風見鶏~真琴(まこと)という人物~
一日をなんとか乗りきって、アパートの自分の部屋に辿りついた。ベッドに倒れ込むと、いつものようにがさがさになったタオルケットに抱きつき、鼻を押しつけ思いきり息を吸い込む。
これで少し気分が落ち着くのだ。もうするはずもない、母の残り香を感じとる。幼い頃からのルーティン。
薄いピンクのタオルケットは、私が3才の頃から使っているもの。寒い冬でも羽毛ぶとんの下には、このタオルケットを掛けている。
母は優しい思い出だけを残して、私が5才の時に病気で他界した。タオルケットは唯一の母との思い