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フリーライターはビジネス書を読まない(39)

はじめてのバイト

あらかじめ電話で示された面接日。
服装はなるべく端正を心がけても、ネクタイは締めない。とにかくネクタイが嫌いで、喪服とか制服以外では絶対にネクタイを締めないと決めている。
ネクタイの何が嫌いって、もともと防寒具が発祥といわれる(諸説あり)ネクタイが、高温多湿な日本の梅雨から夏になろうという時季に合うわけがないし、何よりも常に首を絞められている感触がたまらなく不快だった。
「私がネクタイを嫌うワケ」なんてテーマで書かせたら、本1冊くらいは軽く書けてしまうだろう。

ネクタイ嫌いを力説していてもしょうがない。面接である。
アルバイトの面接を受けるという経験は、じつは初めてだった。高校生のときにトラックの助手をやったことはあるけれど、父親がトラックに乗っていたので、同じ会社だったし、あらためて面接するまでもなく、なんとなく採用された。父親のトラックにも乗ったし、ほかのドライバーのトラックにも乗った。
トラックドライバーって、見かけは強面のいかついおっちゃんでも、じっくり接してみたら人情味があって面白い人が多かった。

高校を出ると大学へは行かず「戦車に乗りたい」という単純な動機で自衛隊に入ったから、バイト経験は高校時代のトラック助手だけだった。
それ以来、10ン年ぶりのバイトをやろうとしていて、しかも面接を受けるのは初体験なのだ。

昨日の電話では、店の裏にある従業員通用口から入って2階の事務所へ来てくれということだったが、裏へまわってみると商品を納品する搬入口しか見当たらない。
従業員通用口はどこにあるのか。初めて訪れる場所だし、探し回っても分かるわけがないから、店舗に入って誰か店員を捕まえて聞いてみよう。と思っていたら、都合よく警備員が立っていた。
「バイトの面接に来たのですが、事務所へはどう行けばよろしいですか」
尋ねると、見た感じからそろそろ還暦が近いのではと思しき警備員は、
「案内したげるわ」といって、事務所まで連れて行ってくれた。従業員通用口は、搬入口から入って、別の出口からいったん外へ出て、外部階段で2階へ上がるのだ。そりゃ分るわけがなかった。

事務所で来意を告げると、店の次長だという人が出てきた。昨日電話で話したのは、この人だった。
事務所からさらに奥へ入ったところに、社員食堂を兼ねた休憩室があった。交代で休憩を取っているのだろうか、2~3人のバイトらしき若い女性店員がいた。
面接はそこで行われた。想像していたような、堅苦しい雰囲気はなかった。

はじめにスーパーの仕事について全般的な説明を受けて、もういきなり「配属先で、希望する部門はありますか」と訊かれた。この店で募集していたのは惣菜、農産、水産、畜産、IB(ベーカリー)、日配という、いわゆる1階の売り場で食品を扱う各部門だった。私は惣菜部門を希望した。理由は、たいしたことはない。自宅で自炊するときに、多少は経験を活かしてレパートリーが増えるかなという単純な発想だ。

そのあと「長期で来ていただけますか?」「通勤の手段は?」など、すでに採用が決まっかのような前提で話が進む。
それでも本社の決定がおりるまで正式ではないらしく、
「1週間ほどで採否をお知らせします」といわれて面接が終わった。

そして1週間後、面接をした次長から「いつから来られますか?」と、採用の知らせと初出勤日の問い合わせを兼ねた電話がかかってきた。

(つづく)

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