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構造デザインの講義【トピック5:超高層と大空間の構造とデザイン】第2講:大スパンの構造とデザインと空間

長大スパンの橋と、大空間建築の骨組に、共通するものとは

東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です



構造とデザインは、建築も、土木も、共通の哲学が宿ります

超スパンの橋の技術は、今日の建築物の大空間構造に利用されています。
特に、大スパン空間の天井や屋根を支える骨組の梁は、中世より様々な構造が採用されています。
鉄鋼材料が登場して使用され始めた時代には、トラスやラチスが用いられていました。

長大スパンの橋と、大空間建築の骨組に共通するものとは
東京ゲートブリッジと、東京国際フォーラム・ガラス棟の、構造に共通するものとは

シドニー・ハーバーブリッジの華麗なるアーチ

橋は、車両や歩行者などを支えます。
それは、橋桁の鉛直分布荷重として、構造体に作用します。
ごくごく当たり前のことですが、桁に作用する力に対して、力学と構造を考えていくことになります。

シドニー・ハーバーブリッジは、シドニー湾にかかる鋼製のアーチです。
全長約1,500m、アーチ最上部は高さ134m、鋼材使用量は52,800トンにも達します。

アーチと桁の関係は、中央部ではアーチが上に、両端部ではアーチの中に桁が通るようにレイアウトされています。
中央部では、アーチからのハンガーケーブルで桁が支えられています。
端部では、桁がアーチに乗るような状態になります。

桁の鉛直分布荷重により、橋全体は両端固定の梁のモーメント分布になります。
すなわち、曲げに対して、中央部ではアーチが圧縮、桁が引張を負担します。
端部でも、桁が引張、アーチが圧縮を負担します。
これにより、桁はせいを小さくすることができ、薄肉の印象を与えます。

シドニー・ハーバーブリッジのアーチと桁の関係は、構造と力学によって合理的な関係にある

アーチや桁は、膨大な量の鉄骨構造となっています。
これにより、重厚な存在感を見せています。
しかし、シドニー湾のランドスケープとして、アーチと桁による線の表現により、絵画的な印象を与えています。


大空間建築では、地震による水平荷重時のみならず、風圧力による複雑な3次元挙動において、構造安定は重要な課題です。
建築の大空間構造にケーブルを利用した構造方式が採用されることがあります。
それは、鉛直分布荷重において、サスペンションは最適な形状ですが、水平荷重が作用する場合、その構造安全神話は崩壊します。
建築構造物の場合、屋根や壁などが設けられているため、これらの挙動も練成することから、時に複雑なものになります。

サスペンションの利用による、立体的なサスペン・アーチ構造
大胆な構造により、軽快感を与える
(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)
(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)

3次元の力学が工夫された橋の構造は、大空間建築の構造に応用されている事例を見ることができます。

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