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フランスで不動産トラブル!解決には理論と感情を織り交ぜて

パリで屋外駐車場を4枠購入し、1つは自分たち用、残りの3つを貸しはじめて、3ヶ月も過ぎた頃、ついに事件が起こってしまいました…。

これは、前回の続きです。
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襲われかけた賃貸人

我が家の駐車場は、購入時から入り口の自動シャッターが壊れっぱなしで、誰もが入れる状態になっていました。ある日、借り手の一人が青ざめた顔で「ここの駐車場は危険過ぎるから契約解除だ!」というのです。話を聞くと、夜中に仕事から帰ってくる彼は、駐車場でたむろする若者たちに襲われかけたそう。確かに、誰かが飲み明かしたと思しき、ビール瓶が散乱していたり、増えていく壁のいたずら書きが気になっていました。今まで短期間で契約解除した人たちが何人もいましたが、この不穏な空気を察していたのかもしれません。

私たちが駐車場を利用するのは、仕事に向かう朝と帰宅する夕方のみなので、それ以外の時間に起こっていることはわかりません。実は夜間、駐車場周辺の空きスペースの存在を知った人たちが車を停め放題だったそう。借りている人たちからすれば、わざわざお金を払う意味がありません。自動シャッターが壊れっぱなしのせいでセキュリティがなく、駐車場の価値が大暴落。穏やかな住宅地なのに、これはさすがにまずいと、本格的に問題解決に乗り出すことにしました。

ちなみに、私有地なので違法駐車は、警察に届けても何もしてくれませんでした。連続8日間、停まっていることが確認できれば、そこから書面を送付し、撤去依頼ができるのですが、さすがにずっと停めっぱなしの人はいません。

隠された5年間のいざこざ

いつまでたっても、自動シャッターが直される気配がないので、管理組合の過去の議事録をみてみると、5年前から既に壊れている記載がありました。当時、手動の木の扉から自動シャッターに切り替えたものの、1ヶ月のみ稼働しすぐに故障。アパルトマンの管理会社とシャッターの施工会社の間で責任のなすりつけ合いの末、住民組合はアパルトマンの管理会社を変更。新しい管理会社はこの問題には関与せず、住民たちも既に多額の工事費を分担して払った後だったので、これ以上の支出は許せないと、それからずっと放置。あまりに色んな問題が複合的に起きてしまい、面倒くさくなった住民たちは、臭いものに蓋をしている状態のようでした。

不良住宅や欠陥不動産が、売買の際に不備を明記されずに手続きが済んでしまうことを「隠されたネジ(Vice caché)」とフランスではいいますが、これは議事録に記載済みのトラブルだったので、公表されているものとして扱われました。壊れたシャッターはすぐに直るといっていた不動産屋のマダムの嘘ツキ! と責めたいところですが、完全にこちらの確認不足。管理組合の過去の議事録は、購入契約前でも見ることができるので、フランスで不動産購入を検討される方は、事前確認必須です!

孤立無援の駐車場所有者

私たちの駐車場があるのは、自宅とは異なるアパルトマンの中庭です。しかも、そこの中庭に駐車場を所有しているのは私たちだけ。ということは、実質セキュリティーゲートが必要なのも、私たちだけなのです。そこのアパルトマンの住人にすれば、自分が住んでいる場所が不良たちのたまり場になったら嫌だなぁとは思えど、まだ直接被害は出ていません。以前も自動シャッター設置の費用を支払ったのに、更に追加で払いたくないというのも理解できます。この不利な状況から、駐車場の前所有者がなぜ手放したかが理解できました。所有しているのは、自分が住んでいないアパルトマンの中庭の駐車場のみで、住戸を持っている人に比べて少ない議決権。より多くの住民たちから同意を得られないと話は進まないのです。

ロジックとお涙作戦

そこで、私は予定されていた管理組合の総会に向けて、作戦を練りを始めました。フランスでのトラブル解決には理論と感情を織り交ぜることが大切。

まずは、理論から。訴えたいことは文章にしたためて、書留で郵送することが何よりも大切なフランス。借り手が襲われかけた事実を元に、「自動シャッター故障のため治安が悪化し、平穏な日常生活が脅かされている」という内容を書類にし、管理会社と住民組合に送りました。その際、外交官の友人に添削してもらいカンペキな仕上がりに。その後、この書類は、管理会社から全住戸に注意喚起として配布されました。

あまりの書類の出来栄えに、それをみたアパルトマンの住人のひとりが、「外国人なのによくやっている」という感動のお手紙と自身の議決権をくれました。また、住民組合の理事長も違法駐車を見つけると、車に警告の張り紙をするなど、協力してくれるように。少しずつ味方が増えていくのを実感しつつ、管理会社の担当者にも、次回の総会では、なんとしてでも新しいセキュリティゲートを設置する方向に持っていくように、と念押しの電話をするなど、外堀を埋めていきました。

そして、仕上げは感情に訴える作戦。管理組合の総会にあえて幼い娘を一緒に連れて行くことにしました。当時はまだ1歳過ぎの赤ちゃん。総会が駐車場の議題に及び、「駐車場の所有者から書留を頂いております」と私の文章が読み上げられました。そして「何か付け足すことがあれば」と発言を促されたので、娘を抱きかかえながら「こんなに幼い子と、不安を抱えながら毎日駐車場に向かっています。ある日、私たちに何かあったらどうしますか!? もう既に、ひとりの人が襲われかけているんですよ!!!」と涙ながらに訴えました。もちろん、文章は事前に準備し丸暗記。迫真の演技だったと思います。住民組合の理事長も「こんな自体はもう放置できません! アパルトマンの不動産価値も下がります!」と後押し!

そして…

新たにセキュリティゲートを設置することが可決されたのです!!!

本来であれば採決を取りますが、その場の同情的な空気で、満場一致の雰囲気を生み出しました。挙手などはせず、そのまま「可決」へ。そこからも、理事長の工務店選びへのコダワリが炸裂し、結局丸2年かかっての施工となりましたが、なにはともあれ、今は無事に稼働しています。

外交官の友人の美しいフランス語と威厳のある様式の書類に、幼子を抱えて感情に訴える作戦が成功しました。情緒的な印象が強いフランス人ですが、ロジックも大好き。感情的に訴えるだけではダメで、多少屁理屈であっても、ロジカルなものは尊重されます。そこに、私情過ぎるかな? と思うようなことでも、自分の感じていることをさらけ出すことも大事。

ただでさえ骨が折れる海外生活なのに、駐車場を買わなければしなくて良かった苦労は山ほど…でも、すべて新しい経験になったし、近所の人との関係も生まれて、もう若くはないけれど好きで苦労を買っているなぁ、と思うことにしたのでした。

さて、扉は直りましたが、それに満足してしまって、まだひと枠空いているのに、未だに賃貸広告を出せていません。早く広告出さなきゃ…。

▼ 「フランス ✕ 不動産」をマガジンにまとめています


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