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構造デザインの講義【トピック5:超高層と大空間の構造とデザイン】第1講:産業革命と建築構造

20世紀産業革命が、建築界(思想、技術、芸術、など)にもたらしたもの

東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です



20世紀の建築の意匠・空間・構造

産業革命により、世の中は大きく変革しました。
建築界では、自然科学(力学、数学など)の発展と、鉄鋼材料の登場と建物利用により、建築表現が飛躍しました。

建築分野における自然科学の発展と、鉄鋼材料の登場は、建築の表現と可能性を飛躍させた

建築界では、視覚芸術のデザインと、材料の論理的関係に注目し、利用する動きが起こります。
・アーツ・アンド・クラフト運動、
・ドイツ工作連盟、
・新即物主義(ザッハリヒカイト)、
・アール・ヌーボー(フランス、ベルギーでの新しい芸術)、
・ユーゲント・シュティール(ドイツでの青春様式)、
など、
様々な運動が起こり、世界各地へ広がりました。

「材料、構法、意匠が虚偽でなく、真実かつ誠実である」という倫理観による運動であり、その後のモダニズムへとつながっていきます。
同時に、工芸の地位向上と、芸術の枠が拡大されました。
レンガ、木、鉄、ガラスなど、材料の表現と空間構成の様々な試みが見られました。

ウィーン中央郵便局
複雑な曲線を描く天井断面、細身の柱、ガラスの床タイルなど、これまでの建築・空間では見られなかった表現
(写真:PhotoAC, https://www.photo-ac.com/)

(写真:shutterstock, https://www.shutterstock.com/search/tavit)

学術、学問の世界にも変化がもたらされました。
スペイン・カタルーニャでは、A. ガウディがアール・ヌーボーの潮流から、独創的な世界を開花させます。
1900年前後のわずかな期間で、従来の建築界の価値観などが大きく変わりました。

セント・パンクラス駅
重厚な外観と、細身の鉄骨による軽量な表現が共存する
(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)
フィレンツェ・サンタ・マリア・ノベェッラ駅
細身の鉄骨による表現は、明るい空間を演出する
シドニー・セントラル駅
駅舎はフレンチ・ルネサンス様式であり、地元の石材が使用されている
細身の鉄骨により絵画的な表現がみられる
イタリア・フィレンツェ市内では、細身の鉄骨で複雑な曲線を描く骨組を見られる

この時代は、近代建築における主要な建築家かつ技術者として、オットー・ワーグナー(オーストリア)、L. サリバン(アメリカ)、V. ヴェルド(ベルギー)、H. ベルラーヘ(オランダ)、P. ベーレンス(いち早く工業化社会の要請に応える)、W. グロピウス、M. V. ローエらの活躍がありました。

W. グロピウスは、1919年、ワイマールに国立総合造形学校である「バウハウス」を開講しました。
工業技術と芸術の統合を目指した教育・研究が行われ、現代建築やデザインなどに多大な影響を与えました。
1933年、ナチスの迫害を受けて閉校となります。
バウハウスの多くの教員は、アメリカやイギリスなどへ移り、その理念や教義などは世界に広まりました。
そのような流れの中で、F. L. ライトやル・コルビュジエなどが活躍し始めることになり、建築界は新しい時代へと踏み出します。

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