【4】商標登録の真のメリットとは?

こんにちは、商標弁理士Nです。
最近、暖かいのか寒いのか、よくわからない気候で困ります(涙)。

前回の記事では、商標登録のメリット、すなわち、「商標権を保有していることによるメリット」には、主に以下の点があることをお話ししました。

1.その商標を、自社だけが独占的に使うことができる。
2.他社が、同じ商標を使うのをやめさせることができる。
3.他社が、似ている商標を使うのをやめさせることができる。

ただし、これらのメリットを得るためには、「商品やサービスとの関連性が条件となりますので、注意してくださいとも述べました。

ところで、商標登録のメリットは、これだけではありません。
事業者にとって、特にありがたいと思われるメリットがあるのです!
今回は、私の考える「商標登録の真のメリット」について、お話ししたいと思います。

さて、ある商標について商標登録をするには、特許庁の審査をパスすることが必要だということは、皆さんもご存知なのではないでしょうか。たまに誤解をしている方がいますが、登録申請をすれば絶対に商標登録が認められるというわけではありません。

この審査では、商標法という法律の中で、「こういう場合は、登録を認めないよ~」と列挙されている理由に該当しないかが、審査官によって主にチェックされます。おおざっぱですが、だいたい30項目くらいのチェックがあるとお考え下さい。

そのうちの一つに、次のような場合は、商標登録を認めないというのがあります。

(商標登録を受けることができない商標)
第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
・・・
十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
・・・

ちょ。よくわかんねーし、読むのめんどくせーよ!
はい、そんな声が聞こえてきそうですね(笑)。

そんな方のために、ざっくり言い換えると、つまりは次のような場合には、商標登録は認められないよということです。

他人が先に申請をして商標登録された商標と、
同じ商標、または、似ている商標であって、
指定商品・指定役務もカブっている場合

(商品・サービスが同じ場合だけでなく、似ている場合も含む)

例を見てみましょう。
たとえば、私が商品「Tシャツ」について、「シオン」を商標登録したいとします。そして、これについて登録申請をしたとします。

しかし、どこかの他社がすでに、次のような商標登録をしている場合、上記に該当してしまい、商標登録は認められないということになります。

(1)「Tシャツ」について、「シオン」を商標登録している場合
※商品も商標も同じ。

(2)「Tシャツ」について、「しおん」を商標登録している場合
※商品が同じで、商標が類似。

(3)「タンクトップ」について、「シオン」を商標登録している場合
※商品が類似で、商標が同じ。

(4)「タンクトップ」について、「しおん」を商標登録している場合
※商品も商標も類似。

「あれれ~?この並びって、どこかで見たことあるような・・・」
そう思われた方、めちゃくちゃ勘が鋭いです!!

実はこれらは、前回の記事で出てきた、商標権を取得した場合に、他社による商標の使用に対して「やめろ!」と言える範囲と同じなのです。

つまり、どういうことかと言うと・・・。

他人の商標権の効力が及ぶ範囲では、商標登録はできない。

ということになるわけですね。

これはまぁ、よく考えてみれば当たり前のルールと言えます。
だって、もし、これらの範囲でも他人の商標登録が認められるとしたら、

「おい!俺は商標登録をしてるんだ。似ている商標を使うのはやめろ!」

「あぁ?うるせー!俺も商標登録をしてるんだ。お前がやめろ!」

っていう、不毛なやり取りになっちゃいますからね(笑)。
これでは、なんのために商標登録をするのかわかりません。
まぁ、実際にはこういうことが起こるケースも稀にあるのですが・・・。
とりあえず、制度の建前として、上述のようにご理解ください。

ではでは、これを逆の視点で見るとどうなるか?
ズバリ、「商標登録が認められた場合には、その商標を使うことに対して、他人の商標権の効力が及ぶことは基本的にはない」ということになります。

つまりは、その商標を使うことについて、誰からもクレームをつけられる心配がなくなり、実質的に安心・安全に使い続けることが保証される、ということになるわけですね。

これ、事業者にとっては、とても大きなメリットだと思います。
特に心理的な面で、企業経営者の負担を軽減するのではないでしょうか。

もし、商標登録をしていなかったら、自社の商品やサービスに商標を使うたびに、「他社に何か言われないかな・・・」とか、「他社に訴えられないかな・・・」とか、常に気にしておかなければいけないわけです。しかも、その商標を使う限りずっとです。

経営者の性格にもよるでしょうが、私のような心配性にとっては、こんな状態でビジネスを続けるのは気持ちが悪くてイヤですね(苦笑)。商標登録をしておけば、このような心配をすることなく、大手を振って堂々と商標を使えるのですから、これほど有難いことはありません。(ちなみに私も、自分の弁理士事務所の名称などをしっかり商標登録しています。)

ですから私は、この点こそが「商標登録の真のメリット」だと考えます。
商標登録は、事業におけるリスクヘッジとしても、大変有効なのです。
とても強力な「お守り」と言っても、過言ではないでしょう。

なお、この場合も、あくまで商品・サービスとの関係性の条件を満たしておく必要がありますから、気を付けてくださいね。前述の例でいうと、関連性のない商品「かばん」についてまで、「シオン」を安心・安全に使えるというわけではありません。

どうでしょうか、ご理解いただけましたでしょうか。

それでは、(ちょっと引っ張ってしまいましたが)これまでの内容を踏まえた上で、次回は「なぜ、商標登録をしないと怖いのか?」について、お話しをしていきたいと思います!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?