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本屋、はじめまして #1 OH! MY BOOKSー後編

「本屋、はじめまして」についてオープンしたての独立書店の店主が、本屋を開くまでのリアルなお話を綴る本屋開店エッセイです。本屋をやってみたいなーとぼんやり思っている人の背中を一押しできるような、そして開店準備にとりかかってもらえるような記事をお届けしていきます。後編は本と仕事と店主の方についての一問一答。そして、お店に並ぶ商品で(本に限らず)、おすすめのものを紹介していただきます。 前編はこちらから。



本と仕事と店主についての
8問8答



1 オープンから 2 ヶ月、率直な感想は?

カウンターを挟んでいろんな人とお喋りすることにすごく憧れていたのですが、毎日はじめましての方といろんなお話ができることが最高です!ふだんの生活や人間関係に関与しない間柄だからこそ、いきなりできる話ってあるよな〜と感じていて、それができるのはお店に立つ人の特権だと思うのでおもしろいです。
そしてまだ2ヶ月しか経っていないのに2度目、3度目と来てくださる方(もう勝手に常連さんと呼んでいます)の顔が思い浮かべられて本当に感激しています。


2 仕事の必需品は?

家出するのかっていうくらいぱんぱんにしたBRIEFINGの黒いリュックを毎日背負ってお店にきます。
中身は、ノートパソコン、ジップロックコンテナーに入れた白ごはん(レトルトカレーをかけて食べる)、野菜生活のグリーンスムージー、サーモスの水筒、本5冊くらい(全部は読めない)、ナイロン手提げ3つ(本を大量に買ったりするとき用)、手刺繍セット(小学校で買った名前シールつきの裁縫道具を愛用)、レジ金、財布、モンベルのインナーダウンと折り畳み傘、ティッシュ、メガネケース、ハンカチ、コンビニプリントに使うためのUSB、あとお腹がよわよわなので正露丸も必須です。


3 異業種からの転職ですが、以前の経験を活かせたことは?

以前は海外ファッションブランドで輸出入の仕事をしていたので、国外の気になるブランドに連絡して取引を始めることのハードルは低めにできているのかな〜?と思います。
ただ、バイイング自体はやったことがないので、最初の仕入れは、もし売れなかったとしても全部じぶんのクローゼットに喜んで迎えられるものだけを選んでいます。売れ残って、しかも自分でも着られないのっていちばん凹みそうなので…。ちなみに本の仕入れも同じ考え方で、それが結果的におすすめするときの熱量につながっているかも?とポジティブに考えています。
ちなみに版元の方からよく言われるのは「返信が早い」です。これはおそらく物を動かす仕事をしていたから癖になっているのだと思います。(でもここに書いておいて、「いや遅いやないかい!」って思われていると気まずいです。)


4 今読んでいる本は?

12月15日(金)に著者・訳者を迎えた読書会を開催予定!
詳しくはInstagramをご覧ください。

『生まれつきの時間』 ファン・モガ 著/廣岡孝弥 訳(inch magazine Pocket series 01)」
『それで君の声はどこにあるんだ? 黒人神学から学んだこと』榎本空 著(岩波書店)
その他、11月の文学フリマで買ったzineを数冊。
いつも自分の中で課題図書セットのようなものをつくって、お店で作っているフリルバッグに入れて持ち歩いています。


5 読書をするシチュエーションは?

自宅から1時間ほどかけてお店に行く電車の中で読んでいます。が、揺られていると、眠くなくても2駅くらいで深い眠りに落ちてしまうので、結局自宅に帰ってごはんを食べたあとに、夜中にコーヒーを淹れて読んだりします。外出していても、すきまの時間ができたらすぐ本を取り出したくなるので、駅のホームで電車を待つ列に並んでいるときや、好きなアーティストのライブ会場でも、待ち時間があれば立った姿勢のままで読んでいます。

 

6 これまでの人生で記憶に残る1冊は?

ミランダ・ジュライ 著/岸本佐知子 訳『あなたを選んでくれるもの』(新潮社)

『あなたを選んでくれるもの』ミランダ・ジュライ 著/岸本佐知子 訳
ミニマリストや断捨離が流行っているなかで、最後に登場する、思い出の日付をラベリングしたものをたくさん置いてあるおじいちゃんの家をみて感動し、やっぱりモノが人に与えるパワーやしあわせってあるよなあ!と思い、あ〜わたしも、おばあちゃんになるまで自分の好きなものや大切な思い出の品に囲まれて生きていこう!と心に誓いました。 


7 福永さんが考える「本の魅力」とは?

自分や他者と話を始められること。あと、どうしても自意識の中にどんどん潜っていきがちで、たまにあわわ〜とおぼれてしまいそうになることがあって、そんなときに自分ではないだれかの物語の中に入ることで自分自身から意識を外せるのでたすかるな〜と思います。
社会人になってからはとくに、なんでだろう?と思うことについて本を開くことも多くて、関連性がない本をあれこれ読んでいても、「あ!これはあの本でも読んだことだ」とか、いろんなことはつながっているな〜と感じられる瞬間があることもおもしろいです。


8 本屋さんとしてこれからやってみたいことは?

読書会をいろんな形で開きたいです!きれいに話せなくても、いろんな知識がなくても、本をたくさん読んでいなくても、「どこが好きだった?」とか、「どこに線ひいた?」とか、「次なにを読みたい?」みたいなことから広がる会話で、他の人の視点や生活観を知れることがすごく楽しいと思っていて、その場にいることのハードルが低い(ない)環境を作っていけたらいいなと思っています。




店主のおすすめ(本に限らず)



1 inch magazine issue 02 New York (inchmag)

アメリカのブランドや音楽、映画が好きで、とくに私が好きな音楽は東海岸のものが多いのでニューヨークはいつからか憧れの街でした。お店を見た人に、褒め言葉として「アメリカみたいだね」と言われることがあるのですが、なぜ日本人である私にとって「アメリカみたい」と「かっこいい」が同義なのか?を改めて考える内容があっておもしろかったです。
また、ハワイに住む日系人の話や、9.11やイラク戦争の渦中にいた人々の話に触れて、戦争やテロは、単純な対立構造の大きな話じゃなくて、その中で生きる一人ひとりに個別のストーリーがあるということを忘れないようにしなきゃ、と改めて思いました。

 

2 フライデー・ブラック

ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー 著/押野素子 訳(駒草出版)

“でもな、バスの中で寝ている男はお前の兄弟だって、叔父貴に言われたよ。…そいつが寝ている間は、お前がそいつの責任をもつ。お前の兄弟だからな。まったく知らない奴かもしれないが、そいつはお前に関係があるんだって。わかるか?”
前編で書いたウータン・クランもそうですが、好きなラッパーの映画などでよく描かれる、アフリカ系アメリカ人のコミュニティで生きるかれらの強いブラザーフッドにいつも惹かれていて、この小説の中のこのセリフがすごく心に残っています。
冒頭のケンドリック・ラマーの引用から次々に繰り広げられる短編の、著者が生み出すそれぞれの世界にぐっと引き込まれて読みました。


3 アンダイング ー病を生きる女たちと生きのびられなかった
女たちに捧ぐ抵抗の詩学ー

アン・ボイヤー 著/西山敦子 訳(里山社)

乳がんを患った著者が、乳がんに「打ち勝った」とされる人々のストーリーが「闘病記」として多くシェアされてきた中で、乳がんで亡くなってしまった人たちの言葉を、「いま病を患っている人」や「これから病気になるかもしれない人」のために語り伝えてくれる本です。がんを患っても有給がなくなれば働かないと生きていけない現実とか、自分にもあまりに身近ではっとする文章が何度も出てきました。
この本を夢中になって読んだ感想をSNSに投稿したことがきっかけで、里山社さんと訳者の西本敦子さんと一緒に読書会をひらくことになりました。(詳しくはInstagramの投稿をご覧ください!)


OH! MY BOOKS
住所:〒151-0071 東京都渋谷区本町1丁目18−2 ハイツ本町 202(幡ヶ谷駅、初台駅から徒歩約5分)
営業時間:Insgtagramにて告知
定休日:月曜日(営業スケジュールはInstagramにてご確認ください)https://www.instagram.com/ohmybooks_ayn

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後記、はじめまして 
オリジナルのブックカバーや栞、本を入れる袋など、すべてが福永さんのお手製でとっても可愛いです。マンスリーフリーペーパーももらえます!こういうの、嬉しいですよね。お店を出た後、ほくほくした気持ちになるのは福永さんの温かいお人柄が店内や袋ひとつにまで行き渡っているからだ思いました。そして、ほんとうに返信が早い!







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