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自作短編小説集

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これまでに書いた自作の短編小説を載せています。
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#短編

計画的トマトスープ④/④

 穂積が急遽、立案した作戦に従って、僕たちは行動していた。  計三ヶ所の出入り口にそれぞ…

植木意志
1年前
8

計画的トマトスープ③/④

 穂積と加納と同盟を結んでから、一週間が過ぎた。  今は八月の上旬で、それは僕がこのアル…

植木意志
1年前
8

計画的トマトスープ②/④

 五日後、夏休みを迎えると同時に、僕の奇妙なアルバイトが始まった。  最寄りの駅から地下…

植木意志
1年前
8

計画的トマトスープ①/④

 ルネ・マグリットの絵にトマトスープがぶちまけられるのを防ぐために、僕は市内の美術館の学…

植木意志
1年前
17

短編小説「アンディ・ブラウンを探せ」

 依頼人は突然やってきた。  その男はいかにも尊大な態度で革張りのソファに腰を下ろし、私…

植木意志
1年前
44

短編小説「夢のトリクルダウン・地下世界への片道切符・溶ける氷主義者」

 水曜日の夜、私は同僚と日本橋にあるバーにいた。  我々はカウンターに隣り合って座り、ワ…

植木意志
1年前
32

短編小説「僕は知らないし、気にしない」【前編】

 スーパーマーケットで缶ビールとチョコレートバーをそれぞれ一本ずつパクった後、僕はバイクに乗って〈ブルームーン〉に向かった。  〈ブルームーン〉はサウス・ロンドンにある、どこにでも見かけるようなありふれた地元のバーで、その代わり僕のような十七歳の未成年が滞在するにはあまり目立たない、極めて好都合な店だ。  店の前の舗道にバイクを停め、空になったバドワイザーの缶をクリケットの投手になった気分で、通りの反対側に豪快に投げ捨てた。  それは空中で弧を描いた後、駐車中のBMWのボ

短編小説「有人教室」

 通りを吹き抜ける冷たい風に、思わずマフラーに顔をうずめた。  冬休み明けの学校。低く垂…

植木意志
1年前
31

短編小説「水平線の向こう側、幽霊船の侵攻」

 僕と飼い犬のポランスキーは、三十五階建てのアパートメントの屋上から夕暮れの太平洋を眺め…

植木意志
2年前
22

短編小説「午前零時のマクドナルド」【後編】

 テーブルの向こう側、彼女が唖然とした様子で僕を見上げていた。  まるで僕が反撃に出たこ…

植木意志
2年前
19

短編小説「午前零時のマクドナルド」【前編】

 仕事が完了した後、我々はマクドナルドへ向かった。  それまで、地下駐車場に停めた車内で…

植木意志
2年前
26

幽霊が出た!

 数学の授業が終わり、次に英語の授業が始まるまでに十五分の休憩時間がある。  この時間、…

植木意志
2年前
22

短編小説「少年たちの秘密基地」【後編】

 秘密基地の外に、誰かがいる。  その事実は、一瞬にして僕らに緊迫感を与えた。  シーツ…

植木意志
2年前
22

短編小説「少年たちの秘密基地」【前編】

「そう、誰がこのクラスの給食に勝手にプリンを追加したのか、ほんまに誰も知らんということやね?  分かりました。これから塾や習い事がある人もおるやろうから、今日のところはこれで解散とします。はい、解散」  5年2組の帰りの会は、糸井先生のその言葉で幕を閉じた。  僕ら-僕とマナブとシゲチーとよっちゃんの4人-は教室を真っ先に飛び出し、階段を駆け降りた。  昇降口を出ると、強い日差しが僕らを迎え入れた。校庭からアブラゼミの鳴き声が聞こえる。  7月中盤。夏休みまで、あと少し