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【ポンポコ製菓顛末記】                   #34 タスマニア人

 20世紀初頭のイギリスの小説家 サマセット・モームの名言
 「もちろん知っていると思うけど、不倫を決してしなかったタスマニア人は絶滅したからね」
 さて、我々はタスマニア人になれるのか??


お前、いい加減にしろ!!


 
 
 ポンポコ製菓の役員は創業家を除いて程度の差はあるが、皆、オンナ好きでご盛んである。とりわけF役員はいわくつきであった。本社にいる時は、それこそ目立たないようにしていたが、海外子会社の社長に赴任した時は、野に放たれた野獣の如く、やりたい放題になった。単身赴任で行ったものだから、社員には手を出す、それ以外も風紀的に問題有ということで、ついに本社にも苦情が入るようになった。

 人事担当役員が現地に調査に行くと、実態は予想以上で、F役員社宅に踏み込むと女性服や下着が散乱していたということまで噂になった。(どうして社宅捜査ができたのか定かではないが) 

 当の子会社の業績は好調であったが、即刻本社に呼び戻し、本社の管理部門の職務で半ば謹慎扱いとなった。ところが大人しく殊勝にしていたものだから敗者復活のチャンスを与えられ、再び別の海外子会社の社長に赴任したのだ。すると性懲りもなく、また、野獣が吠えたのである。今度は取引先の女社長とねんごろになり、癒着して取引を優遇するまでになった。その噂は本社役員まで届いて社長は苦々しく思っていた。

 かくして本社のビジネスプラン会議でF役員が提案した。今度は業績は伴なわず不振であったが、のらりくらりと言い訳をした。下半身のうわさを聞いていた社長は堪忍袋の緒が切れていて怒鳴った。「F(呼び捨て)!!お前、いい加減にしろ!!

 会議終了後、即刻更迭となった。
 
 

街宣車殴り込み


 
 上が上だと、当然社員にも伝わる。この30年、コンプライアンスが上場企業の中で常識化されてきたが、ポンポコ製菓でも2000年に入ってコンプライアンス体制を整備してきた。総務部事務局、社長委員長でコンプライアンス委員会を設置し、社内のコンプラアンス・マネジメントを徹底した。

 半期に一回、会議を開き、状況を各役員、部長が共有した。私も出席していたが定例的な会議のため、正直、眠気を誘う場面もあった。
 しかし、毎回、眠気も一気に吹っ飛ぶテーマがあった。
 工場、支店、各現場の様々なトラブルの報告である。不祥事スレスレのものがほとんどで、今のようにSNSで投稿され、世に出たら一発でアウトのようなシロモノばかりであった。当時は弁護士のアドバイスをもらいながら、総務部と現場管理者で内々に解決をして事なきを得ていたが、大ごとになったものもあった。

 ある工場の現場監督者と非正規女子社員の不倫問題であった。その女子社員の夫の知るところになり工場に怒鳴り込んできた。たまたまその夫は反社会的勢力に近い方で、そのやり方がハデであった。
 なんと右翼の街宣車もどきで工場前に乗り込み街頭演説を始めたのである。雇用問題とか品質クレームならありうるが、不倫で訴えられるとは何ともみっともない。ポンポコ製菓は特にファミリー、子どもを対象とした良き企業イメージをつくってきたので、大きなイメージダウンとなったが、当時はまだネットもさかんでなかったので、地元のうわさでと留まった。
 
 

「酒・女・カネ」は 昔から解りやすいスキャンダル 


 酒・女・カネ のスキャンダルは今も昔も変わらない。

 つい先日も会社の保養施設で女性コンパニオンと混浴を繰り返したTOKAIホールディング社長の豪遊や、早大で女性蔑視の発言をした吉野家の常務取締役企画本部長、女性の隠し撮りをしていた山田養蜂場専務などキリがない。程度の差こそあれ、人間の根源的欲望がなせる業であろう、
ただ昨今はそれが表にでやすくなっただけで、昔から解りやすいスキャンダルである。

 良いか悪いかといえば、当然良くないので気をつけましょうということだ。特に公的立場の方々は万全の注意が必要だ。
 ただ法令違反は別にして、60才を越えたシニアの経営陣に今更、道徳教育をしても難しい、価値観は変えられないと私は思い、在任中はせめて公的立場を貫き、注意してくださいと話してきた。ホンネやご不満もおありでしょうが、家から一歩出たら公人に徹してください、いや、家の中でも不用意な発言や行動をしてご家族がSNSで発信されるとどうなるか解らないので、ホンネは風呂かトイレのなかの1人の時に叫んでくださいとお願いしてきた。
 

オイ、帰るぞ!


 
 それでも昨今のコンプライアンスの風潮で昭和のオジサンたちもかなり注意していることだと思う。特にまともなお偉方は一見、公人を貫いている。しかしそのような方々も実は全くアタマが上がらない人がいる。

 それは奥方だ。

 どんなに偉くても奥方には頭が上がらない。亭主関白と称している御仁でもだ。何故なら奥方にとって社会の肩書など興味も関心もないからだろう。

 私はイベント等でお偉方の奥方にお会いする機会が何度かあった。つい数分前に立派なご挨拶をした、社長とか、法人の会長・理事長が控室の奥方には遠慮しているのだ。
 公人も家に帰ればただのオジサンだ。
 
それを象徴するエピソード。

 某名門地方局の名物東京支社長がいた。下半身も豪快な方で業界でも有名だった。自宅で入浴後、着替えをしている時に奥方が手伝っていた。
その支社長はうかつにも不倫相手先と自宅とを勘違いしてしまい、何と奥方に”オイ、帰るぞ!“とつい言ってしまった。
 奥方は”どちらに帰るんですか?“とシラッと応えた。


20世紀初頭のイギリスの小説家 サマセット・モームの名言

 もちろん知っていると思うけど、不倫を決してしなかったタスマニア人は絶滅したからね

さて、我々はタスマニア人になれるのか??



 

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