【読書メモ】『ビジョナリー・カンパニーZERO』(ジム・コリンズ 著, ビル・ラジアー 著)
▶今回の書評本『ビジョナリー・カンパニーZERO』(ジム・コリンズ 著, ビル・ラジアー 著)
『ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』
ジム・コリンズ 著, ビル・ラジアー 著
日経BP
▶読書メモ
目次
リーダーシップ・スタイルの7つの要素
誠実さ
有効なリーダーシップのもっとも重要な要素は、会社のビジョンを誠実に実践すること
価値観や目標は、リーダーが「何を言うか」ではなく「何をするか」を通じて社内に浸透していく
健全な会社では、リーダーの語る言葉と心の中で抱いている思いには矛盾がない
価値観はリーダーの体からにじみ出て、日々の活動を通じて組織に刷り込まれていく。
有能な企業経営者は、自分の価値観、信念、願望をどこまでも熱く語る。
最高のロールモデルになる。
誠実に「語る」だけでは不十分。誠実に「行動」しなければならない。
1つひとつの意思決定や行動があなたの理念と一致し、それ自体がコアバリューの表現になっていなければならない。
会社のリーダーは親や教師のようなものなので、社員はあなたが示す模範に従おうとする。
あなたは理想とする文化のロールモデルにならなければならない。
言行一致、有言実行あるのみ。
自らの行動を行動で裏づけない経営者には誰も共感しない。
あなたの大義は何か(例:愛する会社を救うこと、社員がワクワクするような未来を創ること)
決断力
困難を乗り越えて意思決定をする能力は、優れたチームやリーダー個人に欠かせない資質。
企業をつくるリーダーは、優柔不断に陥ることがない。完璧な情報が無くても(完璧な情報がそろっていることはまず無い)決断する。
物事をじっくり分析するのは良いことだが「分析マヒ」の状態に陥るのは禁物。
あらゆるリスクを排除できるほど、あるいは迷いなく判断を下せるほど十分な情報やデータが集まることはめったにない。
あらゆる経営分析は前提をどう置くかによって結果がまるで変わってくる。全く同じファクトを分析しても、人によって全く異なる結論に達することも多い。それぞれが全く異なる前提に基づいてファクトを見ているからだ。
直感に従う
意思決定が上手な人は、たいてい冷静な分析と直感の両方を組み合わせている。
責任はあなたが引き受け、成果は共有する。
「建設的対立(=反論にコミットする)」(インテル)。全社員に重要な問題を解決するために議論、論争、異議を唱える義務を持たせる。
集中力
「最初にやるべきことをやり、2番目以降は一切やるな。さもなければ何もできずに終わる」――ピーター・ドラッカー
有能なリーダーは集中する。優先課題を最小限に絞り、脇目もふらずに専念する。すべてをやれる人間はいない。
一度にひとつずつ。優先事項の短いリストを作成する。短いというところがミソ。優先事項は一時期にひとつに絞る。ひとつに決めたら片が付くまでそれに集中する。どうしても複数になる場合でも3つを超えないようにする。それ以上になるのは優先順位を決められないことを認めるのに等しい。
仕事ではなく時間を管理する。自分の時間を調達あるいは内製することはできない。優先事項を決めるのに重要なことは何かという困難な選択と向き合わなければならない。重要なのは決断力。
人間味
偉大な企業を育てるリーダーは「現場型」。ビジネスに人間味を加えようとする。
人間関係を育む。
偉大な企業には、すばらしい人間関係がある。顧客との関係、サプライヤーとの関係、投資家との関係、社員との関係、そして社会全体と良好な関係を築く。あらゆる場面で長期的で建設的関係を築く。手軽なコミュニケーションを活用する(例:便箋など)
近づきやすく、話しかけやすい存在であれ。堅苦しい秩序には何の意味もない。近づきやす雰囲気を身にまとう。社員とはファーストネームで呼び合おう。「立場による壁」(専用駐車場、豪華な執務室、目に余る幹部専用の特典)は最低限に抑える。
何が起きているか把握する。会社が大きくなったらトップは現場で起きていることに直接かかわらないという常識は捨てる。会社のリズムや活動を直接把握する時間を確保すべき。そのためには自分の眼で現場を見て、自分の耳で聞くしかない。どんな問題が起きているのか、何がうまくいっているのか、社員がどんな気持ちでいるかを直接確かめる。自分の指で会社の脈をとる方法を模索する。
細部へのこだわりを象徴する行為によって価値観を浸透させる。
偉大な企業をつくる経営者によくみられる矛盾は、ハイレベルな「ビジョン・戦略」と一見取るに足らない「ディテール(細部)」の両方に徹底的にこだわること。
ディテールへの対処の仕方が、会社のコアバリューに関するハイレベルな意思表明になることもある。ある種のディテールに関与すると、非常に強力なメッセージを発信できる。
「人間味のある対応」と「マイクロマネジメント」を混同してはいけない。両社は別物。マイクロマネジメントはおそろしく有害。
マイクロマネージャーは「木を見て森を見ず」。ありとあらゆるディテールをコントロールし、指示を出そうとする。この場合、従業員は、自分たちに能力があり、信頼されていると思えず、常に「見張られている」気がして、社員はいらだち、やる気をなくす。
マイクロマネージャーは、社員を信頼せず、ありとあらゆるディテールや意思決定を「コントロール」しようとする。最終的に正しい判断をできるのは自分だけだと考えている。
一方、人間味のあるリーダーは、社員が基本的に正しい判断をすると信頼する。社員の能力を尊重する。
「エンパワーメント」と「無関心」を混同しない。
対人スキル
偉大な企業をつくるリーダーは、硬軟の使い分けに習熟している。社員におそろしく高い水準のパフォーマンスを求める(硬)一方、社員の自信を育み、自分自身と自らの能力を肯定できるようあらゆる手を尽くす(軟)。
企業での有効なリーダーシップの要素のうち、もっとも活用されていないのは「ポジティブ(肯定的)なフィードバック」。人間は、ポジティブな自己イメージがあるとパフォーマンスが良くなる。
企業のリーダーは、社員にほとんどフィードバックをしないことがあまりにも多い。フィードバックをしないのは「我々はあなたのことなど大切に思っていない」というメッセージに等しい。大切に思われていないと感じると、社員は最善を尽くさなくなる。
批判的フィードバックの実践方法として、リーダーが教師になる。部下に対して、修正的、ネガティブな指導をしなければならないときは、自分は批判する立場、上司であるという考え方すら捨てて、ガイド、メンター、教師だと考えてみる。批判のプロセスを、相手の成長につながる教育的経験にしなければならない。
高い基準を設ける。
社員を褒め、失敗から学べるようサポートすることは重要とは言っても、質の低い、無責任なパフォーマンスを許容するということではない。ポジティブなフィードバックは、高い基準と組み合わせる必要がある。優れたリーダーは、社員に、能力を試し、成長し、ベストを尽くす機会を与える。
コミュニケーション能力
偉大な企業はコミュニケーションを糧に成長する。
有能なリーダーは、組織の上下左右、ときには集団、個人、あるいは全社に、書面や口頭で、公式あるいは非公式に、メッセージを伝える。常に組織の中でコミュニケーションが行われている状態を産み出そうとする。ビジョンと戦略は、ただ策定するだけでは不十分で、伝えなければ意味がない。
効果的なコミュニケーションに、巧みな弁舌や表現豊かな文章力が必要なわけではない。ただ口に出せばいい。何度も何度も、語る、書く、図にして、また語る。
アナロジーとイメージを活用する。
会社が何を成し遂げようとしているかを鮮やかなイメージで伝える。ビジョンの実現に向けて着実な歩みを進めているのか、具体例を使って説明する。組織の価値観や精神を体現するエピソードを語る。比喩、たとえ話、象徴を使った生き生きとした描写は、強力なコミュニケーションツールとなる。文字にこだわるのはやめる。絵にしよう。物語を語ろう。たとえ話は必ずしも厳密でなくてもいい。鮮やかに描写しよう。たとえ話が論理的に正確か否かを気にする必要はない。重要なのは効果的に伝えることであり、論理的な正確さではない。無機質なコミュニケーションに人間味を加える。
(1) 自分自身をさらけ出す。
臆することなく自分の経験や観察したことを語る。自分自身について、あるいは自分の経験や世界に対する独特のモノの見方を語ると、たとえ個人的につながりのない相手であっても、聞き手との間に親しみが生まれる。
(2) 率直に、自分らしく、気取らない形で伝える。
「一般的に」といった顔の見えない誰かではなく、「私たち」「あなた」「私」を主語に語ろう。「友達」や「仲間」といった温かみのある言葉を使い、目の前に相手がいるかのように語りかけよう。文章は短く、生き生きと、明確な表現、分かりやすい単語を選ぼう。問題を率直に語り、隠さない
周囲にもコミュニケーションを促す
コミュニケーションは上から下への一方通行ではいけない。組織のあらゆる階層で、あらゆる方向に情報が流れるべき
社員にたくさんの質問を投げかけ、相手に答える時間を与える
社員にスタッフミーティングに出席するときは、少なくとも一つ、全員と共有すべき情報を持ってくるよう求める。
社員にスタッフミーティングに出席するときは、少なくとも一つ、質問を考えてくるよう求める。気になる質問は何でも口にするよう奨励する。質問に答えるときは「良い質問だ。聞いてくれてありがとう」と言い添える。質問などしなければよかったと思わせるほど、コミュニケーションを阻害することはない。
社員に正式な会議でも気楽なミーティングでも「常に本音を語る」よう求める。
多数派とは見解が異なる人がいた場合、必ずその人の意見をきちんと聞く。
自発的姿勢を促す。社員には何かあったらすぐ集まり、問題に取り組むことを奨励する。自然発生的で形式ばらないミーティングは、コミュニケーション手段として極めて有効。
堅苦しい形式主義は排除する。ワイシャツの一番上のボタンをはずし、ネクタイを緩めるなど。
社内に派閥や緊張関係があるときには、「橋渡し役」になろうと考えてはいけない。橋渡しをする代わりに、すべての派閥を一室に集め、問題を直接話し合ってもらうべき。
社員には意見だけでなく、率直な気持ちを語ってもらおう。私たちはみな、さまざまなことについて強い感情を持っている。感情を押し殺したままでは真のコミュニケーションは不可能。
やらないよりやり過ぎの方がいい。
常に前進する姿勢
偉大な企業のリーダーは、個人として常に前進、向上している(個人的成長)。さらに常に前進する精神を会社にも浸透させる。こうしたリーダーはエネルギーレベルが高く、決して慢心しない。
勤勉さ
勤勉さが必要。ただ、勤勉と仕事中毒は全く違う。勤勉に働くのは仕事を成し遂げるため。仕事中毒は強迫観念、恐怖のために働く。日々向上する
今よりもっと有能なリーダーになる努力をやめてはいけない。向上の余地は常にある。自らに求める基準はどこまでも高くすることができる。スキルを学び、伸ばすことを止めてはならない。常に高い基準を目指すという揺るぎない決意を持つ。日々、昨日より上を目指そう。
自分の弱みや欠点に注意を払おう。弱点はどこか、何を努力すべきか、手厳しいフィードバックを求めよう。「良薬は口に苦し」。真に傑出したリーダーになるためには、たゆみない自己研鑽にコミットしなければならない。常にエネルギッシュで
自分の体と心と精神を大切にする。十分な睡眠をとり、健康を維持し、運動し、気晴らしをし、読書をし、面白い人たちと会話をし、新しいアイデアに触れる。
自分に新しい課題を与える。一人の人間として、生気にあふれ、ワクワクし、成長し、元気はつらつとしているために、必要なことは何でもやる。
自分のしていることが好きであるというのは必須。
高いエネルギーレベルを維持する最高の方法の1つが常に「変化」すること。新しいことを試し、新しいプロジェクトに首を突っ込み、仕事のやり方を変え、実験してみる。常に新鮮な気持ちでいられるように、できることは何でもやってみる。変化はエネルギーを消耗するが、それ以上のエネルギーを生み出す。楽観主義と粘り強さ
生産性が高く幸福な人ほど、基本的に未来に対して楽観的である。
ただ楽観的なだけでは不十分。不屈の精神、粘り強さとセットでなければならない。会社とともに「前に進み続ける」
動き続ければ、前に進んでさえいれば、きっとすべてうまくいく。偶然何かを見つけられるのは、動いているときだけだ。
偉大な企業の顕著な特徴の一つが、変化し、改善し、新しいことに挑戦するのを決してやめないこと。
偉大な企業は決してゴールに到達しない。もうこれで十分とは決して思わない。いったん高みに上り詰めると、新たな課題、リスク、冒険、さらに高い基準を探す。成功すれば祝い、味わい、楽しむが、それも終わることのない長い旅路のつかの間の休息に過ぎない。魂に触れる
リーダーシップの本質とは、明確なビジョンを示し、集団と共有し、行動を促すこと。そして社員の魂(心の中の気高い部分)に触れること。
ビジョン(=コアバリュー→パーパス→BHAG)⇒戦略⇒戦術
コアバリュー
会社の指針となる原則。会社を導く哲学。
会社の特徴を形づくる人々個人のコアバリューを反映。
高い犠牲を払っても堅持される。慣行や戦略は変わってもコアバリューは不変。
時代を超える。パーパス
組織が存在する根本的理由
案内星のように、常に追い求める対象だが、決して手に入らない
完璧に遂行すると傑出した世界に2つとない会社になる
100年間にわたって会社の指針となるBHAG
社運を賭けた大胆な目標
高い山に登るときのようにゴールが明確
成功の確率は100%ではない。能力を大幅に向上させる必要がある。
人々の心を揺さぶり、意欲を掻き立てる。容易に理解できる。
理想的な時間軸は10~25年
イノベーション
イノベーティブな企業になるための6つの要素
どこで生まれたアイデアでも受け入れる力
自ら顧客になる
実験と失敗
社員がクリエイティブになる
自律性と分権化
報酬
イノベーティブな企業になるための具体的行動
社外から持ち込まれた新しいアイデアを積極的に受け入れることを全員の責任とする。
別の業界で尊敬されている企業と組んで、社員交換制度をつくる。
外部のデザイナーを採用する。
社員が興味深い人やアイデアと接触できるように、技術団体、業界団体などに加入させる。
社員を出張させたり、世界を旅して新しいアイデアに触れる機会を与える。
新しい気づき、アイデア、技術、研究結果が載っていそうな学術誌や出版物を定期購読する。
先進的なアイデアを持つ人を招き、講演やセミナーをしてもらう。
社員を選抜し、会社負担で教育プログラム、セミナー、大学が協賛するイベントに参加させる。
社員に仕事と関係のないノンフィクションを読み、学んだことを共有してもらう。
イノベーションは一見関連のなさそうなアイデアの関連性に気づき、融合させるところから生まれることが多い。
顧客から何千というアイデアが寄せられる仕掛けを作る。
クリエイティブ・プロセスについて学ぶための資料
『クリエイティビティ イン ビジネス』
『メンタル・ブロックバスター』
『問題解決のアート』
『水平思考の世界』
『頭脳を鍛える練習帳』独自のイノベーション・マニフェストを作成する
「そんなアイデアはくだらない」と絶対に言わない
まず実験し、評価はその後にする
顧客から1000個のアイデアを集める
毎年売上高の25%は過去5年に発売された製品が占めるようにする
アイデアがある人全員に発言の機会を与える
「二番煎じ」の製品は絶対につくらない。何かしらイノベーティブな要素のある製品だけをつくる
規模とイノベーションの変化のパターン
小さな会社
→イノベーターを引き寄せる
→成功と成長
→会社が大きくなる
→リスク回避型、安定志向の人材を引き寄せる
→官僚主義が根づく
→とびきりイノベーティブな人材が会社を去る
→イノベーションが減少する
←------- 経歴の多様性 -------→
←-- コアバリューの多様性 ---→イノベーションに報酬を与える
クリエイティブな成果を出す社員をヒーローとして扱い、功績を認め、表彰や名誉を与える
イノベーションについて測定可能な目標を設定し、それに基づいて評価する
管理職になることを希望しないクリエイターには、別のキャリアパスを用意する。
価値あるクリエイティブな成果に対し、個別に報酬を出す。
「ピンボール方式(=ゲームに1回勝つと、もう1回プレイできる)」を導入する。個人やチームがクリエイティブな成果をあげたとき、それに報いる最善の方法のひとつは、新しいワクワクするような重要な課題に取り組む機会を与えること。
真にクリエイティブな人材は、息抜きや楽な仕事には基本的に魅力を感じないし、そんなことは全く望んではいない。何かをつくること、イノベーション、新たな挑戦、学習、自分の仕事を評価してもらう機会を求めている。
クリエイティビティを刺激するためのマネジメントルール8ヶ条
励ます。あらさがしをしない。アイデアを受け入れる力。
決めつけない。相手を一方的に批判しない。リスペクト(敬意)。
内気なタイプを後押しする。無口な人は観察眼が鋭く、思考力に優れている傾向がある。
好奇心を刺激する。あくなき好奇心、さまざまなことを知りたい、検証したい、何が上手く機能するか確かめたいという純粋な要求がクリエイティビティを育む。クリエイティブな人は「なぜ?」と聞きたがる純粋な子供の心を持ったまま大人になったように、たくさん質問する。批判的な質問ではなく、探求心を持ってオープンエンド(自由回答式)の質問をする。お気に入りの質問は「その経験から何を学んだのか」だ。
必要を生み出す。私たちには一見どうにもならない状況を脱出する方法を見出す驚くべき能力がある。「必要は発明の母」。すばらしいアイデアの中には、企業に本来やりたかったことをやるだけのリソースがなかったからこそ生まれたものが多い。
喧騒から距離を置く時間を与える。
グループによる問題解決を促す。ブレーンストーミングのようなグループ活動からは、すばらしいアイデアが生まれる。
「楽しむこと」を義務づける。楽しくなければクリエイティビティは生まれてこない。
▶感想
ビジョナリーカンパニーシリーズ
『ビジョナリーカンパニー』
『ビジョナリーカンパニー2 ~飛躍の法則~』
『ビジョナリーカンパニー3 ~衰退の五段階~』
『ビジョナリーカンパニー4 ~自分の意志で偉大になる~』
『ビジョナリーカンパニー 弾み車の法則』)
は既に読了済みですが、それらに比べて、特に、リーダーシップとイノベーションに関して、示唆に富む内容がふんだんに盛り込まれていて、読みごたえがありました。是非、今後の会社人生の中で活用していきたいです。
以上です。
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