを見ると、

『もう、ここには居ないんだな・・・』

やっぱり寂しい気持ちになった。

スモックや体操服なんかは、実は私がアイロンをかけたりしていた。
シミのついたスモック、数か所穴の開いた体操服。
毎日「彼ら」の姿を見てきて、それが急にいなくなるわけだから。

世のお母さんたちもそうなのだろうか?
いや、ここまでの気持ちにはならないだろう。
そうなったとしても、こんな行動しないだろう。。

やっぱり変わってる、俺は。
でも良いんだ!
誰からどう思われようと、こうしないと気が済まない。

ケジメの時

今一つ気持ちが落ち着かないまま入学式の前々日になった。
家の整理も終わったし、もういい加減小学校モードに切り替えなきゃいけない。

本当は喜ばしいことなんだから。

その日の夜、最後に幼稚園を拝んでおこうと思い、クルマを走らせた。


ブロック塀から見える園舎に向かって声をかけた。

『4年も長い間、息子のことありがとうな!』
『入園させてくれてありがとうな!』

もう、お別れなんだ。
明後日には小学校の門をくぐる。

ホント、時間って容赦ない。
何があっても待ってはくれない。
どんなに怖い借金取り立てなんかよりもずっと情がない。

最後にもう一度、心の中をえぐろうとあの曲を流しながら園の周りをまわった。
だけれど、あまりグッとくることもなかった。
気持ちの整理がつきつつあるのか。

さすがに俺もいつまでもしんみりはしてられない。
心を鬼にしたい。いや、しなきゃ!

クルマの車室から、もう一度園舎に向けて声を張った。

『ホント!今までありがとう!
俺たち親のことまで楽しませてくれて。
最高の4年間だったよ!!

絶対に、ずっと、ずっとずっと、この思い出は忘れないからな!

いっぱい楽しませてもらったけど、もうお別れだ。
正直まだつらいけど、じゃあ・・・』

まるで、二度と会うことのない友人に最後の一言を残すように。

そして、卒園式の時に幼稚園からもらった記念の花の苗、花に興味がない自分ですら愛おしいと思ってしまう。
だけれど花の命は永遠じゃない。だから、それもいつかは枯れてしまう。
その頃にはまたひっそり泣いてるかもしれない。


自分の情けなさ。弱さに笑ってしまう。
息子はすでに前を向いているのに、俺ってホント弱い・・・

自慢じゃないけど、小学校でイジメに遭っていた時も、学校でも家でも外でも泣かなかった。
俺は本当はこんなはずじゃない。
子供のころ、ほとんど泣かなかったのが今こうして反動として現れているのだろうか。。

息子はやがて入学式も終わって1年生デビューした。
一度入学式の雰囲気を味わってしまえば、少しは気持ちも前を向いた。

これから先の出来事が幼稚園での思い出を塗り替えられるぐらい実りあるものとなりますように・・・

『ありがとう!幼稚園』

心の中で何度も繰り返し、思い出の1ページを閉じた。

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