逆噴射ピックアップ2023 #逆噴射小説大賞2023感想行為
よく来たな。お望月さんだよ。今日は逆噴射小説大賞2023で気になった作品をピックアップしていこうと思う。作品の感想というか、作品を読んで考えたこととか連想したことになると思う。(もしかして:日記)
なお、私は十年に一度の創作枯れにより色々と危機でしたが、1作品を投稿できました。自作の題材とか素材は以下の通りです。ハッピーハロウィン!
ピックアップ2023
1. ポテト
ほとんどポテトの話しかしていない。ポテトがどれほど多かったのか。そういう話だけをしている。閉店するのはもったいないなと完全にポテトの腹になったところに、不意に打ち込まれる怪談話。ずるいだろ!
2. 瀬取狩【せどり-がり】
月のない夜に行われるほとんど違法行為。表立って運び込めない商材を仲介する職業は後ろ暗く、公権力に助けを求めることはできない。当然のように瀬取狩のような弱者を食い物にする人々を呼び寄せる。南十字星と凍える夜空の対比が、南国にも地獄があることを教えてくれる。ちなみに「瀬取り」は「せどり(競取り)」とはまったく別の行為みたいです。
3. 誰も賽を裏切れない
マルチバースやシミュレーテッドリアリティ概念に対する世間的な理解が進んでいるように感じる。今年の逆噴射小説大賞にもダイスに運命を左右されるような作品が複数存在していたと思う。ダイスに運命を任せるメリットは、自分が責任を負わなくてもよいという点だ。老人のざらつくほど甘いささやきが聞こえてくる。
4. 寄生者、あるいは人生代替者の帰還
「なんとなくなんとなくここではないどこかへ」帰らなければならない。契約を完了させたのに、理由のない郷愁感と不自由な肉体と失われた声帯に襲われて身動きができない。おお、なんと悲しいことだろうか。
5. 【電網道中飛脚之記】
現実とネットワークの転換がスムーズかつ独創的。デジタルデータをアナクロな飛脚が運ぶ設定にニヤリとさせられるし、主人公もやり手に見えて庇護欲をそそる造形で完成度が高い。
6. お一つどうぞの続き
人生の足し算と引き算を繰り返し、割り切って終わりにするところだったのに「あまり」が出てしまった。何事もうまくいかない男は人生の幕引きにすら失敗する。放たれた弾丸の行方は、黒い森に飲み込まれ誰も知らない。
7. 最期通告/最終追憶
今年のベストのひとつ。視点が錯乱しているため読解負荷が強いが、抗えない「郷愁」が襲い掛かってくる。人類にとって、最強の毒は「郷愁」であると『アニアーラ』でも繰り返し語られている。この作品をとっかかりにして複数の作品のテーマやギミック(動機のてこ)を一段階深く理解できるようになった。
8. 墳墓酒、悪霊
みんな地蔵を蹴ったやつがひどい目にあう(予感)が大好き
9. 不凍駅
タイトルがグンバツに良い!! 緯度バラバラの凍結進行描写とか、不凍駅を巡る国際的な攻防とか、タイトルから連想されるさまざまな要素が脳内に広がり期待がワクワクさせられます。
10. 竜のいる村
みんな自治体にメリット(誰に?)のある共犯関係を持ちかける詐欺師が大好き
11. 進藤さんちの柴コーン
今年のベストのひとつ。普遍的な犬物語にユニコーン性が加わり寿命差コメディの加齢度スコープが発生している。語り口も心地よく似顔絵も完璧である。
12. トマーラ
「うわぁ」「うわぁ……」の二段攻撃は、2023年で最も美しい小宇宙である。他者からの評価は一切向上しないがやることはヤる。『アタック・ザ・キラートマト』というよりは、『チェンソーマン』的なオフビートさを感じる。