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日記

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#短歌

2023/04/30

どこか遠くでわたしを濡らしていた雨がこの世へ移りこの世を濡らす/大森静佳『てのひらを燃やす』

ぎんいろに凍った雨が伸びてきてぎんいろの檻 傘はひらくな/大森静佳『カミーユ』

雨だよ、と告げてあなたに降りかかるわたしに雨の才能ありぬ/大森静佳『ヘクタール』

大森静佳さんのそれぞれの歌集の中で好きな雨の短歌。「雨の才能」とは「雨を受肉する才能」なのでは、と思います。

2022/10/03

木下龍也さんの「情熱大陸」観ました。木下龍也さんの短歌は確かな輪郭線を持って、伝えるために曖昧さや読みのブレを意識的に排除していると思っていたから、ご本人が自分について「ブレている」と仰っていたのは意外でした(意外と思った私は考えが甘く)。そして嬉しい。やっぱり歌と歌人は別の生き物だったんだ。生き物をデザインする神の行いは壁に向かった机で為されてた。

木下龍也さんは柄シャツとフレッドペリーのシャ

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2022/04/23

祖父の一周忌の式まで余裕があったのでチコちゃんを見ていました。「遊星」という語がかつて「惑星」と同じ意味で用いられてことがあったようです。遊星。恒星は地球から見たときに位置が不変であるのに対し、これらの星は公転を行うために星間を漂っているように見えることが由来だとか(その様子をさまよい惑っていると捉えたのが「惑星」、遊んでいるようだと捉えたのが「遊星」。ざっくりですが)。

似合う、ってきみが笑っ

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2021/01/03

明けましておめでとうございます。

雪は花に喩えられつつ降るものを花とは花のくずれる速度/服部真里子『行け広野へと』

花が3回も出てきます。互いを重ね合わせながら降るはなびら、雪がそれぞれの脳内に積もる心地。個人的に「花」を使う時は品種まではっきりさせた方がいいのかいつも迷うのですが、この歌は「花」の語の普遍的なうつくしさ、はかなさを各読み手に補完させるところまで完璧なように思います。僕が思い浮

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2020/12/22

正月は冥土の旅の一里塚、めでたくもありめでたくもなし/一休宗純(※表記が正しいか調べていません!面倒だったので!)

一休宗純はとんちで有名な一休さん。禅宗の偉い方であったようです。身も蓋もない短歌を見ると安心します。人生に特別の価値などなくても良いのです。次に紹介するのは一休宗純の辞世の句(詩でも短歌でも句と言うらしいです。こちらもしっかりとは調べていない。)

朦々淡々として60年、末期の糞を

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