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フィクションから読み取るEUとルーマニア情勢 (映画とニンジャスレイヤー)

お座りください。

どうも。社会派コラムニストのお望月さんです。
このところ連続してルーマニア関連のコンテンツを摂取したのでまとめてみたいと思います。

お座りください!今日は変なことは言いません!落ち着いて!

「ありがとう、トニ・エルドマン」(映画)

ルーマニアの石油採掘暗黒メガコーポに務める娘を心配しておっさんが変装をしてお節介を焼きに来る。「最近笑っているか?」「その仕事に意義はあるのか?」「家族と話はしているだろうか」「その恋人の鮭みたいな仕草はなに?」等と付きまとう父親を疎ましく思うのだが……。

「英国空挺部隊 オペレーションV」(映画)

英国の農場に集った吸血鬼首脳会談に英国空挺部隊が襲撃をしかける。その裏には暗黒メガコーポの思惑が。飛び交う銃弾、迫るクロスボウ、その時、仲間に引き込む寸前だった人間が脱出のアイデアをひねり出す。

「クルセイド・ワラキア」(ニンジャスレイヤープラス)

近未来ルーマニアに再臨したブラド公(その正体はニンジャである)が経済的な搾取構造を破壊したため、EUと暗黒メガコーポ連合は十字軍を侵攻させる。一方で我らが殺戮者は聖なるヌンチャクを取り返しに同時にワラキアへ潜入してピーマンの寿司とかを食う。

暗黒メガコーポに搾取されるルーマニア

共通点は「資源」を持つルーマニアを搾取するEUの人々という感じですね。後者二つは資源(人的、埋蔵資源)の象徴的にVを扱っていますね。

「トニ・エルドマン」はかなり明確で、コミニュケーションの断絶した雇用主と労働者の関係性がかなり世知辛く描かれていて、トニ・エルドマン氏のユーモアがギリギリ中和できていない、くらいのバランスになっています。終盤では意識の高いドイツ人ユーモアを逆手に取った娘のとんでもない奇策と謎の毛玉人形に変身した父親の愛情を軸に「人類はユーモアを忘れていないだろうか。石油とは、人材とは、ユーモアより大切なことなのか?」という話に収束していきます。

「オペレーションV」に登場する吸血鬼はかなり先進的で「人を吸い過ぎてはいけない」「移民差別はよくない」「吸血鬼の最大人口は控え目にして、欠員したら補充するくらいにしようね」「女性や子供等の復讐心を掻き立てる相手はターゲットにしない」等と洗練された議題を語り合っている姿が見られます。このため、どうしても吸血鬼側に肩入れしてしまいますが、どう考えても人類を食料として管理しようという姿勢は受け入れられるものではありません。少数の夜の支配者がより大きな軍隊に、軍隊はさらに大きな経済規模を持つ企業に搾取されていくという皮肉な構図を描いています。ビガーケージズロンガーチェインズな。

「クルセイド・ワラキア」は、搾取されるルーマニア資源の救世主としてヴラド公が再臨して全世界にYOUTUBERとして宣戦布告するというニンジャスレイヤーらしいケレン味があるストーリーテリングと爽快な決着の大長編です。これはオペレーションVと構造が似ていますが、さらに描写が繊細で十字軍側(企業連合)の宗教的・経済的な縛りが描かれるスケールの大きい物語です。これを読むだけでもニンジャスレイヤープラス加入の価値はあるので、ぜひチェックしてください。(損はさせません)

これだけ難しく入り組んだ内容を十字軍の再侵攻と人材が流入し続けるワラキアの反抗、そして寄せ集め傭兵軍団の複雑な事情をからめて「エンターテイメント」として完璧に仕上げるんだから原作者の社会派コラムニストぶりはすごいですね。

未来へ

そんなわけでたまたま手に取った作品が共通したテーマ(資源と移民と搾取構造)を備えていたので、この構造は近年注目の構造だと思います。「オペレーションV」は良質ホラーコメディなのでオススメです。邦題とかジャケットのクソ映画っぽさに負けちゃダメ! おばあさんがマシンガンを乱射する映画が面白くないはずないでしょ? たぶん「ロンドンゾンビ紀行」くらいは面白いはず。「トニ・エルドマン」はドイツらしい苦笑いと困惑のギャグがお好きならオススメです。「クルセイド・ワラキア」はNoteに来てるんだから読んでおこうな! な!

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