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アセク当事者は、アセク漫画をどう見るか

俺もそういう意味で誰かを特別に思えるんじゃないかって
でも全然わからなかった

集英社『ラウンドアバウト』(宮崎郁)

思わず読み込んでしまいました。
僕が毎日欠かさず読んでいる「ジャンプ+」にて、読み切りマンガ『ラウンドアバウト』が公開されました。

具体的に「アセクシャル」「アロマンティック」という言葉は出ていないものの、明らかにそうでだなあと感じます。主人公と友人との複雑な葛藤が描かれていて、非常に惹き込まれました。

※「アセクシャル」「アロマンティック」については、よければこちらをご覧ください。

読み切りマンガということもあるので、ぜひ読んでみてください!

本作の考察は別の機会にするとして、思うのは
「アセクを扱うマンガ作品、増えたなあ」
ということです。

最近よくみる「アセク漫画」たち5つ

最近もよく目にします。見つけては、もちょと考察したり、悦に入ったりしています(笑)

ラウンドアバウトのジャンプ+だけでなく、いろいろな出版社から出ていますね。せっかくなのでご紹介したいと思います。

1.『ひめちゃんは重い女』

最近話題のマンガ。現代的でかわいらしい画風とは裏腹に、内容はなかなかにヘビー。
登場人物の中の「夜」というキャラクターが、アセク(というよりクエスチョニング、クィア)だと自覚しているような描写があります。

2.『やがて君になる』

今のように、アセクが浸透する以前に話題になった百合マンガ。
「わたしに好きは、訪れない。」というキャッチコピーに、息を呑みました。

3.『わたしのアスチルベ』

もちょ激推しのマンガ。共感と激情が交互に襲ってきます。
ちなみに、アスチルベの花言葉は「恋の訪れ」。そこに「わたしの」という枕詞がついているのがまたグッと来ます。

4.『きみのせかいに恋はない』

2021年にTwitterでバズったマンガ。アセク同士で結婚している教授や、枠にとらわれない自由な恋愛関係を描写しており、珍しい作品だと思います。
割と専門的な知識や、詳細を書いてくれているので、知りたい気持ちの強い人向け。

5.『わたしは壁になりたい』

アセク女性と、ゲイ男性の夫婦の話。
1人1人に焦点を当てるというよりも、マイノリティがどう分かり合い、線引きし、共存していくかが描かれています。そこまでシリアスではないので、気軽に読みやすいです。

それぞれ違う観点から、描かれていますので、ぜひご一読いただきたいですね!

最高に嬉しい一方で、当事者が欲しいなあと思うこと

こういったマンガによって「アセクシャル」「アロマンティック」が認識されてきていることをひしひしと実感します。

この事実は、当事者として素直に嬉しく思います。しかも、感想は好意的なものが多く、本当に時代の変化を感じます。

いままでこんな作品はなかったわけですから、その点から考えると大きな進歩ですね。恋愛至上主義から離れた作品は、今後も増えていくことは楽しみなところです。

同じアセクでも人が違えば、物語も変わっていきます。その点それぞれを楽しめるのは本当にいいことです。

一方、当事者として思うことは、「実際問題どうして生きていくのか」を教えてくれるものは少ないと感じます。

中学生高校生のアセクが登場人物の物語は、創作として面白いし感動もする一方で、アセクを知った社会人がどうすればいいか具体的な答えを見出すことは難しい。

友人には、家族には、恋人には
どう話をすればいいのか、どんなトラブルがあるか などなど

これらは当事者としてはすごく欲しいことです。

この点をうまく表現し、フォローできているなと感動したのは、NHKドラマ「恋せぬふたり」でした。

アセク当事者たちの2人が描かれていて、それが自分たちと同じということでドハマリした本作。

しかし大前提は、アセクについてのディテールがよく描かれていることなんです。基本的な用語解説、トラブルの詳細そして解決法が、本当に詳しくあったのがすごくよかった。

当事者たちの考証があったのは大きいと思います。この点は、今後出るマンガやアニメにもお願いしたいですね。

それと男性アセクが描かれているマンガが少ないのも、これから期待したいところですね。(この点でも「ラウンドアバウト」はよかったです)

現実を乗り越えていく「アセク家族」を伝えたい

「アセク漫画」がこの調子で増えていき、恋せぬふたりのようなドラマも出てくるでしょう。映画やゲームにも?そして海外からも?そんなワクワクはとまりません。

しかし、当事者として思うのは、「アセクが認知されたから、じゃあ生きやすくなるのか」という問題。

これは残念ながら、そんな単純な話ではないなと思います。

プロ野球選手のYouTubeを見たから、野球ができるわけではないように、私たちが生きる世の中は複雑です。

同じアセクでも、違うアセクです。そして家族も違ければ、仕事も趣味も違う。悩む種類は同じでも、その具体的な内容は全く異なります。

当たり前ですが創作と、直面する現実は違います。

それこそ創作で好意的な感想をもったとしても、友人が、家族が、そして恋人がアセクであることを知ったらどうでしょうか。いいね、と単純に割り切れるほど、話はシンプルではありません。

ここは創作と現実の壁があります。もちろんアセクに限らずですが。

「こういう人がいるのか〜」という他人事から、「実際問題ワタシはどう生きればいいのか」という自分ごとは雲泥の違いがあるからです。

この点をぼくらは本当に苦しみました。

だからこそアセクには、アセクの理解者が必要だと思います。
友人、親、兄弟に理解を、そして受け入れてもらうことはアセクの尊厳を守る上で大事なことです。

アセクだから1人じゃなきゃいけないと決められたわけではありません。新しいカゾクの形があってもいいのではないでしょうか。

ぼくらはアセク当事者同士でいっしょにいることを選んだふたりです。世の中でいう家族とは違いますが、アセクならではの家族観を示せればと思っています。

僕らは僕らでアセク漫画を描けそうですね(笑)考えたいと思います。

いろいろと偉そうに語らせてもらいましたが、アセクを取り扱う漫画が増えることはとてもいいことだと思っています。恋愛とはなにか、家族ってなにか、物語を深くするキーパーソンになると思ってますので(笑)

アセク漫画の未来に幸あれ!

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