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男性になりたいと思ってたけど別にそうでもなかった│FtX

中学1年生の時、買ってもらったばかりのスマホで調べた「性同一性障害」のこと。
女性らしく生きたくないと思っていた私は性同一性障害を知って、「自分は男性になりたいんだ」と思った。

中学生の私はFtMを自認していた。

今の私は、FtXを自認している。


中学生の頃、思春期を迎えて変わっていく自分の体がすごく嫌いだった。
いつから自分の体が嫌いだったかは忘れてしまったけれど、小学生くらいの時からなんとなく、その時は小さかった違和感がだんだんと大きくなっていった。

お風呂の時間は苦痛だった。
お風呂場の鏡に映りたくなくて、正座して長い髪を洗っていた。
「早く短く切りたいなあ」と思いながら。

大浴場も嫌いだった。
「女湯」に行くことで、自分が女性であることを一度バァンと突きつけられるのが嫌だから。
「あなた女性ですか!?女性ですよね!!女性ならいいです!!」みたいな圧を感じる。
「女性ですよ」と言えるには言えるけど、「体はな」とこっそり心の中で付け加えていた。
でなければどこかソワソワしてしまう。

母には私に着せる服で悩ませてしまった。
フリフリは嫌い、ピンクも嫌。
スカート? ハート? もってのほか!

「あれがいい」「それだと男の子になっちゃうでしょ、こっちにしときなさい」
この会話は必ずしていた。
母は私に可愛らしいものを着せたかったようだけど、そういうものをことごとく突っぱねる私にある程度は折れて妥協してくれた。

「男の子に生まれたかったなあ」

小学生の頃から思っていた。
男の子が着ているような服を着たかったから、自分が男の子として生まれていたら「ダメ」なんて言われることなく好きに着れていたんだろうな、と思ったことが何回もある。

こういう自分だったから、性同一性障害を知った時はすごく安心した。
でもまだ性別は「女性」と「男性」の2つしか知らなかったから、「女性らしく生きたくないってことは、男の人になりたいってことだ!」と思い込んでいた。

FtMと思い込んで辛くなることはなかった。
自分に名札がついたようで嬉しかった。


それから少し時間が経って中2くらいの頃、「無性」という性を知った。

無性は、女性にも男性にもあてはまらない性。
無性の説明がまたむずいんだよな。
無性以外にも、中性や両性、不定性などがあって、女性と男性以外のこれらのジェンダーをまとめて「Xジェンダー」という。

すっかり「自分は男性になりたいんだ」と思い込んでいたけれど、これをきっかけにもう一度よく考えてみたのだ。

女性らしくあることを強要されるのが嫌なだけで、女性の体つきをしている自分の体が嫌なだけで、本当に男性として生きていきたいのか?と自分に問うと、「別にそういうわけではないな」という結論に至った。

私が「男性」と言う時、その「男性」の中に私は含まれていない。
私が「女性」と言う時も、その「女性」の中に私は含まれていないような感覚がある。

私の恋愛対象は女性だけれど、私が女性として女性を愛すことはきっとできないし、男性として女性を愛したいとも思わない。

だから、中2くらいの頃から今まで「無性なのかな」と思っている。
でも未だに自分が無性であるということが不確かというか、「たぶん無性」みたいな曖昧さがある。

そういう曖昧さも全部ひっくるめて「Xジェンダー」と言ってしまえる。


LGBTQ+のシンボルはレインボーで、その通り性に明確な境界線はなく、グラデーションがかかっている。
性別は「女性」と「男性」の二通りだけでは分けられない。

自分のセクシャリティも、「生涯を通してずっと変わらない」というわけじゃない。
セクシャリティは流動的で、性自認や恋愛対象が変わることは何もおかしいことではない。

これから性自認が中性になるかもしれないし、男性や不定性の好きな人ができるかもしれない。


私がセクシャルマイノリティであることを自覚してから変わったことがある。
「自分らしく」という言葉を、今までよりストンと飲み込めなくなったような気がする。
自分らしくあれたらそれが1番なんだけど、それがどうしても難しいよね。

私はメンズ服が好きで髪も短いから、パッと見男性として見られそうな容姿をしている。
でも今のところは男性だと思われて男性として扱われたような経験がないから、「女性らしくいたくない→パッと見男性として見られたら自分は満足なのか」というところが未だに不透明。

あとどれくらい時間が経って、どんな風になれば私は男性らしさを求めないで済むようになるのか、はたまたいつまでも求め続けるのか、まだ分からなくてちょっとだけ怖い。


まあでも、なるようになるかーー!

今はとにかく、好きなファッションとか、好きな髪型とか、そういうものを自分なりに大事にしていけたらいいなーと思う。

そういうものを、「女性だから」「男性だから」というステレオタイプで型にはめて否定するようなことが、いつかなくなればいいなーと思う。


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