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自粛期間に変化した思考

昨日に続き,本日も含め,3回ほどお題に沿った投稿をさせていただく。
3月2日から登校禁止になった子供がいる我が家にとって,自宅待機中の子供達がどうすればストレス無く過ごせるのかは,悩みの種になるとばかり考えていた。
しかしそれは実に早い段階で取り越し苦労となり,今となってはそんなに悪い時間では無かったとさえ思える経験になったというお話を綴る。

「郊外の戸建て」という,コロナ禍における最強の環境

我々家族はとある事情のもと,これまで住んでいた都心部から,私の生まれ育った僻地へと引っ越してきた。
元々あった古民家をリフォームし,便利なものに囲まれた生活しかして来なかった子供達をここでの生活に慣れさせるには,相応の苦労もあった。
鉄道も,ショッピングモールも,すぐ行けるカフェも,大きな公園も無い。これまで当たり前に享受出来ていたものが何一つ無い場所に突然来たのだ,「この町はつまらないよ」と漏らされた時,当然だよな,と思いつつ,仕方なかったとはいえ申し訳ないことをしてしまったと,泣いたこともあった。
しかしこの環境変化が,まさか2020年になって大きなアドバンテージをもたらすことになるとは,その時は予想だにしていなかった。

全国各地で外出や店舗の営業自粛が要請され,子供達の遊び場である屋外の公園でさえも,遊具が封鎖され,その場にいようものなら,自粛警察と揶揄される何かを勘違いした人々に,「子供が公園で遊んでいる」と警察に通報される腐った世の中になってしまった数か月前,私はどこかそれらの報道が他人事のように感じられていた。

私の住む町には感染者が1人もおらず,必要な買い物をしにスーパーに出掛けても,行列を作って大量に買い込むような人や,マスクを着けていない人など全くいなかった。
また,友達と約束してどこかへ行かせるということはさすがにさせなかったが,子供達が外で遊べないなどと言うことは全く無く,隣町にある大きな公園へ連れて行ったり,散歩やサイクリングで体を動かしたりと,「窮屈だなあ…」という感覚からは程遠い生活が普通に出来ていたのだ。

ある時,ニュース記事でこんな言葉を見つけた。
「YouTubeとお菓子で1日が過ぎる……」

リモートワークが出来ているとはいえ,共働きで仕事をしなければならない以上,自宅にいる子供にずっと寄り添っているわけにもいかない。
その結果子供にはネット機材を与え,子供の自主性に任せて学習させたかったのだが,YouTubeを見ている時間が激増してしまったという家庭の奥様の言葉だった。

私は何故こんなことが同じ国で起こっているのか,最初は理解出来なかった。しかしそれは,私が郊外の戸建てに住んでいるからだと,ある時ふと気が付いたのだ。

恐らくこういった言葉に共感する方々は,都心部にある集合住宅にお住まいなのだろう。
隣室やすぐ下の部屋の住人に対し,生活音を響かせないような暮らしをしなければならないから,自宅室内で自由に体を動かさせるわけにもいかないし,公園に行こうにも,我々のような地域と違って人の目も多く,すぐ自粛警察に通報されるという憂き目に遭う危険性もある。
結局子供達を室内で静かにさせておくためには,動画を見せたりすることしか出来ないという結論に至ったのだろうと推察した。

我々のような住環境にある人間は,こういった事を全く考える必要が無かった。
雨だろうと何だろうと室内を好きなだけ走り回って騒げるし,そもそも人口が少ないから,公園で怒られるほど大騒ぎするという事も無い。
そう考えると,子供と同じようにかつて自分も感じていたつまらなさ・不便さが,途端に最強のアドバンテージになったと考えられるようになったのだ。

YouTuberに感謝する日が来るなんて

ここ数年のうちに,小学生の憧れの職業にYouTuberが出現した。

遂に2019年末に発表された国内ランキングで男子部門1位を獲得し,海外では子供が億単位の収入を得ているという報道も当たり前のようになっている。

そんな熱狂的な取り上げられ方をするYouTuberに,私はいささか危険性を感じていた。
大多数の方がご存じの事と思うが,YouTuberとして生計を立てる事が出来るのは数%の人間であり,再生数やフォロワー数が規定以上に到達しない限り,収入を得ることが出来ない。
また,それらの数字をクリアしたとしても,1再生あたり0.1円と言われる収入では,100万回再生したとしても月収10万円。並大抵の内容では,YouTube配信だけで月並みの生活が出来るレベルには到底届かないのだ。

「好きなことで,生きていく」とはよく言ったものだが,子供が夢見て簡単に仕事に出来るものではないという側面があまりフォーカスされず,勘違いした子供達が取り返しのつかないことに巻き込まれて欲しくないと,かねてから考えていたのである。
実際,上で取り上げたライアン君も,保護者のサポート無くしてあれほどの富を得られないのは考えれば分かることであり,「あの子が出来るなら僕も出来るんじゃね?」と思ってはいけないと,周囲の大人はちゃんと教えられているのか不安だった。

しかし我々家族の自粛期間は,そんなYouTuberの皆さんに救われたと言っても過言では無かった。

ゲーム好き一家の我々は,コロナ禍に陥る前,プレイステーション4を介して,トッププレイヤーのYouTube動画をテレビ画面で閲覧する事が時々あった。
スマホやタブレットの小さな画面で見るよりも幾らか心身に優しいだろうし,一緒になって「すげー…」と見入ることでリラックスする時間を作ることも出来ていた。

この経験が,YouTubeを有効活用しようという発想に繋がった。
結論から言うと,私は子供達と共に,YouTuberが配信しているダンス動画で運動しようと提案・実行したのである。

テレビで視聴すれば,角度によって誰かが画面を見られなくなってしまうという現象もまず起きないし,リビングで広々と全員で見て一緒に踊ることが出来る。
これが子供達にジャストミートし,雨の日の運動は勿論,一緒に作った1日の生活予定とは別に,「パパ,一緒にダンスしよ!」と子供達から誘ってくれるようにまでなったのだ。
上手に出来るかどうかなど関係なく,ただ目の前の動きを全力で真似して笑っている子供達,こんなにも閉塞感漂う世の中にあって,こんなにも明るく過ごしてくれているその姿を見て,心が洗われるようだった。

そして,こんな状況を鑑みてか,自宅でも楽しく出来るダンスやフィットネスの動画をアップするYouTuberが増えたような気がする。
ここで,我々が大変お世話になった方々の動画を一部紹介させていただく。

後半に進むにつれてサムネイルの様子がおかしくなっていると思われたかもしれないが,ダンス動画で運動が出来ると分かった後,トレーニング動画で体を鍛える事も出来ると気付くのにさほど時間は必要なかった。このことについては,次回の寄稿で詳しく触れる予定だ。

一番上に挙げさせていただいた竹脇まりなさんは,テレビ番組のマツコ会議にも出演されたので,ご存じの方もいらっしゃることだろう。
運動難民が激増する中,「飛ばない!」「マンションOK!」などのキャッチーな見出しと,思わず一緒に体を動かしたくなるような巧みなBGM選びで,楽しんで運動出来るダンスフィットネス動画を投稿し続けている方だ。
私も初めて経験したダンス動画はこの方のものだった。

他にも,「ビリーズブートキャンプ」で2000年代前半に一世を風靡したビリー隊長がYouTuberとして帰ってきたり,我々世代としては嬉しいサプライズにも遭遇した。

どの投稿者にも共通して言えるのは,とことん前向きに自分の体をアップデートしようと動画を作成しているという事だ。
中には当然,身体にかなりの負荷を加えるものもあるが,「目の前で一緒にキツイことを頑張っている人がいて,その人がこんな素敵な肉体をしているのだから,乗り切れば自分もこうなれるはず!」と思えるようになってくるから不思議だ。

こうして我々家族は,YouTuberの方々と共に体を動かすという新しい生活様式を手に入れ,如何なる天候でも鬱屈とし過ぎず,家族関係に亀裂が生じることなど無いまま,臨時休校期間を何とか乗り切ることが出来た。

それと同時に,テレビや書籍などのメディアに露出していなくとも,インターネットを通じて自分の伝えたい事・やりたい事を誰もが簡単に送受信出来るこの時代と環境に,とても大きな有難みを感じられるようになった。

その甲斐もあってか,子供達は今でも元気に学校が楽しいと言いながら通学してくれている。
少なくとも私と妻にとってこの自粛期間は,子供達をずっと近くで見守ることが出来たと同時に,どんなものでも危険性を気にするばかりでなく,使い方次第で毒にも薬にもなるという当たり前の事を再認識させられた,有意義なものとなった。

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