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自作短編小説集

77
これまでに書いた自作の短編小説を載せています。
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#物語

計画的トマトスープ③/④

 穂積と加納と同盟を結んでから、一週間が過ぎた。  今は八月の上旬で、それは僕がこのアル…

植木意志
1年前
8

計画的トマトスープ②/④

 五日後、夏休みを迎えると同時に、僕の奇妙なアルバイトが始まった。  最寄りの駅から地下…

植木意志
1年前
8

計画的トマトスープ①/④

 ルネ・マグリットの絵にトマトスープがぶちまけられるのを防ぐために、僕は市内の美術館の学…

植木意志
1年前
17

短編小説「宇宙飛行士と怪現象」

 住宅から漏れる明かりが、窓のそばを通り過ぎていく。  揺れる列車の中、わたしと薫は愚痴…

植木意志
1年前
35

短編小説「僕は知らないし、気にしない」【後編】

 火曜日、ジェームスとトーマスとパーシーの見舞い帰り、僕はジョージ・ストリートを西に歩い…

植木意志
1年前
25

短編小説「僕は知らないし、気にしない」【前編】

 スーパーマーケットで缶ビールとチョコレートバーをそれぞれ一本ずつパクった後、僕はバイク…

植木意志
1年前
34

短編小説「少年たちの秘密基地」【後編】

 秘密基地の外に、誰かがいる。  その事実は、一瞬にして僕らに緊迫感を与えた。  シーツの向こうからは微かに人影が見えている。控えめな蝉の鳴き声が四方八方から聞こえる中、僕らは数秒間声を出せなかった。 「誰やっ」よっちゃんが叫んだ。  乱暴にシーツを捲り、基地内に侵入してきたのは、おさげを三つ編みにした女子だった。  掛布美宇だ。  僕らと同じ5年2組のクラスメイト、掛布は仁王立ちで、呆然とした様子の僕らを見下ろしていた。  気が強く、口が悪い。背丈は男子の平均以上あっ

短編小説「少年たちの秘密基地」【前編】

「そう、誰がこのクラスの給食に勝手にプリンを追加したのか、ほんまに誰も知らんということや…

植木意志
2年前
28

【ショートショート】コーヒーショップの男たち

 ティムは五十代半ば、白髪混じりの恰幅のいい男で、私に優先して仕事を回してくれる重要な顧…

植木意志
2年前
11

短編小説「テスト前夜の調査」③

【全③話】  家に帰り着いた僕は、再び自分の部屋の机に向かい、難儀なテスト勉強を再開して…

植木意志
2年前
7

短編小説「テスト前夜の調査」②

【全③話】  五分後、僕はセブンイレブンに到着した。 田中はまだ来ていなかった。 スマート…

植木意志
2年前
6

短編小説「テスト前夜の調査」①

【全③話】  網戸の向こうから祭りの音が聞こえたのが、全ての始まりだった。  真夜中、僕…

植木意志
2年前
5

短編小説「猫と人間」【後編】

 それから僕らは最寄りの大船駅まで、肩を並べて(?)歩き出した。  少し前まで、散歩がてら…

植木意志
2年前
14

短編小説「猫と人間」【前編】

 コンビニでアイスクリームでも買おうかと、僕はマンションのエントランスを出て、町を歩き出した。  午後二時半、曇り空の下、僕はグレーのワイシャツに、ブルーのジーンズ、コンバースのスニーカーという出立ちだった。  遅い昼食を済ませたばかりの僕は普段から運動不足で、たかだか徒歩五分の距離でもそれなりの運動にはなる。 社会人になると体を動かす機会がめっきり減るから、車を使わないという選択肢は我ながらいい心がけだ。  今日は平日だが、会社は休みだ。 五月四日は、何の祝日だったか