私が「人材紹介会社のウラ側」をお伝えしていきたい理由について。中編
こんばんは。齋藤亜瑚です。お仕事お疲れ様です。
「人材紹介会社のウラ側」について、何故私が書きたいと強く思っているかについて、前編はこちらです。
IT業界特化の紹介会社で働き始めた頃、最初に面談した時のことは忘れられません。相談に来た方が突然ぽろぽろと涙をこぼされたのです。(註;男性です)
「大手のRとかIとかの人材会社でキャリア相談しても、こんなに親身に話を聞いてくれた、寄り添ってくれたコンサルタントなんて誰もいなかった…」
その後も何度か、面談時に登録者が泣いてしまうことが続きました。「また齋藤さんがキャンディデイトを泣かせたよ」と社員にからかわれたりもしました。
当然、意図して泣かせようと仕向けていたわけではありませんでしたが、【私はちゃんと転職者に寄り添えている、ちゃんと共感できている】と、間違った満足感を覚えていたかもしれません。
案の定、一生懸命真面目に取り組んでいるのに、全く売上が上がりませんでした。最初の売上が上がったのは、入社後4か月もたった時のこと。
成果に応じてインセンティブが支給されるので、売上が上がらないと、お給料は手取りで14万円程です。(厳しかった…)
今ならわかります。
キャリアコンサルタントは、カウンセラーではありません。だから、転職者に「寄り添っている場合ではない」のです。人生相談の場ではないので、悩みに寄り添って転職者を泣かせている場合ではなかったのです。
大手の人材会社のコンサルタントが、「話を親身になって聞いてくれなかった」それは当たり前なのです。
入社して3か月目に、受講していたJCDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー資格)の最終試験に合格したと社長に伝えた時、社長は言いました。
「齋藤さん、もう、その資格のことは忘れてください。勉強したことは全部捨ててください」
社長は、私にカウンセラーではなく「キャリアコンサルタント」になるよう促したのだと思います。
人材紹介会社のキャリアコンサルタントは、「転職者にとって良い会社を紹介する」にとらわれてはダメで、「より売り上げを上げやすい会社を提案し、『受けたい』と言わせる仕事」であり、内定したら、自社の案件で内定受諾の意思決定をさせることが仕事」です。
後頭部をガツンと殴られたような気持ちになりました。
キャリアコンサルタントの仕事は、苛酷でした。心の底から嬉しい、やりがいがあると思えるのは一年に2、3度あるかどうか。土日祝日なんて関係なく、心が休まる暇などほとんどありません。新婚旅行先のオーストラリアに会社のパソコンを持って行ったのも今では良い思い出?です。
「齋藤さんから紹介された会社が第一希望です!」と言っていた転職者のために、散々人事に掛け合い、ようやく内定を知らせる電話を架けたら、いともあっさりと「実は●●から△△△万円のオファーをいただいたのでそちらに行くことにしました。ありがとうございました」と言われる。なんてことは日常茶飯事。
どんなにこちらが時間を掛けたところで、内定を勝ち取ったところで、入社してくれなかったら報酬はゼロ。人間不信になって辞める人もかなり多いと聞きます。
本当に不思議な仕事だと思います。
それでも、「今まで全く書類が通らなかったのに、齋藤さんのアドバイスで書類をブラッシュアップしてみたら、書類が通るようになりました!」とか、「面接練習の通りに話してみたら、急に面接に通るようになりました!」と言われることが嬉しくて、がむしゃらに頑張り数年が過ぎた頃。
新卒で入社した携帯電話を作っていた会社が「希望退職者を募っている」というニュースを目にします。一時期は世界一位のシェアを獲得したこともあった製品もあったというのに、アップルのiPhoneの登場とともにそのシェアを大きく奪われ、利用者は携帯電話からスマートフォンに乗り換え。その大きな波に乗ることができず、ライバル企業と合併したりの紆余曲折を経て、結局会社自体が無くなってしまったのです。
あんなに、みんなそれこそ命を削って一生懸命頑張って働いていたのに。
ほんの10数年程前に「●●●に入社すれば、一生安泰」と言われていた会社が、あっさり市場から淘汰されたことに衝撃を受けるとともに、同期がどうしているか心配になりました。
当時一緒に働いていた先輩がたまたま上京し、会社の様子を教えてくれました。全国の事業所に社員はバラバラに異動させられ、異動先のない社員は「再就職支援会社の指導を受けても、自分が会社を去らなければいけないことが受け入れられずに立ち止ったままの人が多い」と。そのまま退職し、音信不通になっている人も多いと言います。
もし、私が結婚して上京することなくあのまま地元で過ごしていたら、確実に仕事を続けていたはずで、市場に淘汰された会社から「あなたは要らないです」と言われた張本人だったかもしれない。
40代でいきなり会社に放り出されて、それまでひとつの会社だけでスキルをこつこつ磨いてきた人たちの心情を思うと居てもたってもいられなくなりました。
「自分が今まで人材紹介会社で見聞きしたノウハウや、転職のちょっとしたコツを、そういう人たちの役に立つ情報として発信していくことはできないだろうか?」そういう思いが芽生えた瞬間でした。
後編に続きます!おやすみなさい。
齋藤亜瑚
よろしければサポートを是非お願いします。現在医療介護系の人材会社に所属しつつ、これまで経験してきたことを「転職しようと思ったこともないひとたち」「転職活動したことがないひとたち」が「転職せざるを得なくなってしまった」ひとに還元できるようにしたいと思い活動を始めました。