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出雲弁で楽しむ奥出雲の民話「小僧の化け物退治」

奥出雲町の福頼地区で伝わるお話しです

マンガをいつも楽しみにしていただいている方にはしばらくお休みをいただき申し訳ありませんでした。マンガ復活前に
奥出雲に伝わる民話 小僧の化け物退治

を紙芝居にし、町内の学校や図書館に寄贈したものを広く知ってもらおうとnoteでも公開いたします。普段聞きなれないかもしれませんが奥出雲を感じてもらうために全編出雲弁でお話しを進めます。
この意味なんだろう!?
っと想像しながら出雲弁で綴られる小僧さんのお話しをお楽しみください!


とんと昔があったげな。
あるお寺に、和尚さんと小僧さんとおったげな。 その小僧が手に合わん小僧で、和尚さんが修行に出してやろうかと思って、
「修行に出え」
て言われたげな。

それから小僧は仕方がないだけに、荷物をからげて坂をこてこて下りよったげな。そうしたら、
「小僧、小僧。ちょっこうもどれ。用がああけん」
言われたげな。小僧は、
「やれ、うれしや。まぁほんに、おらが出ぇだけに、和尚さんのもどいてごさっしゃぁわや」
思ってもどりかけたげな。もどったげなら、和尚さんは、
「大木の根より小木の根」
いって言われたげな。それから、「もどれぇ」いって言われないから、しかたなしにまた坂をこてこて下りていたら、
「小僧、小僧。ちょっこう用がああけん、またもどれ」
言われたげな。
「まあ、こら、ほんに今度ぁもどいてごさっしゃわい」
思って、もどったら、
「方丈の間より次の間、縁の下まで」
いって言って、「もどれ」いって言われないので、それからまた仕方なく小僧さんは出たげな。

それから、まあ、ずっーと歩いて行っていたら、空が曇ってきて、大きな雷さんが鳴って雨が降ってきて、小僧は、
「大きな木の下へ入っていたら雨がかからないから」
思って大きな木の下へ入って、ちゃぁんとしゃがんでおったげな。
そうしたら、雷さんのえらいやつが鳴るものだから、和尚さんのほんに
「大木の根より小木の根」
いって言われたがと思って、そこの大きな根の木の下から、細い木の下へ行ってちゃぁんとこうしてしゃがんでおったげな。

そうしたら、大きな雷さんが鳴ったと思ったら、いま、小僧さんが休んでいたぶんの木に向けて雷さんがあまったげで、
「ああ、ほんに和尚さんの、あげ言いて聞かしぇてごさっしゃっていいことしたぁ、おら、命拾いしたわ」
と思って、それからまた田んぼ道をこてこてこてこて行っていたら、今度は日が暮れるようになったげな。

それから、まあ、どこで泊まらぁかいと思って、たったも行っていたら、晩になるし、他所の家に行って、
「今夜、泊めてごさっしゃい」
いって言ったら、
「うちにはよう泊めんけん、そこの後ろに庵寺があぁけに、あすこへ行って泊まらっしゃい。あそこにゃだれんだいおらん」
言って。小僧さんは、
「まあ、嬉しや寝ぇとこさえありゃいいけん」
思ってそこへ行って寝ておったげな。

そうしたら、晩になって、夜中時分になったら、
「テンテンコヅッつぁん、うちんかね」
言って何やら来たげな。それから、
「はぇ、はぇ」
言ってアマダで声がするげな。てんてんてんてん上がるげな。それから、
「あらぁ何だいおじぇえなぁ」
と思っていたら、また、
「テンテンコヅッつぁん、うちんかね」
「はぇ、はぇ」
またてんてんてんてん上がるげな。
「あらぁおじぇえなぁ、こりゃぁ、ほんに何がおぉだらか」
と思って、うーんと化け物が出たわい、と思って、小僧は恐ろしくて恐ろしくていけないから、ちゃあんと小さくなっていたげな。

そうしたら、アマダでデレーンデレーン言わしてとんで回って遊んでおるげな。それから小僧さんは恐ろしくていけないので、一生懸命になって隠れておったところめが、やがてのほどに、
「今夜は坊主くさいぞぉおぉ、今夜は坊主くさいぞぉおぉ」
いってアマダで言い出したげな。小僧さんは恐ろしくていけないので、それからまあ、方丈の間へ入ってちゃぁんと隠れておったげな。

そうしたとこめが、今、小僧がおったとこへ向けて、アマダからダラーンダラーン走って下りて、そうして捜しだしたげな。小僧は恐ろしくていけないので、方丈の間で小さくなっていたけれども、ああ、ほんに、方丈さんのああ言われた、
「方丈の間より次の間、縁の下まで」
言われたからと思って、次の間へ行って、ちゃぁんと隠れていたげなが、

また、化け物たちが方丈の間へとんできてからに、
「坊主くさい、坊主くさい」
言って捜すげな。小僧はまた恐ろしくなって、今度は縁側の下へ入ってちゃぁんと隠れておったげな。
 そうしたところが、化け物たちが方丈の間から出て、次の間へ入ってデレーンデレーン騒動して捜しているうちに夜が明けかけたげな。
 東の方が少し赤くなりかけたげな。そうしたげなら、今まで騒動していた化け物が、
「今日はこぉでしまわぁ。また捜さぁ。おらぁアマダへいんじょうけん」
「はぇえ」
そうする一つのやつは、
「おらぁ、庭の垣根の上に上がっちょうけん」
それから一つのやつは、
「おらぁ、後ろの竹山へいんで寝ちょうけん」
 言って帰ったげな。そうして大分赤くなって、小僧が、
「ほんに、こんなぁ大分赤んなったが、何の化け物がおったやら」
と思って、
「庭の、ほんに垣根の上へいんじょうけんいって言いたけん」
と思って、それから、そろっと縁側の下から出て、行って見たところめが、茶壷の化け物が、

♪ 千年生けった この茶壷

言って、垣根の上で踊っていたげな。
手くそに合わんくらいの小僧さんだから、
「くそー、こんなが千年生けったいって言いただけん」
いって、
「二千年生けぇったこのこっ小僧がー」
言って、とんで行ってスポーンと押したげな。そうしたら、茶壷が落ちてぇえ、黒血吐いて死んだげな。それから、
「おらぁ、アマダぃ上がっちょう」
いって言いたけん。

アマダへ上がって見たら、何にもなかったけれども、大きな椿の木でこしらえたカンコが一つあったげな。
「はーて、テンテンコヅッつぁん言いだけん、このカンコだわい」
と思って、上から下へスターンと落としたら、また、それが黒血を吐いて死んだげな。今度は、
「おらぁ竹山へいんじょうけん」
いいて言ったけん、何がおぉやらーと思って竹山へ行ってみたら、鶏の化け物が寝ておったげで、それをたたいて殺して、そうして小僧さんがもどって、ちゃぁんと寝ておったげな。

そうしたら、村の衆が、
「あの寺は化け物が出ぇけん、かわいそうに夕べは、ほんにあの小僧はあの化け物に噛み殺されたらぁが、さあ、行ってみょう」
言って大勢して来たげなら、小僧が化け物を退治して、ちゃぁんとおったげで、それから村の者が喜んで、その小僧さんをそこの寺の和尚さんにしたげな。
 昔こっぽし。


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