【22】商標登録が認められない理由とは?

こんにちは、横浜市の商標弁理士Nです。
最近、Youtubeのかわいいインコの動画にハマっています(笑)。

さて、商標登録をするためには、特許庁に申請(出願)をして、審査をパスすることが条件でした。申請から登録までの流れは、「【17】商標登録までの流れはどのような感じなのか?」で、お話いたしました。

で、審査のパスが条件ということは、当然パスできない場合もあります。
それでは、審査をパスすることができない、すなわち、商標登録が認められないのは、どのような場合なのでしょうか?

今回は、この「商標登録が認められない理由」について、できるだけシンプルにお話ししていきたいと思います!

1.審査では約30の項目がチェックされる

商標登録に関する特許庁の審査では、申請した商標自体や、願書の記載内容・書式の適否などについて、約30程度の項目がチェックされます。メインは、「商標法」という法律に定められた事項に関するチェックで、たとえば、商標法第3条、第4条には、「商標登録できない商標」の類型がズラズラズラ~っと書かれています。

これを細かく解説すると本が1冊できてしまいますので内容は割愛しますが(笑)、もし興味がありましたら、こちらの「商標法」の第3条、第4条をご覧ください。

実際の内部的な手順は知りませんが、特許庁の審査官は、登録申請がこのような「商標登録が認められない理由」を含んでいないかを、しっかりとチェックするわけですね。

2.審査でよく引っかかる3つの理由

登録申請が、「商標登録が認められない理由」を含んでいると判断された場合、審査で引っかかることになります。

なお、以前にもお話ししましたが、一度審査に引っかかったからといって、「即、試合終了」となるわけではありません。適切な対応を取ることで、その理由が撤回され、最終的に商標登録が認められるチャンスはありますので、決して諦めてはいけません(この話は、また後ほど詳しく触れます)。

ところで、審査で引っかかってしまう場合、実はたいていパターンが決まっています。
特に「あるある」なのが、以下の3つの理由による場合です

(1)その商標が、商標として機能し得ない場合

これは、商標法第3条第1項各号に書かれています。
専門用語的には、「自他商品役務の識別力が認めらない」などと言われます。

商標とは、自分と他者の商品・サービスの識別標識のことでした。
ですから、登録申請をした商標が、商品やサービスを識別できない、つまり、商標として機能し得ないものである場合は、商標登録は認められないとされています。

というか、そもそもそういった文字などは、誰もが普通に使う必要があり、特定の人に使用を独占させると取引の場が混乱するから商標登録を認めちゃダメよ、という考え方もあります。

商標法第3条第1項には、いろんなパターンが書いてありますが、この中でもよく引っかかるのが、「第3号」の理由となります。ここには、その商標を使用する商品・サービスとの関係で、それらの品質や特徴などを普通に表しただけの商標というのは、商品やサービスを識別できないから、登録はダメですよと書かれています。

たとえば、商品「りんご」について「青森産」、商品「ワイシャツ」について「特別仕立」、商品「せんべい」について「炭焼き」、役務「飲食物の提供」について「高級中華」などが挙げられるでしょうか。これらは、いかにもわかりやすい語の一例ですが、こういった語を組み合わせた場合も、原則として該当するとされています。

ちょっと上記が例として適切かはわかりませんが(苦笑)、なんとなくイメージは理解できるのではないかと思います。

識別力があるかどうかは、商品・サービスとの関係で判断されますし、言葉(語)の構成パターンとしても無限にあるとも言えますので、実際の判断はなかなか難しいというのが現状です。なので、審査では、とりあえず引っかけてくる場合も多々あります(笑)。

(2)その商標と、同じ商標・似ている商標が第三者に登録されている場合

これは、商標法第4条第1項第11号に書かれています。
特許庁の審査では、1、2位を争うくらい、よく引っかかる理由ですね。

自分の商標と、同じ商標とか、似ている商標が、先に誰かに商標登録されていたら登録はできないというイメージは、皆さんだいたいお持ちのように思います。

なお、この第4条1項第11号に該当するかは、商標だけでなく、指定商品や指定役務(願書に書いた商品・サービス)も、同一または類似であることが条件です。※指定商品・指定役務については、「【19】商標登録の申請書(願書)はどのようなものか?」をご参照ください。

なので、たとえ同じ商標や似ている商標が、先に誰かに商標登録されていたとしても、商品やサービスの分野が全然違っていれば、商標登録をすることは不可能ではないのです。

たとえば、日産自動車は自動車の含まれる商品分野などで「NOTE」を商標登録していますが、ここのサービスを提供しているnote株式会社も、インターネットサービス分野で「note」を商標登録しています。note株式会社は、日産自動車よりもずいぶん後に登録申請をしていますが、商品・サービスの分野が抵触しなかったので、登録が認められたというわけです。

なお、上述の識別力の判断と同様に、商標が「似ているか似ていないか?」というのも、実際の判断はなかなか難しいというのが現状です。なので、やはり審査では、とりあえず引っかけてくる場合も多々あります(笑)。

(3)指定商品・指定役務の記載が適切でない場合

これは、商標法第6条第1項、第2項が根拠とされます。

願書における指定商品や指定役務は具体的に書く必要がありますが、この表記が不明確・不適切だと審査で引っかかります。また、併せて記載すべき商品・役務の区分が間違っている場合も引っかかります。なお、指定商品・指定役務、商品・役務の区分については、「【19】商標登録の申請書(願書)はどのようなものか?」をご参照ください。

ただし、要旨を変更しない範囲で、指定商品や指定役務の表記を補正(修正)することは可能です。通常、審査官は親切に表記の補正案を提案してくれますので、この理由を解消することは、上述の2つの理由に比べれば容易です。この理由だけが原因で、最終的に商標登録が認められないということは、まずないでしょう。

3.まとめ

以上、「商標登録が認められない理由」をシンプルにお話しすると、こんな感じです。

特許庁の審査では約30項目がチェックされますが、審査でよく引っかかるのは以下の3つのパターンが大半です。

(1)その商標が、商標として機能し得ない場合
(2)その商標と、同じ商標・似ている商標が第三者に登録されている場合
(3)指定商品・指定役務の記載が適切でない場合

ちなみに、審査では、これらの(1)~(3)のいずれかの理由が指摘される場合もあれば、複数の該当が指摘される場合もあります。もちろん、本記事で挙げなかった他の理由を指摘される場合もあります。

一般的に、引っかかった場合の対応のしんどさは、(1)>(2)>(3)となりますが、すでに商標を使い始めている場合は(2)の指摘がもっとも深刻と言えるでしょう。

なお、実際の条文の内容を確認してみたい方は、こちらの「商標法」の第3条第1項第3号、第4条第1項第11号、第6条第1項、第2項などをご覧ください。

また、特許庁のウェブサイトには「出願しても登録にならない商標」のページがあり、とてもわかりやすくまとまっておりますので、他の「商標登録が認められない理由」も詳しく知りたい方はぜひご参照ください。

というわけで、今回の記事は以上です!!

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