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構造デザインの講義【トピック5:超高層と大空間の構造とデザイン】第3講:国際フォーラムの構造とデザインと空間

透明な大空間建築を成立される構造技術の総合デパート

東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です



東京国際フォーラム

東京都庁舎の跡地に建設された東京国際フォーラムは、東京駅近くの有楽町エリア、すなわちビジネス街、飲食街、商業施設など、都市の機能が集積したエリアに位置しています。
このような都市機能、物的情報、人流、交通、物流などのコンプレックスを受容し、その受け皿として、この巨大な建築物、大空間をプラットフォームとして機能しています。

この施設は、4つの多目的ホール、展示場、商業施設、会議場、アトリウムなど、多様な機能が設けられています。
このような機能の配置に対し、構造を分節することなく、建物全体の安全を考えた構造が計画されています。

この施設は、地下鉄、JRなど、往来数の極めて多い在来線や、新幹線が通り、騒音と振動に囲まれています。
加えて、道路の交通量も極めて多いエリアです。
これらのことから、施設の静穏な環境を実現するうえで、構造コアで施設全体を覆う計画は、様々な面から合理的なものです

人流・交通・物流で賑わうエリアにありながら、緑豊かな中庭を囲むようにレイアウトされた建物群が、特徴的な空間をもってゲストをもてなす

国際コンペでの審査では、「敷地の持つ特殊な条件を巧みに生かした案であり、また要求されたプログラムに対してもっともバランスのとれた案であるとともに、その機能的オーガナイゼーションはもっとも明快であった」と評価されています。


1.施設全体を覆う形で、構造のコアがゾーニングされています。
すなわち、会議棟とホールの外周部に構造を集約し、外殻としています。
これにより、施設全体を包み込み、内部空間は構造の負担を軽減し、中庭周辺の空間に開放感を与えます。

2.建築も構造も、基本単位によるグリッドで構成されています。
それは、9m, 4.5m, 2.25mのグリッドを基本単位とし、合理的な計画がされています。

3.構造部材の最適化により、短工期を実現しました。
特に、主体構造骨組の鉄骨が重要な役割を担っています。
壁面は鉄骨トラスの骨組で構成され、開口部や階段などがレイアウトされています。

4.さらに、逆打ち工法により、短工期を実現しました。
実際にこの施設を訪れると、地上と地下の異なった構造を見ることができます。


ガラスホールの構造デザイン

極めて透明で、他に類を見ない、レンズ形状の大空間は、山手線側の会議棟の構造コアと、鉄骨の大架構との関係性から、理解することができます。

屋根構造
全長約207m、中央幅約32mの平面スケールの大空間は、レンズ型の形状をしています。
ガラス屋根は、船底状の形態の構造体(鉄骨高さは最大12.5m)で支えられています。
屋根上面のレンズ形状に沿って配置されたサスペン・アーチ構造がポイントです。

下から見上げると、円形鋼管の圧縮材と、ケーブルのサスペンション材を見ることができます。
サスペンション材は、カテナリー曲線となるよう、船底に見える曲線の鉄骨のウェブを貫通しています。
屋根ガラスの荷重は、この鉄骨を介してサスペンション材に伝達されています。

天井を見上げると、3次元でレイアウトされたサスペン・アーチ構造を見ることができる

大屋根のサスペン・アーチ構造は、2本の柱をつなぐ部材としても利用されています。
立体的にも、平面的にも、サスペン・アーチ構造となっているのです。

立面と平面の構造の中に、サスペン・アーチ構造が存在している

大柱
2本の大柱は、柱頭と柱脚の断面を絞ることでピンとし、大屋根を支持しています。
鉄骨の2重鋼管とし、高強度コンクリートを充填して、座屈耐力を高め、剛性を向上させます。

高さ52mの大柱は、27.5mの高さで会議棟と接続されています。
大屋根やガラス壁面などの地震や風による水平力は、この部位から会議棟に力が伝達されます。
接合位置で応力が最大となるため、断面は最大径となっています。

デッキ
会議棟の4, 7階レベルには、空中散歩を楽しむデッキが設けられています。
これは、ガラス壁面などに作用する水平力を、会議棟に伝達するための構造体を兼ねています。

張弦梁
張弦梁を利用した水平梁は、ガラス壁面と会議棟を接続します。
サスペンション材が上下・左右に配置されることで、あらゆる方向の抵抗をとることができます。
両端ピンの圧縮材として機能する際、座屈抵抗として機能します。

ガラス壁面のマリオン
ガラス壁面からストラッドを設け、カテナリー形状にサスペンション材を設けることで、細い線材で構成された曲げ材として機能します。

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