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温泉と伊勢エビのお造りと女の子


今、旅館に着いたところだ。老舗旅館の佇まいは重厚で期待感はマックスに達している。


朝早めに家を出て、直前に約束した女の子を車で迎えに行き、伊勢神宮まで向かった。

途中、名古屋で早めの昼食をとった。名古屋名物 味噌煮込みうどん。土鍋で運ばれてきたそれは熱々で、こんな寒い日にはこの上ないご馳走だ。

彼女が自分の鍋からうどんを持ち上げて取り皿に移そうとしていた。それを見て私はほくそ笑む。

「アツっ」

箸から滑り落ちたうどんから汁がとび跳ねた。

「ハハハっ これはなるべく麺を持ち上げないようにして移すようにしないとダメだよ」

「ちょっとそーいうことは先に教えてよね」

彼女は袖についた汁をおしぼりで叩くようにして拭きながら、私に不平を言った。彼女が首から掛けた紙エプロンには早速、たくさんの染みがついていた。

私がお手本を見せる。うどんは箸で掴まず、土鍋の縁に沿って手繰り寄せ、ゆっくりと取り皿に流し込む。それでも少しは汁は跳ぶが仕方ない。味噌煮込みうどんとは、跳ぶ汁との戦いでもあるのだ。

取り皿に少しだけ汁を足す。彼女も私を真似て、慎重に取り皿へとうどんを流し入れた。

私は取り皿からうどんを2本箸でつまんで、少しだけ持ち上げる。そのままの状態で、彼女の様子をしばらく眺めていた。

今度は気をつけながら、彼女は取り皿からうどんをつまみ上げた。

ふうー ふうー 

と頬をふくらませながら、少しだけ声に出してうどんを冷まそうとする彼女の姿を見て可愛らしく思い、私は小さく微笑んだ。

「もー大丈夫かな。 ねえ、あなたはどうしてまだ食べないの?」

「猫舌なんだよ」

小さな嘘をついた。

「そう。意外とカワイイとこあるのね」

彼女はそう言うと、うどんを啜った。

「あっ」

また紙エプロンに新しい染みをつくった。

僕はその様子を見ながらニヤニヤして、うどんを口に運んだ。少しづつ麺を持ち上げては口に入れる を繰り返して時間をかけて2本のうどんを口内へおさめた。

「もー またアタシが汁を跳ばすのを待って見てたんでしょ! ひどーい」

私はニヤニヤしたまま、彼女の言葉は流して汁を啜った。

「赤だしって、この酸味とあとに残る微かな苦味がクセになるんだよね」

「そうそう。アタシ、赤だしのお味噌汁も好きなんだけど、友達とかに訊くと苦手な子もけっこういるのよねー。こんなに美味しいのに」

それから彼女はもさもさと、うどんを口に運び始めた。


鶏肉や椎茸、玉子に蒲鉾を食べ、汁を半分ほど飲むと

「あー 美味しかった。もうお腹いっぱい。こんなにエプロン汚れちゃった。あなたも少し汚れてるじゃない」

そう言いながら紙エプロンをはずした。

「そりゃ少しは汁も跳ぶさ」

汁まで全部飲み干した私は満腹で

「温まったね。じゃっ出ようか」

そう言って会計を済ませた。



名古屋から2時間くらいで伊勢神宮に着いた。

忘れていたが、今日は成人式だった。

「あらあら、若者でいっぱいだねー。どうしましょ」

「これはちょっとやめときましょうか。若者達のじゃまをしないように」


私達は、外宮参道のお土産屋さんをのぞきながら駐車場へ戻り、旅館へと向かった。



そして今、旅館の入り口で写真を撮るところだ。

旅館の部屋に入ったら、用意してくれてある茶菓子を食べながらお茶をいただく。

ゆっくりと温泉に浸かり、彼女を待つあいだ缶ビールを開ける。

彼女が戻ってきて「あー 気持ち良かった。今日は連れてきてくれてありがとう」なんて言うかもしれない。

部屋に料理が運ばれてくる。

彼女は瓶ビールを、私は日本酒を注文する。

お酒が届くとふたりで乾杯。自然と幸せな笑みがこぼれる。

お料理にはもちろん、伊勢エビのお造りが用意されている。伊勢エビのお造りを出してくれる宿を選んだのだ。

伊勢エビの身はプリプリとした食感で、舌にねっとりと絡みつく甘みがある。それを辛口の日本酒で洗い流す。

至福。

この瞬間のためにやって来たのだ。と私は思う。


彼女はあまりお酒が強くないので、もう頬をほんのり紅く染めている。

思わず体を伸ばして、彼女のおでこにキスをする。


松阪牛のステーキにとりかかるところで、赤ワインに変える。彼女も少しだけ付き合った。


全ての食事が終わり、テーブルを片付けてもらっている間、ソファーに座り残った赤ワインのボトルを空ける。

布団を敷き終わった仲居さんが部屋を出ていくと、我慢出来なくなった私は彼女を抱き寄せる。

ゆっくりとゆっくりとキスと愛撫を始める。なにせ夜は長いのだ。焦る必要はない。


朝、目覚めると彼女はもう布団から抜け出している。風呂へ行ったようだ。

私は部屋の冷蔵庫からミネラルウォーターを出すと、タバコに火をつける。昨夜の彼女の可愛らしい喘ぎ声を思い出しながら。

彼女が戻ってくると軽く接吻を交わし、私も風呂へ向かう。朝の温泉はまた気持ちが良い。この時期、少ない宿泊客のじいさんと少し言葉を交わして風呂からあがる。

干物と納豆、味付けのり、漬け物といったよくある朝食を済ませ、旅館をあとにする。

鳥羽水族館に寄る。朝が苦手な私はあまり喋らない。それでも手を繋いだ彼女は楽しそうに館内を巡る。


昼食は何にしよう。


帰りたくない。


というか

三重には行っていない。



何故なら

これは妄想だから。



行きたかったな~。


私は今、自宅でSUNTORY OLDを呑みながら、テレビで高校サッカーを見ながら、この記事を書いている。

サッカーの方はロングスローとPK戦の大会だったな。なんて思いながら。

PK戦で勝ち上がった山梨学院が、決勝でもPK戦で優勝を決めた。



それにしても食べたかったな~。


伊勢エビのお造りと女の子。

日本酒とワインを一緒に。



ということで、

妄想

終わります。


さて、明日は何をしよう。



とりあえずこれから家の風呂に温泉の素を入れて、ゆっくり入ろっと。

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