見出し画像

夕暮れに ひとり 鮎漁師の呟き

焼けて行く空を眺めながら
ひとり...

鮎漁の道具 シュノーケルに刺網に曳舟


黙々と 鮎の腹を出している
テトラの隙間に腰掛けて

夕焼け小焼けが流れてから
かなり経つ...

日暮れが早くなったのを感じながら...

それにしても我が漁場は 面白い

何故?

水が枯れるから....

天然遡上鮎が遡る
水の美しい景色を魅せる川

雨が少なく 田んぼの実りが重なる頃
水が 枯れる
上流の漁場でもある水門で
水を絞るからである

魚達は 水がなければ 生きれない
土用隠れも重なり 深みに集まる

夕刻 刺網を入れてみた
まるで 鮎の生簀の中にいる様で....

天然遡上鮎だらけ

“聞いてくださいよ...”

食通の人が呟く
“岐阜の天然鮎の有名店を訪ね 天然鮎を
頼んだら こんな小さな鮎で
2000円も したんですよ”

“そんなもんでしょ”

目の前に居る 天然遡上鮎を 市場に流したら
経済が動くのだから....

瀬尻の 水の澄んだところ

細糸の刺網
やはり 見えにくいのか いっぱい掛かっている
一匹一匹丁寧に 外して曳舟へ

一度に 獲れすぎた....
腹出しが 終わらない

気がつくと 空はすっかり茜色

あっという間に 夕闇がやって来るから
帰ろう.....

投光器を準備し 庭の片隅で
冷え冷えの鮎の腹を抜く
終わらない....

全て腹を出し
次は フリーザパックに小分けしていく
冷たいうちに 冷凍庫へ.....


その日の朝....

“今日も いっぱいありがとう御座います”
郵便局の窓口 
鮎好きのおばちゃんは “羨ましい”と
いつも呟く
今朝は 六キロほど あちこちに贈った


空いた冷凍庫に 獲れたばかりの
天然遡上鮎を 並べていく

六キロ贈って
七キロ獲れた.....
川の神さまは 程よく鮎を分けてくれる

獲っては 贈り
獲っては 贈り

“ずっと そうしていろ”って.....

鮎柱祭りも そろそろ終盤

夕刻 漁場に出かけ
日付が変わる二時間前
全ての 鮎が 冷凍庫へ

甘露煮を摘みながら noteを描いて
一日が終わる...

鮎漁師 浮世雲拝
夕暮れにひとり....


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?