子どもが生まれて「働く」の価値観が変わってしまったはなし

<軽井沢移住>について書いたはずが、いつのまにか子育てのはなしに変わっていた前回の投稿

思うに、住む場所を変えるということは、「住」だけでなく、「食」や「ライフスタイル」「子育て」まで、つながっているのだろう。

そのなかで、大きなウエイトを占めているのが、「はたらく」ということ。数年前とは比べ物にならないくらい、自分のなかで価値の変動がおきてい流。それは、なぜだろう。ということを考えてみる。

1・50年先が一気にリアルになった

いま世の中には、社会課題とよばれるものがあふれています。「環境問題」「人口減少」、「相対的貧困」など…。そうした自分をとりまく問題に、これまでも、関心がないわけではなかった。NPOに寄付をしたり、これは、という記事をシェアしたり。どうにかせねばと心の片隅で、おもってはいた。でも、想っているだけ、でもあった。

独身のとき、そしてディンクスのとき、時間と関心の多くをつぎ込んでいたのは「自分の」仕事についてだった。シュリンクする出版業界でいかに編集者として生き残っていくか。どうやってヒット作を出すか。手帳に書く年初の目標には「10万部の本を◯作」とか「〇〇年までに30万部のヒット作る!」とか、書いていた。(夢は書くと叶うというやつですね)。ミリオンセラーを出した編集者の方がいらっしゃれば、教えを請いにも行った。何者でもない自分に落ちつかず、わかりやすい成功を求めていたのだと思う。いま思えば。

そんななか、2016年、子どもが生まれた

もちろん、家族への時間(制約といってもいいけど)が増えていった。その一方で、大きく変わったことがあった。「時間軸」の感覚である。独り身のときは、数年後のことで精一杯だった。想像力がなかった。財政危機・環境危機といってもピンときていなかった。頭では理解しても、実感をともなっていなかった。それが、子どもが生まれて、はたと考え込むことがあった。

「あれ?10年後って、まだ10歳じゃん。20年後は20歳。そのとき、日本は、地球は、どうなってるんだろう?」

こうして、来年度の担当作のことしか考えられなかった頭が、2030〜2040年なんてものを、自分ごととして、とらえるようになった。ここで、頭をもたげてきた疑問が、もうひとつ。

「自分の仕事は、未来をよくすることに、寄与しているだろうか?」

2.それって社会のためになる?という圧倒的な視点

本が売れると、著者が喜ぶ、スタッフも喜ぶ。書店や会社にも利益が生まれる。とてもよいことだ。そこだけ見れば。でも、そもそも、その儲かったことで、社会や未来はよくなっているだろうか。そこは、イコールではないのではないか。

「社会のためになる?」なんてことは、仰々しくて、中二病的だ…。と思う一方で、広くまわりを見回すと、そうでもない。企業でも、自社や株主利益だけを追求している会社よりも、社会課題に取り組んでいる企業が現れている。しかも、応援されている。CSRとか、もはやきれいごとなんじゃない?広報なんじゃない?と思われるくらい、取り組んでいる企業と、そうではない(ポーズだけ)企業の差が歴然としている。というか、消費者の目の精度は、高い。

たとえば、出版業界では、ミシマ社さんは、「自分の足元から少しずつーー「思いっきり当事者」として」というブログで、書店と中小出版社の直取引をつなぐプログラムを自社で開発すると宣言されている。自社の枠を超えた、出版の未来を考えた取り組み。なかなかちょっとすごいことだ。

たしかに、自分がいまいる組織は、NPO や社会企業ではないかもしれない。けど、「未来のためになってる?」という、ある種の踏み絵、うしろめたさ、みたいなものは、あっていいんじゃないか。「数字」にだけ価値基準を委ねてしまうと、なにかたいせつなものを見失ってしまうのではないか。出版不況やシュリンクを終わらせることは重要だ、とつよく思いながら、一方で、それとは別ベクトルのストッパーが個人の中にあることも、同じくらい(というかそれ以上に)たいせつだ、といまはおもっている。

3.数字なんか大事じゃない、という話ではない

「未来のためになる仕事がしたい」

…こんなことを書くと、売れてるものへの僻みだったり、言い訳のようにも聞こえそうだ(そんなことないか)。ことわる必要もないかもしれないけど、結果を出すとか、自己成長、を否定するものではありません。むしろ、なんというか、その両輪をつよくしていけば、仕事が、幸せに繋がりやすくなるような気がしています。

昨年担当した、中山祐次郎さんの「がん外科医の本音」は、ネットや悪質業社で、信用に足らない情報があまりに出回っていることへの危機感から書かれた、まっとうな医療情報をまとめた本だ。本来であれば、王道なはずのものが、傍に追いやられている。そのバランスを正し、患者さんが、最短距離で、エビデンスのある情報にたどりつくために、つくられた。(刷りを重ねているが、もっと売れてほしい。)どんなアプローチでも、社会をよくすることに寄与できると気づかされた1冊だった。

そして、最後に記しておきたいのは(自分へのプレッシャーを込めて)、今年は、仕事でのアプローチ以外にも、実際に行動してみようかということ。週末や夜の時間を使ってのプロボノやボランティアなど、いろいろとあると思うから。まずは、自分の足元から。全部はできないから、できることから、はじめていきたいのです(子連れで行こうかな…)

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