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その日どこに泊まるのか。翌日どこへ向かうのか。何も決めずに思いつくままに旅した頃がありました。スマホのない時代のことです。 その感覚を思い出してTWFFの蔵原実花子が写真と言葉で… もっと読む
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2020年5月の記事一覧

この島の人たちが本音で話せるように〜石垣島・ハルサーの闘わない闘い〜 ⑤

この島の人たちが本音で話せるように〜石垣島・ハルサーの闘わない闘い〜 ⑤

「ものすごく悲しかったですね。こういうことが、あり得るのかなー、って」

マンゴー農園でのお話の中で、最も印象に残ったのは、この言葉だった。
発する音が耳に残った。龍太郎さんは、ずっと標準語で受け答えしていて、今の若い人はそうなのかなとか、私に合わせてくれているのかなと思ったけれど、この言葉だけははっきりと沖縄なまりだった。

2019年2月1日
龍太郎さんは、石垣市議会本会議場の傍聴席で、住民投

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この島の人たちが本音で話せるように〜石垣島・ハルサーの闘わない闘い〜 ④

この島の人たちが本音で話せるように〜石垣島・ハルサーの闘わない闘い〜 ④

石垣島のほぼ中央に位置する於茂登岳(おもとだけ)。沖縄県内で最も高い山だ。東側にはその山の名の通り、「於茂登」という集落がある。戦後沖縄本島や与那国島から計画移民として渡って来た人たちが住んでいる。何人かは、本島の北谷(ちゃたん)村から移り住んだ。彼らは家や畑を米軍基地として奪われ貧しい生活を強いられたため、自分たちの土地を求めてこの地に渡って来た。63年前のことだ。於茂登岳周辺には、他にもたくさ

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この島の人たちが本音で話せるように〜石垣島・ハルサーの闘わない闘い〜 ③

この島の人たちが本音で話せるように〜石垣島・ハルサーの闘わない闘い〜 ③

僕らのまちに 雪が降る
なんてことのない あたたかな島

僕らのまちに 雨が降る
いつかは止むさ 人生も同じ

僕らのまちに 風が吹く
南から 北から 東から 西から

僕らのまちは まち自体が素敵で
ほんとはどこにも 流されちゃいけない

これは「大署名運動会」が始まってすぐの頃、市街地で行われたライブの中で披露された、ハルサーズの曲の歌詞だ。
ハルサーズはその名の通り農家の若者3人で組まれてい

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この島の人たちが本音で話せるように〜石垣島・ハルサーの闘わない闘い〜 ②

この島の人たちが本音で話せるように〜石垣島・ハルサーの闘わない闘い〜 ②

石垣島は歌と踊りの島、芸能の島、と表現されることがある。

沖縄本島の名護で「沖縄では有形の文化財はことごとく壊されてきた歴史がある。だから歌や踊りのような無形の文化を大切につないできた」という話を聴いた。大津波、台風、戦争マラリアなど海の向こうからやってくる天災あるいは人災に苦しめられてきた石垣島にも、それは当てはまる。

しかしそれは「文化」というより「生活」そのものだったのではないだろうか。

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この島の人たちが本音で話せるように〜石垣島・ハルサーの闘わない闘い〜 ①

この島の人たちが本音で話せるように〜石垣島・ハルサーの闘わない闘い〜 ①

「受粉を蝿でやってるんです。銀蝿を呼び込むためにお刺身屋さんから魚のアラをもらって来て、ハウスに入れておきます。沖縄では一般的なやり方です。蜜蜂は理想的ですが、コストが高いわりにマンゴーの花粉の匂いを好まないんです。」

石垣島の中部、嵩田(たけだ)でご両親とともにマンゴー農家を営む金城龍太郎さん(29)。2代目のハルサー(沖縄の方言で、畑仕事をする人)である龍太郎さんに、ハウス栽培中のマンゴーを

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