【3】商標登録のメリットとは何か?
こんにちは、商標弁理士Nです。
最近、世の中に明るいニュースが少ないですね・・・。
各地でコロナ感染者もまた増えており、心配になります。
さて、前回の記事では、
・商標登録とは・・・
その商標に権利を認めてもらうために、特許庁に登録をすること
・商標登録のメリットとは・・・
すなわち、商標権を保有していることによるメリット
というお話をしました。
では、「商標権を保有していることによるメリットとは何なのか?」について、今回はお話ししたいと思います。
「商標権を保有していることによるメリット」としては、主に以下の点が挙げられます。
1.その商標を、自社だけが独占的に使うことができる。
2.他社が、同じ商標を使うのをやめさせることができる。
3.他社が、似ている商標を使うのをやめさせることができる。
つまり、自社だけがその商標の使用を独占することができ、他社が同じ商標や似ている商標を使った場合には「やめろ!」と言うことができる、ということですね。これ、かなり強力だと思いませんか?
ただし、これらは、「商品やサービスとの関連性」が条件となります。
この点は、とてもとても重要です。
そう言われても、「どういうことよ?」という感じだと思いますので、少し詳しく補足しますね。
まず、商標登録は、「商標」と「商品やサービス」をセットで登録するものなんです。
よって、登録の申請に際しては、その商標を保護したい「商品やサービス」を指定することが必要です(これらを「指定商品」、「指定役務」と言います)。商品・サービスごとに商標登録をする、というイメージですね。
通常は、その商標を実際に使う商品やサービスを指定することになります。
で、すでにお話ししたように、商標登録をすると商標権という権利が発生するわけですが、この商標権は、指定商品・指定役務の範囲内でのみ有効ということになります。つまり、上記のようなメリットを得られるのは、あくまでも商品やサービスが共通している場合に限られるということです。
理解しやすいように、少し例を見てみましょう。
私の会社が、商品「Tシャツ」だけを指定して、「シオン」の文字を商標登録したとします。
➡1.その商標を、自社だけが独占的に使うことができる。
私は、商品「Tシャツ」について、「シオン」の商標を独占的に使うことができます。
一方、「Tシャツ」以外の商品は何も指定していませんので、「Tシャツ」以外の商品については、「シオン」の商標を独占的に使う権利は認められていない、ということになります。
➡2.他社が、同じ商標を使うのをやめさせることができる。
どこかの会社が、私に無断で、商品「Tシャツ」について、「シオン」の商標を使っていたとします。この場合、指定商品と商品が共通しますから、私は商標権に基づいて、この会社に対して「やめろ!」と言うことができます。
一方、「Tシャツ」以外の商品は何も指定していませんので、たとえば商品「かばん」に他社が「シオン」の商標を使っていても、指定商品とは関連性がないことから、「やめろ!」と言える権利はない、ということになります。
なお、他社が使っている場合、商標権の効力は、指定商品・指定役務とまったく同じ商品・サービスだけでなく、似ている商品・サービス(類似商品・類似役務)まで及びます。たとえば、実務上、「Tシャツ」と「タンクトップ」は、類似商品だとされています。すると、どこかの会社が、私に無断で、「タンクトップ」に「シオン」の商標を使っている場合には、この会社に対して「やめろ!」と言うことは可能です。
➡3.他社が、似ている商標を使うのをやめさせることができる。
どこかの会社が、私に無断で、商品「Tシャツ」について、「しおん」の商標を使っていたとします。ここで、「シオン」と「しおん」は、「似ている商標」と一般的には考えられます。この場合、私は商標権に基づいて、この会社に対して「やめろ!」と言うことができます。
一方、「Tシャツ」以外の商品は何も指定していませんので、たとえば商品「かばん」に他社が「しおん」の商標を使っていても、指定商品とは関連性がないことから、「やめろ!」と言える権利はない、ということになります。
なお、上述のように、どこかの会社が、私に無断で、「タンクトップ」に「しおん」の商標を使っている場合には、この会社に対して「やめろ!」と言うことは可能です。
なんとなく、イメージがつかめたでしょうか?
本当は、もっとスッキリとした説明もできるのですが、このようにお話しした方が分かりやすいかと思いましたので、少し遠回りをして見てみました。
要は、商標登録では、「どのような商品やサービスを指定するかが、めちゃくちゃ大事」ということです。もしこれをミスすれば、たとえ商標登録が成功したとしても、実質的にまったく意味のない登録となってしまう可能性もあるのです。
そして、商標登録をしたからといって、どのような商品やサービスについても、その商標を無双して使ったり、他社に対して「使うのをやめろ!」と言えるわけではありません。この点、非常に大事ですので、ぜひ覚えておいてください。
また、商標権(商標登録)が効果を発揮するのは、自社や他社が、あくまで「商品やサービスについて、商標を使う」場合です。後でまた詳しく書きますが、この点は(自称情報通の人たちも含め)非常に多くの方々に誤解が見られますので、要注意です。
以上、今回は商標登録のメリットについて、簡単にお話ししました。
しかし、商標登録のメリットはこれだけではありません!
事業者にとって、特にありがたいと思われるメリットがあるのです。
次回は、この「商標登録の真のメリット」について、お話しします。
その後で、「商標登録をしないと、なぜ怖いのか?」を見ていきましょう。
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