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HSP概念を支援に繋げるために〜川崎市特別支援教育研修レポート〜

こんにちは。宇賀神です。
神奈川県川崎市 特別支援教育センターご担当者さまよりお声がけいただき
教職員向けの研修講師として話しました。
この記事では、研修の概要とレポートについて書いていきます。

研修開催のきっかけ

昨年末に川崎市教育委員会ご担当の方よりお問合せいただきました。

繊細な気持ちをもつ児童生徒が学校に行けない状態になってしまうケースが多く、教職員もその気持ちを知り、寄り添おうと日々奮闘しております。ぜひ先生のお話を聞いて、川崎市の教育に活かしていきたいです。

教育現場からの生の声をいただいた時、クリニック臨床現場において、教職員の方や、小中学校のお子さまを育てるお母さん方との対話をしていました。医療心理業界にてHSP概念を軸として活動をする中、教育現場でもお伝えできることがあると強く感じました。

実際に打ち合わせをさせていただいた際、心に残ったことがありました。

「もちろん子どもたちへの支援は大切だけれど、それと同じくらい、いやそれ以上に、保護者の皆さまや先生方への支援も大切である」という想いです。

先生方が目の前にいる子どもたちに対して、どのように支援できるか、という表のテーマを主軸としつつ、支援者側の皆さまへの裏のメッセージも込めながら資料を作成していきました。

研修の流れ

令和6年度 川崎市教職員研修「 特別支援教育Ⅰ 」
2024年8月5日(月)9:00〜11:30
オンラインZoomでの実施

主催:川崎市総合教育センター 特別支援教育センター

🔸自己紹介・宇賀神の中学時代の話
🔸HSP(環境感受性)とは?(理論と捉え方)
🔸不登校・行き渋り・不適応の仕組み
🔸クリニック臨床事例紹介〜教員さま・中学生の子育てをするお母さま〜
🔸子どもたちに対して必要な支援と声がけ(体感ワーク実施)
🔸質疑応答

川崎市内の小中学校教職員の先生方、スクールカウンセラー、支援教育コーディネーターの方々、通級指導教室の先生方、特別支援教育センターの皆さま、120名の皆さまにご参加いただきました。

長年学校教育現場にいらっしゃる皆さまに対するお話しなので、子どもたちの視点、保護者の視点、支援者の視点の3つを踏まえながら話しました。

私はクリニック臨床において、感受性の高い人の不適応症状が起こる仕組みを見つけ、具体的な対処法を実践するまでのサポートをしています。

私に何ができるか?を考えた時に、同じ教職員や保護者の方々の物語を共有することが一番であると考えました。

ご感想紹介と返答

研修後、先生方からのご感想をたくさんいただきました。

環境や目の前にいる子どもたちの状況はそれぞれですが、今後の現場で活かしていこうというあたたかなメッセージです。私自身感極まりながら、何度も見返しました。ほんの一部にはなりますが、紹介させていただきます。

僭越ながら、引用の下部分に返答させていただきます。
(なお一部、要約・省略させていただいております。)

川崎市だけでなく、全国の教育現場で起こりうるものだと感じ、ご覧いただいている皆さまの気づきにつながればと思うからです。

(感受性の高い人が)人口全体の2~3割というご説明があったように、HSCと思われる子どもはたくさんいて、本人にとって過多な刺激と折り合いをつけながら過ごしていることを改めて感じました。
折り合いをつけてためこんでしまい不登校や不適応になってしまうというお話に教員としてできることを具体的に教えていただくことができました。今後の教育活動に活かしていきたいと思います。

不登校や不適応症状が起こる背景がわかると
教育活動がより円滑になっていくと想像できます。

HSPについて、インターネットで得たレベルの情報しか知りませんでしたが、どんな人のことを指すのか、どんな困り感があるのかを知ることができ、今後、児童や保護者と付き合っていく中で大変参考になるお話でした。また、宇賀神先生がお話されていた協働調整という言葉が大変印象に残り、まずは自分の心が緩んでいる状態で相手に接することの大切さがわかりました。本日はありがとうございました。

協働調整について
心に響かせてくださって嬉しいです。
自分がゆるんでいれば相手もゆるむ。
これは私自身も意識していることです。

通級指導教室を担当しています。通級という1対1の環境の中で、教員に対して特に責任感の強いお子さんが自分の思いを吐露してくれることがあり、どうしていきたいかを一緒に考えていくことができました。しかし、なかなか自分で自分の思いを表現しきれない、言語化できない子がいるということを前提に、寄り添っていけるような教員でありたいと思いました。今日は、先生のゆったりとしたお話の仕方で、私自身も安心してお話を聞くことができました。ありがとうございました。

通級での指導では、
より一人ひとりの姿が見えると思います。
言語化できない奥の思いと
繋がれるきっかけになれば幸いです。

講師の先生の「自分自身が緩んでいないと、協働調整はできない」という言葉が心に残りました。子どもと向き合う前に、日々取り組んでいきたいと思います。そして、子どもの細やかな表情や体の強張り、しぐさを丁寧に見とれる余裕を作っていくことで、寄り添った配慮や支援ができる教員になっていきたいと思いました。奥にある腎臓をいたわる(周りの神経を緩める)ワーク以外にも、できそうなワークがありましたら、また教えていただきたいです。本日は、ありがとうございました。

子どもたちの細やかな変化に気づける
余裕を作ることが大切であると感じます。
他にもたくさんのワークがあります。
「お役立ち情報リンク集」にて
紹介させていただきます。

非常に勉強になりました。HSPという言葉を知ってからここ数年は本や新聞記事から情報を得て本日の研修を受講させていただきました。宇賀神先生が自己紹介の中で話されていたエピソードも親近感がわくほどで、お話される言葉一つ一つを記録に残しておこうと思いました。事例で紹介されていたケースはまさに自分自身に当てはまることも多く、神妙な気持ちで聞かせていただきました。教員の事例を取り上げていただきありがとうございました。

子どもや保護者への言葉かけや、接し方も教員として大切であることはもちろんですが、自分自身が力を上手く抜いた状態で接することでよい雰囲気が伝わることを知りました。振り返ってみると、力が入った状態で話していたことも多々あったなと思いました。

昨今の話題HSPの認識が主観的であることも頭に入れて知識を増やしていこうと思います。また、科学的根拠に基づく文献をご紹介いただいたり、概念をご講義いただいたりしたことで、偏った知識や思い込みをしないよう気をつけて過ごしていこうと思います。感受性の幅が人それぞれ違うことを知ることが大切であると気づかせていただき、ありがたかったです。本日は貴重なお話をわかりやすくご講義いただき、ありがとうございました。

私自身の経験や観てきた視点に対して
共鳴してくださりありがとうございます。
自分が経験し感じたからこそ、
心から共感し歩み寄りやすくなると思います。

Coとして仕事していますが、保護者から「うちの子HSPなので」と相談を受けることもあります。
今日の先生の思い出には自分もほぼ重なる部分があったので同じ思いをしている人がたくさんいるということに 改めて気づかされました。

HSPだから行事参加しない、教室に入れない、できなくてもしかたない、ではなく、つらい気持ちを分かってあげながらも、自己を認める気持ちを育てて行きたいと思います。そのためには、 今日 先生から教えていただいた「すごくしんどくなる前」の声掛けや 寄り添いが大切だと思います。 学級経営にもつながる部分 なので 大切にしていきたいと思います。 今日はありがとうございました。

HSP/HSCという言葉を知って、
先生方へ相談されるケースは増えていると感じます。
HSPを理由にすることなく、
それぞれの特性に合った対応ができるよう
寄り添うことがまずは大事であると思います。

今、取り上げられることの増えてきたHSPについて客観的な学びを得ることができてよかったです。特に宇賀神先生の話で上がっていた「どれだけやっても減らない感情は本当の感情ではない」という言葉にハッとさせられました。実際保護者の話を傾聴する中で、この言葉のことを感じる場面があり、あの時、もしかしたら保護者の方自身も気づかれていない感情があったのではないか、と振り返ることができました。現在支援教育コーディネーターとして繊細な保護者や生徒と関わる機会が増えたこともあり、今日の学びで得たことを自身の力として般化できればと思います。貴重なお話をありがとうございました。

感情の仕組みについて
深く気づきとしてくださり嬉しいです。
どれだけ感じても減らない感情によって、
双方辛くなるケースはたくさんあります。
その視点を踏まえるだけで
接しやすくなると思っています。

日々時間に追われて、同じ方向へ向かって一斉に走り続けている教員達にとって、そっと草むらの影から「いや、そっちではないよ、一度とまってみたら。こっちだよ。」と語りかけてくれるような、小さな妖精さんに出会えたような、そんな一瞬にして「何か小さな接触であったけど、確実に心に残っている」。先生からのお話を聞きながら、そんな時間を過ごせてとても幸せでした。9月から活かして行きたいです。貴重な研修の機会を設けていただき、ありがとうございました。

”小さな妖精さん”と優しく表現いただけたことが
とても嬉しいです!
子どもたちに歩み寄っている先生方が
自身を労りゆるめる機会になれば幸いです。

これまでHSP、HSCに関して持っていた知識はいわゆる社会一般的に広まってきた表面的な知識だったと思いました。チェックリストなどもネット上ではいろいろ出回っているので、やや流行り的な捉えもあるかもしれないとも感じていました。しかし、今回理論的なお話から丁寧にしてくださったのでこれまでの捉えから抜け出せたと思います。

安心感の醸成は臓器の周りに集中して起こること、そこへの働きかけのワークや、支援者がまず心と神経を整えることで労る声掛けができることなど具体的な支援に結び付けられると思いました。子どもが刺激を受け取りすぎて辛くてもそれに気付けない、言語化できない状態を、手前で察知できるように、自分を整えて夏休み明け、笑顔で向き合っていきたいと思います。ありがとうございました。

今のHSP情報のほとんどが主観的で、
ポピュラー心理(血液型占いのようなイメージ)
として広がっています。
HSP概念の理論と捉え方について正確に知る機会になったと伝わってきてとても嬉しいです。

HSPは診断名でも病名でもなく、そのような傾向があるということがわかりました。HSPは人によって様々であり、どの状態のときどのような症状がでるのかが、わかる一つの視点になることがわかりました。人は我慢の限界に達すると、脳が閉鎖してしまうという所は、HSPに限らず誰でも起こり得ることであると感じました。その中で、HSP傾向の方は、そのような状態になりやすいのではないかと思います。新たなことがたくさん学べる研修となりました。

おっしゃられる通り
その人にとっての”限界”がくると
シャットダウンするのは
誰でも起こりうることです。
感受性の視点で出来事を観て支援することが
全体への支援につながると私は思います。

講師の先生のお話を聞き、自分が大切にしてきたものをこのまま継続して行ってよいという安心感を得ました。児童が自分の話したいことを話したいだけ安心して話す。保護者の話に耳を傾ける。保護者が自分で答えを見つけるのを待つ。自分の子育て自信を取り戻す姿を見守る。児童と保護者の間に、行き違いがあれば 両者の思いをやんわりと相手に伝わる言葉に変換して伝える。担任の先生に、児童や保護者の思いを伝えて、先生方が支援してくださっていることで児童が助かっていることを伝えること。個別指導計画には、記載されることがない地味な作業を日々繰り返してきました。保護者面談の時間は、必要に応じて丁寧に継続していくことで児童が変わっていくことを経験してきました。(保護者面談は、指導時間としてカウントされませんが)今回の研修を通して、相手に寄り添う、そのためにゆったりとした時間をつくること。気付きを言語化して共有することの大切さを改めて気付く機会となりました。よい時間をいただき、ありがとうございました。

指導時間としてカウントされない時間こそ
子どもたちや保護者の方々にとって
安心に繋がれる時間になると
ひしひしと伝わってきました。
心を込められるように、
自分自身がゆるむ時間を大切にしていこうと
私は励まされました。ありがとうございます。

教育現場における支援の視点

ご感想でいただいた内容に、支援のエッセンスが詰まっていると感じます。
今回の研修の内容と、クリニック臨床事例の視点の範囲に留まりますが、支援の視点についてまとめます。

子どもたちや保護者と関わる前に、まずは自分がゆるむこと

どれだけ心を込めていても、力が入っていたり、慌ただしさのままに行動していると、見ている子どもたちはそれらを察知して、自分の気持ちを言うことを辞めていきます。研修の中で話した「神経の協働調整」の話に共鳴いただいた先生方が多くいらっしゃいました。
関わる前に、自分がゆるまっている状態か。無理していないか。ひと息ついてから関わっていくと、支援がより深まっていくと感じます。


不登校、登校しぶり、不適応症状の理由は
直接的に見えないことが多いと踏まえる

やりたいという気持ちがあっても、身体が動かない。
完璧にやりたいと思うのに、中途半端になって悔しい。
ちょっとした違和感が積み重なって、急に爆発した。

そんなことがよく起こります。本人もよくわからないまま
不適応症状が起こっていきます。
100%背景や気持ちが分からなくても、
一緒に考えて寄り添っていく姿勢を感じるだけで
子どもたちは安心に向かっていくと臨床を積み重ねて思うところです。


限られた時間の中で ”何を意識し選択するか” が重要になる

やることがどんどんと出てくる。1日36時間は欲しい。
そう思っても、実際は24時間しかない。
決まった枠がある中で、細やかな支援ができるためには
「意識付け」のポイントを明確にすることが大切です。

研修の中でのお伝えしたことのメインは
「不適応症状が出る ”前” の対応」です。
症状や痛み・感情などの反応は、
何かを伝えてくれるメッセージであると捉えます。

環境や雰囲気の変化、積み重なっていく疲労やストレスなど。
様々な場面に対して身体の奥で起きているのか。
その部分に意識を向けることで
結果的に細やかな支援につながっていくと考えています。

HSP概念(感受性という視点)を正しく知ることは
表出化されない奥のメッセージを知る機会になる

HSP概念は、あくまでも”感受性”という視点で
個性や特性を知っていく一つのきっかけでしかありません。

大切なのは、それぞれの特性が日常のどの要素で
表出するのかを知ることです。

知るための手がかりは、奥に込められたメッセージを知ること。
そのメッセージは「感受性」の違いを認識することで
浮かび上がってくるのです。

ご感想の中でも、感受性の高い子どもたちだけでなく
どの子どもたちに対してもできることである。
そうおっしゃってくださる先生方がいらっしゃいました。
その通りであると私も思っています。

奥にある小さいメッセージに気づけるようになれば、
どの子どもたち・保護者の皆さまの本当のメッセージにも
気づけるようになっていくと実感しています。

教育現場で働く方々や、お母さんお父さん方との対話を通して
実感が確信へと変わりました。そして研修にご参加の先生方と
共有ができてとても嬉しく思います。


長文最後までご覧いただき、ありがとうございました。
教育関係者の皆さまへ広く届きますように。


お役立ち情報リンク集


◾️HSP概念を提唱したアーロン博士のHP

※サイト内にHSP・HSC・HSS(刺激追及型)のチェックリストがあります。


◾️研修内で行った「神経エクササイズワーク」の様々が紹介されている本
不安・イライラがスッと消え去る「安心のタネ」の育て方 ポリヴェーガル理論の第一人者が教える47のコツ


◾️敏感すぎる私の活かし方(アーロン博士1冊目 日本語訳)


◾️ひといちばい敏感なあなたが人を愛するとき〜HSPと恋愛〜
 (アーロン博士2冊目 日本語訳 HSSについて初めて言及された本です)


◾️HSPの心理学:科学的根拠から理解する「繊細さ」と「生きづらさ」

◾️環境感受性とは?(Japan Sensitivity Research より)



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→講師と運営だけの関係でなく、人対人の関わりをするため


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→ミーティング後正式にご依頼の際は、書面でのご送付をお願いしております

🔸開催前の打ち合わせ ※開催までに時間が開く場合
→ご依頼時と環境やニーズの変化がある場合、修正する必要があるため
 場合によってお願いする場合がございます。

🔸研修の実施:オンラインの場合共有権限をいただければ幸いです。
 対面の場合、お持ちのPCからの接続でも、私のPCから接続でも対応できます。

🔸研修後フォロー
ご参加の皆さまからのご感想やご指摘点について共有いただれば幸いです。
いただいた内容によっては、返答をさせていただく場合があります。
私のSNSにて、今回の記事のような形で発信します。

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🔸その他共有事項

・時間や行程の条件は特に設けていません。
 ご提示の流れに沿って組み立てていきます。

・4名以下の少人数制のイベントから、
 150名超えのオンラインイベントまで経験があります。

・オンライン、対面どちらでの対応も可能です。

・諸条件が合わない場合は、お断りする場合がございます。

お見積もりや、過去事例など気になる方も是非お問い合わせください。


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