本屋、はじめまして #1 OH! MY BOOKSー前編
はじめまして、OH! MY BOOKSの福永紋那と申します。
2023年9月に、東京・幡ヶ谷と初台の間にお店を構えました。
お店をはじめるまでの間、本や映画などでみたいろんな人のストーリーが背中をぐっと押し続けてくれていたのですが、わたしの個人的な話も、いまやりたい気持ちがぐんぐん育っている誰かのために少しでもなればうれしいな、という気持ちで書いてみます。
お店は古いビルの2階にあって、入り口はそれぞれ別にある2つの部屋が中でつながっている物件を友人(mobuという会社を経営する2人)と一緒に借りています。mobuはOH! MY BOOKSの内装を作ってくれた会社で、SuperZooというプロップとおもちゃのお店を同じ日にオープンさせました。
お店をひらくまではずっと会社勤めをしていたのですが、「オン↔︎オフ」を完全に分けた7日間のリズムがいつまでもしっくりこなくて、30歳になった頃にようやく、「どの会社で働けばいいのか」ではなく「どんな毎日を送りたいのか」を考えようと思いはじめました。
その頃、自営業の父やmobuの2人を近くでみていて、かれらの、仕事と生活がひとつづきにある毎日ってすごく良いなあと思っていました。夢中になって読んだ松村圭一郎さん、佐久間裕美子さん、ブレイディみかこさんらの本にも後押しされて、わたしも自営業をやってみようか…!と考えはじめました。とはいえ、何かをするために十分なお金も、頼れるスポンサーもなかったので、まずは貯金からはじめて、1年くらい無職で暮らせる資金が貯まった2022年の夏に会社をやめました。
会社勤めをやめる決断をしたものの、将来への不安が募って引き返しそうになったとき、この本にすごく勇気をもらいました。その頃には祖母とのお別れもあり、遺骨になった祖母の姿を見たときに「わたしは何をたいそうに考えてびびっているんだ?」と心底おもいました。告別式からの帰り道、家族を養うためにいろんな仕事をして、なんでも「しゃあない!」と言って笑っていた祖母の顔を思い出していると、「なんでそんなに将来を悲観するのか!自分のこと自分で見限るなよー!」と急に心が奮い立ちました。
本屋をやろうと決めたのには、六代目三遊亭円楽が伊集院光に言ったという「自分が時間を忘れてやってしまうような好きなことに少しの社会性を持たせると、この商売は食っていける」ということばと、mobuのひとりから「自分では頑張ってるつもりがないのに、周りからすごいな〜と言われることを生かしたらどう?」と言われたことがヒントになりました。そして、自分が毎日でも居られる場所は、…やっぱり本屋さんだな!となり、はじめる理由ってそんなんでいいのかな?とも思いましたが、今回は転職面接じゃないしりっぱな志望動機は必要ないよね、と思って自分で納得しました。
まずは本屋でアルバイトから?と思いましたが、結構なマニュアル遵守人間のわたしが一度どこかに属してしまうと、独立したところでその古巣のルールにがちがちにハマっていそうなのが目に見えて、あえて一歩目からひとりで踏み出してみることにしました。
書店経験がないことに対する不安は大きかったですが、いま思えば、やることそのものというよりも何か目に見えない権威みたいなもの(書店とはこうあるべき!みたいなこと)に怯えていたのだと思います。
その頃にはまったドラマシリーズ「ウータン・クラン:アメリカンサーガ」で、お金を稼いで自分たちの表現を続けるために、大きなレーベルには属さず自ら舵をとって、自分たちだけのビジネスをやっていくウータンを見てはっとしました。セオリーから外れても、自分がやることを必要としてくれるお客さんが現れたらそれはもう商売として成立するし、トラブルはそのときどきに対処していけばいいんだ、と思えました。
見えない未来の不安のために、始めることさえあきらめるのはもったいない…!
いきなり開業に踏みきったのには現実的な理由もありました。もしバイトをしながら準備をしたら貯金は減る一方になるだろうから、いちばん自己資金があって融資を受けやすいタイミングは今だ、と思ったからです。
そして極め付けには、お店の内装をまかせるmobuも新しくお店を始めたいという話があって、「部屋が2つある物件を見つけた!」と言われたときに、こんなタイミングはもうないと思いました。
そして、「えいやー!」と物件を契約し、貯金から初期費用を工面しつつ公庫に融資の申込をしました。
ちなみに自分で自分にびっくりしたのが、ずーっとうねうね本屋の構想をしている間はいまいちスローペースだったのに、公庫での融資が決定したとたんにいろんなことがすごく前向きに進みはじめたことでした。開業に充分なお金が、保証人なしの契約で借りられた、ということへの安心感がこんなにも影響するなんて…!お金めちゃだいじやな…!と、こんなことならもっと早くに融資から準備を進めていればよかったとさえ思いました。
いざお店の棚をつくる段階になって、人より本を読んでいる自信は全然なかったけれど、未読の本が多いぶん興味がどんどん広がるいまの自分のままでやってみることにしました。わたしの勉強部屋みたいなきもちで棚を作って、大切にしている本もかならず置いて、その部屋をみんなにひらくような感覚です。そこに、お気に入りの雑貨や音楽、洋服なども集めたら、本当に自分の部屋みたいに好きなものが詰まった空間になりました。
いまお店に立っていると、「うちの本棚に似ています」とお客さんに言われることが結構あります。その方たちに新鮮なおどろきをお届けできているかはわからないけど、そこからカウンターをはさんで始まるおしゃべりをすごくたのしんでいます。自分の部屋のような今のお店で、スツールに腰掛けてゆっくりしてくれている人を見ると、すごくしあわせな気持ちになります。
それに、自分の好きな本を仕入れるとその版元の方たちがあたたかい言葉をかけてくれたり、イベントを持ちかけてくれたりして、「みんなで生き残ろう!」という感じがとても心強くて感動しています。
これからだ!と思っています。
\後編を更新しました!/
📖ぜひ感想をお寄せください。お待ちしております!
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