Yuji TANAKA

雑誌、書籍編集者を経て、現在は制作会社の映像プロデューサー。『電子音楽 in JAPA…

Yuji TANAKA

雑誌、書籍編集者を経て、現在は制作会社の映像プロデューサー。『電子音楽 in JAPAN』『昭和のテレビ童謡』『エレベーター・ミュージック・イン・ジャパン 日本のBGMの歴史』『AKB48とニッポンのロック』『TR-808<ヤオヤ>を作った神々』『シン・YMO』など執筆業も。

最近の記事

冨田勲シンセサイザー使用サウンドトラック紹介(再録)

『冨田勲 映画音楽の世界』(松竹音楽出版) 70年代のシンセ創作の10年余を挟んで、それ以前/それ以降に冨田が手掛けた、映画作品の劇中曲をダイジェストしたもの。映画音楽作品集は77年に、伊福部昭、武満徹、佐藤勝らと並んで東宝レコードで一度企画されたが、米RCAの専属契約があって未遂となっていたもの。その縛りが解け、晩年の山田洋次監督作品など松竹作品を中心に、東宝ミュージックが管理する、東宝、大映、勝プロの音楽まで網羅されている。「モーグIII-P」使用第1作とおぼしきコント

    • 冨田勲ディスコグラフィー(抜粋/再録)

      『月の光/ドビュッシーによるメルヘンの世界』(1974年/日本ビクター) シンセサイザー組曲第1作 米でグラミー賞候補作に  71年に日本で初めて大型のモーグIIIシンセサイザーを個人輸入。前年に上陸した普及型のミニ・モーグをノベルティ的に使っていた同業者が多い中で、冨田はオーケストラに替わるものとして、楽器的意味を理解するのにじっくり時間をかけた。74年にやっと第1作『月の光』を発表。『スイッチト・オン・バッハ』 の線画的描写に対し、仏の印象派作家ドビュッシーのピアノ曲

      • 新刊「80年代サーガ」のための素描~「渋谷系」までのレッスン(4)~

         今から40年前、1986年に『ニュータイプ』で初めて雑誌編集者になった。最初はごく普通に番組ページを担当していた。そのころ『ニュータイプ』は描き下ろしイラストのカラーページで定評を得ていた。通常、制作会社から貰ってきた16ミリのデュープから切り出して、他誌などはカラーページを構成していたが、元が16ミリだから当時の製版技術だとかなり粗い。そこで『ニュータイプ』は制作会社にリクエストを出して、実際に人気アニメーターに作画してもらい、セルに起こして彩色して誌面に載せる、はしりの

        • 『エレベーター・ミュージック・イン・ジャパン』(過去インタビュー再録)

        冨田勲シンセサイザー使用サウンドトラック紹介(再録)

          冨田勲とシンセサイザー映画音楽史(再録)

           日本を代表する世界的シンセシストと言えば、冨田勲の名がまず上がるだろう。1971年に日本上陸第1号「モーグIII-P」を個人輸入。ドビュッシー楽曲を14カ月かけてリアライズした第1作『月の光』(74年)は海外でも大反響を呼び、グラミー賞にもノミネートされた。米RCAとは長期契約が結ばれ、『展覧会の絵』、『火の鳥』(ともに75年)など、年1枚のペースでソロアルバムを発表してきた。イギリスでは『惑星』(76年)がアルバムチャート上位入り。ハマースミス・オデオンで行われたプレイバ

          冨田勲とシンセサイザー映画音楽史(再録)

          新刊「80年代サーガ」のための素描〜「渋谷系」までのレッスン(3)〜

           小生が書籍を何冊か出させて貰っている出版社、DU BOOKSから編曲家、山川恵津子さんの初の書き下ろし書籍『編曲の美学』が刊行された。各所でランキング1位ぶっちぎり、目下ラジオ界隈も巻き込んで「山川恵津子ブーム」の様相である。  ご本人とは過去2度取材させていただいている、実は80年代からの熱心な信者の一人。「読書よりファッションが好き」と公言されてる方なんだが、初の著書の文章は、硬派にして洒脱。作曲と編曲の相関性など、実作のレッスンになっていて読んで敬服してしまった。最初

          新刊「80年代サーガ」のための素描〜「渋谷系」までのレッスン(3)〜

          新刊「80年代サーガ」のための素描〜「渋谷系」までのレッスン(2)〜

           フリッパーズ・ギターもといロリポップ・ソニックというバンドは、私のいた『TECHII』(音楽之友社)という音楽雑誌の編集部から間接的に生まれた。そこにいたIさんという女性が、グループ結成時のリーダーなのだ。書籍『都市の音楽』は牧村憲一との対話で進んでいくが、バンドとプロデューサーが出会う前の時期のことは、私視点から綴ってる。目白の編集部の深夜作業の合間、ミントレコードから送られてきた『アタック・オブ・ザ・マッシュルームピープル』のサンプルカセットを休憩中に聴いて、Iさんと私

          新刊「80年代サーガ」のための素描〜「渋谷系」までのレッスン(2)〜

          新刊「80年代サーガ」のための素描〜「渋谷系」までのレッスン(1)〜

           思うところあって、昔やっていた長文ブログ復活する。いずれ自費出版するために、古い記憶を掘り起こして、在りし日の生々しい出来事を、協力者の力を借りながら記録していければと。  前職=版元編集者でやった最後の仕事が、500ページにも及ぶプロデューサー牧村憲一の未刊行の自叙伝。発売1ヶ月前に刊行中止されたこの本は、HMVチャート上位入りするほど予約が集まっていた。本はもちろん書き上げた。拙著『電子音楽 in JAPAN』の続編的ヴォリュームがあった。140万円ぐらい赤字が出たまま

          新刊「80年代サーガ」のための素描〜「渋谷系」までのレッスン(1)〜

          『イエロー・マジック・オーケストラ』(アスペクト)紹介記事

           80年代のテクノポップブームを牽引した日本のロック史の最重要グループ、YMOの初の公式インタビュー集。02年のソニー復刻盤に収録された原稿を再構成したものだが、すでにCD所有者も多いリアルタイム世代組にとっては、嬉しい書籍化になるだろう。  細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏という異なる個性の3人で結成され「日本のビートルズ」と呼ばれることもあった彼ら。ソニー、ホンダが海外制覇に着手を始める80年代初頭を背景に、コンピュータ・サウンドとエキゾティックな旋律で世界進出を成功させた

          『イエロー・マジック・オーケストラ』(アスペクト)紹介記事

          Dororonえん魔くんメ~ラめら(オリジナルサウンドトラック/再録)

           異色の組み合わせが実現した。73年に放映された名作アニメ『ドロロンえん魔くん』のリメイク版の音楽を、なんとムーンライダーズが手掛けた。同じ永井豪原作の人形劇を題材に、ブライアン・メイ(クイーン)がイメージアルバムとして製作した『STAR FLEET』(『Xボンバー』)以来の衝撃。一時期、イメージアルバムを精力的に手掛け、ゴドレイ&クレームのようにコミック文化と音楽の融合を謀ってきたのはファンにはおなじみだが、今回はオリジナル作品への参加である。原作の舞台、昭和の風俗を再現す

          Dororonえん魔くんメ~ラめら(オリジナルサウンドトラック/再録)

          坂本龍一『US』『UF』『CM/TV』HMV紹介原稿

           地雷撲滅、スローフード、地域通貨プロジェクトなど、このところ社会運動の啓蒙活動でメディアに登場することが多かった、「教授」こと坂本龍一。続く先日のブラジル国家勲章授与も、そうした一連の流れの中でニュースは伝えていたが、これは単にモレンバウム夫妻との共演や、ジョビンの再評価に一役買ったからだけではない。ブラジル音楽がイージーリスニングと呼ばれ軽視されていた70年代から、ボサノヴァのローファイ感や過激さに着目し、ジョビンのアレンジャーとしても知られるクラウス・オガーマンの作品に

          坂本龍一『US』『UF』『CM/TV』HMV紹介原稿

          YMOに於ける高橋幸宏の存在証明。(追悼掲載)

           日本のセッションドラマーの草分け、村上秀一の自伝に、彼の70年代末の活動休止期のエピソードで「あの時、俺がそこにいたら、YMOに入っていたかも知れない」と語る証言がある。同時期にメンバー3人が並行参加していたKYLYN、格闘技セッションのメインドラマーだった村上の余録は、歴史のifとして面白い。人民服などのコスチュームやヴォーカルを高橋が担当していたことを思えば、即座に否だとYMOファンは異を唱えるだろう。だが、結成時に細野が「演奏しないメンバー」として横尾忠則を4人目に加

          YMOに於ける高橋幸宏の存在証明。(追悼掲載)

          アニメ主題歌の歴史、超圧縮版(再録)

           ファンの組織票でオリコン1位になった曲が、翌週にはチャートから消えていく。ファン以外誰も知らないベストセラーが量産されてる現在。部活帰りに寄るカラオケも、学年が1年違えばもう誰もいっしょに歌えない。「残酷な天使のテーゼ」(95年)が毎年カラオケランキング1位になるのは、かつての流行歌に変わってアニソンが、世代を超えたベストセラーとなってる証なのだ。  アニソンは国産連続テレビアニメ第1号『鉄腕アトム』(63年)から始まった。その歴史もちょっと変わっている。アニメーターの賃

          アニメ主題歌の歴史、超圧縮版(再録)

          『電子音楽 in the(lost) world』(絶版)より、ムーンライダーズ関連ディスク紹介抜粋

          ムーンライダーズ『モダン・ミュージック』(79)(クラウン) 前作「いとこ同士」でMC−8との初セッションを体験するが、まだ本編はカフェ・ジャックス路線の時代。本作は鈴木慶一の音楽評論家活動がフィードバックし、ポリス、トーキング・ヘッズの影響からニュー・ウェーヴ化を表明した第一声。全員が突然髪を切りライヴでヘルメットを被って演奏したのにはファンも驚いた。慶一御用達の業界サロンのあったマンションの上階のスタジオで録音というのも雰囲気。ギターは突如アンディ・サマーズ風に変貌し、

          『電子音楽 in the(lost) world』(絶版)より、ムーンライダーズ関連ディスク紹介抜粋

          ユリイカ未掲載原稿、坂本龍一『サマーナーブス』紹介文

           南佳孝『サウス・オブ・ボーダー』では、クラウス・オガーマンばりの前衛的な弦編曲で見事に応えた坂本。中原理惠仕事で彼を見初めたCBS・ソニーのプロデューサー白川隆三が、企画もののカタログとしてボサノヴァのリーダーアルバム制作を依頼するも、本人から「レゲエのアルバムなら」と逆提案を受けて制作されたのが本作。当時、渡辺香津美がリーダーだった“KYLYN”のカウンター的存在だった、メンバーが重複する坂本のリーダーグループ“格闘技セッション”で録音されたため、「坂本龍一&カクトウギ・

          ユリイカ未掲載原稿、坂本龍一『サマーナーブス』紹介文

          ロバート・モーグの生誕日。

          本日5月23日はアメリカの工学博士、ロバート・モーグの生誕日。34年にブロンクスで生まれた彼は、今から遡ること50年前、65年にモーグ・シンセサイザーを世に送り出した「シンセサイザーの生みの親」である。 幼少期からピアノを学び、同時に電子工学のオーソリティだったモーグ。学生時代にロシアの電子楽器、テルミンの自作キットなどを考案して販売していたアイデアマンだった。やがて60年代に地元コロンビア大学で盛んに行われていた電子音楽コンサート(実験音楽の一ジャンル)を体験。乞われてジ

          ロバート・モーグの生誕日。