「異国への旅」をテーマに選ぶ、香りのアイテム7選 −前半− | 香りの記録 #01
旅が好きで、香りを嗅ぐのも好き。
だから、旅にまつわるフレグランスが家の中に増えてきたのも必然かもしれない。
でも、香りが好きと言っておきながら香水をたくさん持っているわけではなくて。
好きなので機会があればたくさん嗅いでみるのだけれど、本当に自分の中に溶け込めるものはほんの一部なのだと思う。
今回は旅の思い出やいつか行きたい場所などをテーマに、五感を使って大切に集めた7つの香りたちを紹介。
1. シチリアの朝食の思い出 /
Narcisse Taormina 《COLAZIONE A TAORMINA》
初夏にシチリアに行った。カプリ島までは行ったことがあったけれど、それより南は初めて。そしてリゾート地で有名なタオルミーナに着いてすぐ、この香りに出会った。
空港から送ってくれた気のいい運転手さんと別れホテルに入った瞬間、嗅いだことのない甘くて良い香りが。
甘い香りに釣られて辿っていくと、ロビーの机に置かれたこのルームフレグランスを見つけたのだった。(ホテルに置かれていたのはこの何倍も大きいサイズだった)
“colazione taormina”は、タオルミーナでの朝食という意味。
まさに、焼きたての甘いパンとか、お日様の匂い、ちょっとカスタード、そして甘いフルーツなんかを彷彿とさせる匂いに感じた。
答え合わせをしてみると。
コーヒー、粉砂糖って、なんて幸せなミドルノートだろう。
ほんのりフルーティーな甘さを感じたのはホワイトローズだったようだ。系統でいうと今注目の、いわゆるグルマン系。
タオルミーナは崖の街で、海の近くのホテルからケーブルカーで崖の上の市街地に出掛けることができる。
崖の上、きらきらした海を望む石畳の街に、小ぢんまりとしたNarcisseの店舗はあった。
いろいろ他も試してみたのだけれど、やっぱりあの香りが印象的で忘れられない。なんと言っても、初めて嗅いだ甘い香り。この街のシグネチャーフレグランスということもあって、はるばる家まで持って帰って来たのだった。
その後、家族が自宅に遊びに来るタイミングで封を開けて、シチリアの思い出と共にこの香りも紹介した。
数ヶ月が経って残りわずかになった今も、玄関で時々海の街での幸せな滞在を思い出させてくれる。
シチリアについては今後たっぷり旅行記を書く予定。
2. みんな大好き、都会のお店の香り / Dr. Vranjes Firenze 《ROSSO NOBILE》
イタリアつながりでもう1つ。
この香りは、実際に嗅いだことがあって大好きという人も多いはず。
今や有名店のDr. Vranjesの代表的な香りの1つで、初めに嗅いだのは東京。たぶんどこかしらのセレクトショップだったような気がする。
店舗に入った途端に上品な甘い葡萄の香りがして、香りの元を辿ると足元にそれはそれは大きなロッソ・ノービレのディフューザーを見つけたのだった。
その後、都会の様々なショップや商業施設でこの香りに出会えるようになったけれど、いまだに何度嗅いでも幸せに浸ってしまう。
こんなに良い香りはさすがに買わなくてはならないと思って自宅用ディフューザーも購入し、今は詰め替え用を何本もリピートしている。
ちなみにこちら、赤ワインの香り、タンニンのアロマということだけれど、家では「あの葡萄のいい匂いのやつ」と呼ばれている。
たまたま私が大好きなモデルさんも家で同じように呼んでいると知って、ちょっと親しみが湧いた。
落ち着く高貴な香りなので、今は寝室用。
3. ベトナム、港湾都市の海風 /
Diptyque 《DO SON》
実はこれは貰ったもので、自分で選んでいない数少ない香水の1つでもある。
家族が出張に行く際に何か欲しいものはあるかと聞かれたけれど、特に何も思いつかず。
「じゃあもし何かいい香りのものがあったら」と言ったところ、買ってきてくれたお土産に入っていたもの。
これが、私にとってはとても面白い体験になった。
初めて香りを嗅いだとき、蘭のような濃厚な花の香りが広がって、お花のいい香りだ、と思った。でも、自分じゃない。たとえば街ですれ違った誰か綺麗な人の香りで、自分がつけているところが想像できない、ファーストコンタクトではそう直感した。
とはいえ良い香りなので、時々この小さくてずっしりした入れ物を開け閉めして香っているうちに、蓋に描かれている帆船と竹のようなデザインの方が気になってきた。そもそもド・ソンって、なんだろう。
ド・ソンに与えられたストーリーは、次のようなものだった。
比較的最近のこと、Diptyqueからド・ソンのショートムービーも公開されている。
いろいろ語るよりも見て感じる方が早いと思うけれど、印象的な色彩で描かれるメゾン創設者の幼少期の思い出。少年の手元にはチュベローズの花と、雲丹の抜け殻が。湾を吹き抜ける海風が、物語を前に進めるキーワードのようだ。
なるほど、ほのかに香っていたマリン系の香りは、ベトナムの潮風だったのか。
フランス人の少年が異国ベトナムで感じた思い出の風景と聞けば、外国に住んでいる身としてちょっとだけ思いを重ねる部分もあり。
いつの間にかこの香りは他の誰かの香りではなくなって、ぐっと身近に感じることができるようになっていた。
練り香水なので、肌のあたたかいところに直接載せるとまろやかに香る。
数時間もするとほんのり感じる程度になってしまうけれど、その控えめなところがちょうど良くて、最近外出の際にはもっぱらこれを気に入ってつけている。
蓋に描かれたベトナムの帆船の風景は、私の中でいつか見てみたい景色の1つに仲間入りした。
「異国への旅」をテーマに選ぶ、香りのアイテム7選 −後半− に続きます。
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