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「雪は天から送られた手紙である」。最強寒波の最中だから、中谷宇吉郎と雪の話。

最強寒波が日本列島を襲い、ここ数日は大雪や寒気に要注意だそうです。
電気代高騰の最中だと、暖房代や除雪のことを考えるとなかなか厳しい状況ですね。
大雪の中の立ち往生での事故死も恐ろしいことです。今年は、そういった被害がないことを祈るのみ。
私の住む九州・福岡でも、気温はマイナスを記録。寒い上に、雪が降る降る。普段は積雪も少ないので、長靴やらなんやら、それ用の備えもない。防寒のためのコートや防止や手袋やマフラーも特段用意していないので、しばらくはおとなしく引きこもっておくに限ります。

大変な話題を一通り出し尽くしたところで、最強寒波や大雪を楽しみたいと思います。
キーワードは、「中谷宇吉郎」「雪」。
知れば知るほど面白いこのキーワードに関するトピックについて、皆さんが触れるキッカケになれれば嬉しいです。

中谷宇吉郎とは何者?

いきなり名前を出したものの、中谷宇吉郎とは何者なのか、ご存知でない方も多いかと思います。
あまり話題に出るような名前ではないかと思いますが、私の中では、日本で指折りの面白い科学者です。
彼の研究分野は、雪や氷を扱った「低温の世界」。
彼が遺した名言に、「雪は天から送られた手紙である」という、やけに神秘的でキレイなものがあります。

世界で初めて、雪の結晶を人工的に作った研究者

雪の結晶の研究の第一人者で、1936年3月12日に、世界で初めて大学の低温実験室にて人工雪の製作に成功しました。
それだけ聞くと道楽みたいな研究に感じるかもしれませんが、それに関連して凍上(寒気によって土壌が凍結して氷の層が発生し、それが分厚くなる為に土壌が隆起する現象)や着氷防止の研究を重ね、現代でも広く役立つ低温科学に大きな業績を残しました。
特に北国の方々は、中谷宇吉郎氏の研究に、知らずのうちに助けられていることが多いのではないでしょうか。
戦時中も人工雪や兵器における着氷防止等の研究を続けましたが、戦時中のゴタゴタで結局研究所を追い出されてしまった苦労人でもあります。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E8%B0%B7%E5%AE%87%E5%90%89%E9%83%8E

(詳細はWiki記事を参照ください)

研究のハイレベルさもさることながら、彼の魅力は、彼の優しい言葉で書かれたエッセイにあります。
私のように科学に全く縁がない人間に対しても、自分の研究や世の中で当時取り沙汰されていた科学に関して、分かりやすく伝えてくれます。もう何十年も前の文章でも、スッと入ってくる軽快な文章は必見。
オススメを、これから紹介します。

おすすめ文献①「雪は天からの手紙: 中谷宇吉郎エッセイ集 (岩波少年文庫)」

彼の1番の名言がタイトルの1冊。
これ1冊で、中谷宇吉郎氏の人間性や、中谷宇吉郎氏が取り組んできた研究についてはおおよそわかります。
研究についてザッと学ぶ用途でも十分ですし、文学作品として楽しむ用途でもこれまた十分です。なにより面白いので、スッと読めてしまうかと思います。

おすすめ文献②青空文庫を漁ると、数週間は退屈しない

現在、著作権で保護されるのは作者の没後70年。しかし、中谷宇吉郎氏に関しては、著作権保護対象が没後50年の時期に著作権フリーとなっているので、1962年没で没後61年しか経っていないものの、既に青空文庫にて著作が読める状態になっています。

どれから読んでも面白いですが、私のお気に入りは「悪魔の足跡」「原子爆弾雑話」です。
「原子爆弾雑話」については、現代と重ね合わせても色々思うところが多いので、次の小章にて個別に紹介します。

おすすめ文献③原子爆弾雑話

私が一番好きなエッセイです。

短いながらも、いろんな逸話や視点が織り交ぜられていて、これが終戦直後の1945年10月に発表された、というのはいろいろ凄いなと思います。
広島と長崎に原子爆弾が投下される遥か前から、中谷宇吉郎氏は原子核研究による兵器の研究について、その無限の可能性と恐ろしさについて知っており、日本でもその研究を進めるはずが、もっと成果が短期で出せる他兵器の開発を優先するために中断されたという内容がハッキリ書かれています。
私がこのエッセイについて語りたいことが、Amazonのレビューにて綺麗にまとめてあったので、そのまま引用します。

5つ星のうち5.0
日本の「今」に通じる貴重な箴言
2020年5月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
 昭和二十年十月(1945年)の文藝春秋に掲載された記事ですが、広島・長崎への原爆投下、終戦の直後に書かれた文としては驚くほど冷静沈着で、本質を突いて居ます。まだ「新型爆弾」と呼称されて居た頃ですが(「新型」という言葉の欺瞞性に気付かされます)、昭和初期の頃から日本でも原子核レベルでのエネルギー生成の技術の可能性が研究されていて、歐州の研究をフォローしていた様子が良く分かります。其の上で、歐州の研究だけでは数十年を要してもおかしく無い研究開発を米国がマンハッタン計画で桁違いの研究開発費と人員を投入してあっという間に成し遂げた事実を具體的に数字を挙げながら指摘しています。最近、改めて発掘されている内容(ISBN-13: 978-4106107825)を既に当時の専門家達は知って居ただけでなく、此の様に終戰直後に公開までされていた事は十分に注目すべきでしょう。海軍が研究開発に乗り出して居た事にも触れて居ますが、終戰直後に此の様な話をさらっと書いて居るのには驚かされました。それだけ、戰後の言語空間が歪んでいた証左でもありますが、終戰直後であったからこそ此の様な「雑話」が出せたのかもしれません。
 特に注目されるのは「ところが実際にそれが使用され、やがてその全貌が明かにされて来て、初めて今度の戦争の規模が本当によく理解されたのである。」という認識です。つまり、核兵器の使用がルーズベルト政権にとっての大きな戦争目的であった事を看破しています。
 もう一つ、獨逸からユダヤ人學者が流出した結果、獨逸から出てくる学術論文のレベルが低下していた事を昭和十五年頃から察知していた著者は「事実獨逸が遺産を喰くい潰つぶしている間に、米國ではどんどん貯蓄して行っていたのである。」と評して居ます。ネオコン經濟に洗脳されて自國の科学技術の基盤破壊を進める今の日本の現状(2000年以降)とそっくりですね。著者が紹介している「ある一人の優秀な物理学者が、関係官庁の要路の人のところまでわざわざ出かけて来て、その研究に必要な資材の入手方かたの斡旋あっせんを乞こわれた。その時の要求が真鍮棒一本であった」という笑えない話が、今の日本の姿なのですが、、、

https://amzn.asia/d/dVfTQA2
原子爆弾雑話 Kindle版 レビューより引用

このエッセイ、非常に読みやすいがゆえ、いろんな思いが湧き上がってきます。
特に、先の大戦で大きく負けてしまった日本・ドイツの状況と問題点が非常に分かりやすく書かれており、読めば読むほど「今の日本じゃん・・・」と恐ろしくなってきます。
なので、読むときは明るいときに読みましょう。深夜に読んではなりませぬ。眠れなくなるので・・・。

雪の結晶についての雑学

前章では中谷宇吉郎氏について紹介しましたが、この章では、彼が研究をしていた「雪の結晶」についてです。

おすすめなのはこちらのサイト

非常に分かりやすくまとめられていたので紹介します。
Yahooさんありがとう。
後半は雪害についてとその予防についてなので若干重い内容になりますが、前半では雪の面白ポイントが簡潔にまとまっています。

雪の結晶はスマホで撮影できる

100円ショップでも購入できる、スマホ用のマクロレンズを使えば、スマホで雪の結晶を撮影できるそうです。
降ってきた雪を、紺色等の色の濃いものの上に載せて、マクロレンズ越しにカメラで見ると・・・
こんな綺麗な雪の結晶が撮れるとか。
他人とは一味違うインスタ映えを楽しめるかもしれません。

「雪は天からの手紙」――結晶の姿から何がわかる? 雪害に備えるために知っておきたいこと より引用
https://news.yahoo.co.jp/special/snowcrystal/

黒地のコートなんか着てる人は、袖の上に雪を着地させて、素早くレンズで狙ってみるといいですね!

結晶で分かる、天気の状況

雪の結晶をよく見ると、雪を降らせている雲の中の状況がだいたいわかるそうです。
雲の中の水蒸気量と温度で、雪の結晶の形はだいたい決まります。

「この形の結晶の雪はサラサラしているため、同じ降水量でも表層雪崩を引き起こしやすく危険である」みたいな危険の予測が、結晶をみればできるそうです。
現代、こういう危険予知が行えるのも、中谷宇吉郎氏の研究の賜物なんですね。
「雪は天から送られた手紙である」というのは、こういう意味も加わっているのかもしれません。

まとめ

今回、最強寒波が来るということで、緊急で記事を作成してみました。
「雪やコンコン」ではしゃぐのも楽しいですし、積雪による被害を憂うのも重要だとは思いますが、
こういう時には、冷たい世界の研究を重ねた昔の偉人について思いを馳せる、なんていう大人の楽しみ方も良いんじゃないかと思います。
「雪は天から送られた手紙である」なんて、キレイな名言一つ覚えておくだけで、ふとした話の際に知的でロマンティックな人だと思ってもらえるかもしれませんよ。

この記事を書くにあたって、また中谷宇吉郎氏の青空文庫を読み漁っています。面白い。止まらない。

皆さんも雪にはお気をつけて〜

#大寒波 #スキしてみて

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