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AM4:00に泣きながら卵焼きを作ったことがあるかい?

まず勘違いさせないために伝えておきたいのは、この話は泣ける話ではありません。
Amazon Primeで視聴した『シェフは名探偵』がめちゃくちゃ良かった!という話です。

↑こちらの作品。


この作品の良さを伝えるためには、僕が”どういう人間”で、”どのような状況”で試聴したのか、というポイントは大事だと考えている。

例えば、この作品は絶対泣けるよ!と言われた作品が、失恋をテーマとした作品だとして、勧めてくれたその子は失恋したばかりで感情移入しやすかったけど、フラットな状態で見た自分はイマイチ入り込めなかった。

こんなことってよくあると思う。


というわけで、

昨日のこと。時刻はAM3:00。
僕は、静まり返るダイニングキッチンにコソコソと食材を並べて準備を始めていた。

また眠れない病が発動してしまったので、イヤイヤ期の息子用のごはんの仕込みを始めようとしていたのだ。

↓第一弾はこちら

事前に妻から食べさせたい食材のリクエストを聞いておいた。
今回は”なす、キャベツ、卵”だった。

お肉は鳥の胸肉が買ってあったので、それを加えてメニューを考える。

メニューは

  • ほんのり甘い卵焼き(にんじん入り)

  • ナスと鶏肉の味噌そぼろ

  • ナスと玉ねぎの甘煮

  • キャベツと海苔のチヂミ

  • 鶏肉とキャベツの照り焼き

こんな感じにした。

前回は無音の中の調理で少し寂しかったので、せっかくならワイヤレスイヤホンで映画でも見ながら料理することにした。

そこで見つけたのが『シェフは名探偵』だった。

主演の西島秀俊さんってかっこいい。好きだ。

西島秀俊さんとか、加瀬亮さんとか、天沢聖司とか、見た瞬間に憧れて真似したくなるから、少しかっこよさを自重して欲しい。

その後、自分の存在の痛さで受けた精神ダメージは計り知れないって知ってた?。

⋯⋯慰謝料請求しますよ?


そんな感じでキャストが良いことは分かったので、僕は再生ボタンを押して、料理をスタートしたのだった。



視聴して数秒。

これは正解だ。

何が良いって、料理への真剣さが伝わってくる。

小さなレストランだけど、本気で、真摯に、丁寧に1品の料理に向き合っている演出になっている。

開始数秒、でだ。


僕は個人的に”本気でやってる料理場面”が大好物だ。

なぜなら、そこには『愛』があるから。

その人の好みを考えて料理する。

オーブンの温度、茹で具合、塩加減、料理はこだわり始めたら終わりがない。
これが良い。

食べた人には違いが分からないかもしれない。
でも伝わる。
分からないけど伝わる。

これってもう『愛』でしょ。


『シェフは名探偵』もこだわりが感じられる本気のレストランを舞台としている。

料理をしている僕のテンションも上がる。

ナスは皮付きで食べられるようになったから、全部皮付きで茹でよう、と思ったけど、ピーラーを使って皮付きと皮なしの部分が両方できるように下処理を変えた。
挑戦する部分と、食べやすい部分、両方あったほうが妻も食べさせやすいだろう。


『シェフは名探偵』は、濱田岳さんが演じる新人ギャルソン(ウェイター)の視点でストーリーが進んでいく。

この濱田岳さんがまた良い。

新人役なので視聴者の代弁者でもある役だけど、自然にチームに溶け込む。
その演技に違和感がない。
この違和感がない演技が天才的。
視聴者目線の役割ってめちゃくちゃ難しいと思う。
つまんなすぎてもダメだし、違和感が出るほどの個性も出しちゃダメ。

周りのスタッフが個性的なので、コメディ風のやりとりが面白い。
巻き込まれる形の濱田岳さんの演技が自然で、料理中の僕も自然とクスッと笑っていた。


ストーリーの本筋は、

レストランに訪れた”事情を抱えたお客様”に料理長の西島秀俊さんが料理を通じて”お節介”を焼いていく。時には料理関係なくグイグイと空気を読まずに突っ込んでいく。
しかも天然で。

これがまた良い。

憎めない。

そんなこと聞く!?

このタイミングで!?

みたいなやりとりがあるのだが、瞬間的に許せる。

これは西島秀俊さんの演技 + 雰囲気の演出 が素晴らしい。

ちゃんと険悪にはなるのに、視聴者には負担させない。
感情移入の絶妙な距離感がある。
これ意図的だったら怖いよ。演出さん。
マインドコントロールできるよ。演出さん。


演出?というか構成?というか、もう1つ好きなポイントがある。

伏線の回収が早め。深さも絶妙。

これ、サクッと見たいミステリーの最重要ポイント。
個人的に、この作品はミステリーというよりヒューマンドラマだと思ってますが。

僕みたいに料理の片手間で視聴している人には最高。

『シェフは名探偵』というぐらいなので、料理長の西島秀俊さんがコナンばりの速さで異変に気づく演出がある。

ここで、伏線が貼られるのだが、僕としては
「なんだなんだ?何か気づいたぞ」
ぐらいでしかない。

ただ、ちゃんと気になってはいる。

そして、その回収は早めだ。

深さもちょうど良い。
完全に答えが出る前ぐらいで、流し見している僕でも気付ける。
答えの少し前だったとしても、「そういうことか!」って気付けると気持ち良い。



で、肝心のストーリー。

1話にいくつかのサブストーリーを絡めた構成になっていて、『シェフは名探偵』は最後のお客さんのストーリーに入っていた。


僕の料理フェーズも終盤に入っていた。

あとは

ほんのり甘い卵焼き(にんじん入り)

を作るだけになった。


ストーリー内容について詳しくは割愛するが、

まもなく閉店時間を迎えるレストランは、とある男女の喧嘩に巻き込まれていた。

少しだけ説明すると、

”病気の母のお見舞いに行ってほしい妹”

”仕事が忙しくてお見舞いに一度も行ってない兄”

兄妹喧嘩だった。


兄がレストランを出ていき、一人残される妹。

優しいスタッフは妹をカウンター席に座らせて、話を聞くことに。

兄はチョコレートのお店をやっと開業できたばかりで、一番忙しい時期だった。

そして、料理長の西島秀俊さんはあることに気づく。

兄が、お見舞いに行けない理由。

何より、開業したチョコレート店に込められた想い。

そのメッセージに!


僕は西島秀俊さんのセリフの途中で気づき、

卵焼きの火を止めた。

「あ⋯⋯、だめだ」

「ダメだこれ、ダメなやつや⋯⋯」

一人きりでそう呟いて、おいおい泣いた。

久しぶりにドラマ見てボロボロ泣いた。

ドラマの兄妹の母は女手一つで育ててくれた素敵な母だった。
状況は全く同じではないが、僕の母もほぼ一人で苦労して育ててくれた。
母の状況が重なったこととか、そんな母が去年ガンになって、8ヶ月の闘病を頑張って、今は元気になったことを思い返してホッとしたこととか。

とにかくもう、僕は”母親エピソード”にはめっぽう弱いのだ。

甘い卵焼きがマジでしょっぱくなるくらいの量の涙が出てた。


ひとしきり泣いたあと、フライパンの卵焼きをチェックした。


余熱で良い感じにふんわりとした卵焼きが出来上がっていた。




時刻はAM4:00。泣きながら卵焼きを作ったことがあるかい?


息子よ大きくなーれ


↓『シェフは名探偵』おすすめです!

僕はこれからも深夜料理の楽しみにしてゆっくり視聴するつもりです。




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