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フランスBLアンソロジー
『特別な友情』—フランスBL小説セレクションー(新潮文庫)
〈君が来るとわかってたら、真っ赤なネクタイを締めてきたのに〉
〈気をつけろよ!〉〈火の色だぞ。火傷するのが怖くないのか?〉ジョルジュは少年の手を指先で愛撫していた。(俺ニ近ヅクト火傷スルゼ?)
全寮制の神学校に転入してきた14歳のジョルジュは、一目で黒髪青い目の溌溂とした同級生リュシアンに魅了されてしまう。ジョルジュを同級生として信
クレイジーインアラバマ
『クレイジーインアラバマ』
マークチャイルドレス/著 村井智之/訳 産業編集 センター
〈1965年の夏、アラバマで誰もがクレイジーになった夏だった〉。
12歳の少年ピジョーの夢は葬儀屋になる事。その時の為に葬儀場の間取図を書いている。犬小屋やプールもあるスゴイやつ。墓掘人だった祖父は、葬式中にクスクス笑いをしたのが遺族にバレてスコップで頭を割られて死亡。両親は墓場協議会の帰り父の居眠り運転
20世紀ラテンアメリカ短篇選
『20世紀ラテンアメリカ短篇選』野谷文昭 編訳
さあ行こう 君と僕と。
大地を踏みしめ 沸き立つ水蒸気の その ゆらゆらの向こう とうに死んだ先祖たちの 目覚めを告げる やまない 深い深い吐息の くらいくらいの その。
さあ行こう。
地面から生えた たくさんの腕を掻い潜り つぎつぎと 亡者の腕が月を覆い たちまち密林となった その鳥の啼き声 その光る獣の目 その奥へ奥へと その。
行こう
歌人紫宮透の短くはるかなる生涯
『歌人紫宮透の短くはるかな生涯』高原英里(立東舎)
死の気配。
ひたひたと聞こえくる足音のせまるのにせかされふと覗き込んだ路地の、目を凝らす暗い闇の、時満ちた果実の身投げするばらばらと飛沫く血の音階の、歓びに身を震わせる人外の、雄蕊と雄蕊の睦言の不毛の、恋人の、永遠に耳元で繰り返される囁きの、嘘ばっかり。
14歳で詩作を始め、17歳で短歌の世界へ転じた夭折の歌人〈紫宮透(1962〜1990)