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【読書メモ】『図書館戦争シリーズ』(著:有川浩)

図書館の自由に関する宣言
 第1 図書館は資料収集の自由を有する
 第2 図書館は資料提供の自由を有する
 第3 図書館は利用者の秘密を守る
 第4 図書館はすべての検閲に反対する

出典:「図書館の自由に関する宣言」
(「日本図書協会ホームページ」より抜粋, 1979年5月30日 総会決議)

最近、こちらの宣言を思い出す機会が増えているのは、こんな事案を目にすることが増えてきているからかな、と。

「焚書(ふんしょ)は序章に過ぎない。本を焼く者はやがて人も焼くようになる」。この予言のような警句を残した19世紀のドイツの詩人、ハインリヒ・ハイネの著書は20世紀、ナチスの影響を受けた大学生らに焼き払われる。そして日本で、新たな序章の頁(ページ)がめくられた。

出典:「現代の焚書と損なわれる知る権利」
(『産経新聞』2023年12月9日)

産経新聞出版では「多くの人に読んでもらいたい内容であることはもちろん、米国のベストセラーが日本で発行できない状態であることに疑問を感じている。不当な圧力に屈せず、発行を決めた」としている。同社にはすでにSNSなどを通じて抗議文や脅迫めいた書き込みが届いているという。

出典:「発行中止のトランスジェンダー本刊行へ 「不当な圧力に屈しない」産経新聞出版」
(『産経新聞』2024年3月5日)

4月3日に発行予定の翻訳本「トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇」を巡り、同書を扱う書店への放火を予告する脅迫メールが、発行元の産経新聞出版宛てに届けられていることが30日、分かった。複数の書店にも同様のメールが送られており、産経新聞出版は威力業務妨害罪で警視庁に被害届を提出した

出典:「「トランスジェンダーになりたい少女たち」 発行元や複数の書店に放火の脅迫、被害届提出」
(『産経新聞』2024年3月30日)

当初、角川出版から出される予定であったにもかかわらず、不当な脅しに屈する形で取りやめになった米国でベストセラーとなった一冊、産経新聞が出そうとしたら、角川さんと同じように放火などの脅迫を受けているようで、被害届も出されたようです。何としてでも、法の下でしっかりと裁かれてほしいところです、、京アニでの放火による大量虐殺事件との悲劇も踏まえて。

さて「本を焼く者はやがて人も焼くようになる」とは、19世紀・ドイツの詩人ハイネの言葉で、ナチス政権下で文字通り彼の書籍も「焚書」されています。そういや『キングダム』で話題の秦の始皇帝も「焚書(坑儒)」を行っていますが劇中ではどう描かれるのかな、、なんてことを考えていたら『図書館戦争』シリーズでも取り上げられていたなぁ、と思い出しました。

本を焼く国ではいずれ人を焼く

出典:『図書館戦争』

こちらシリーズ第1巻でのフレーズです。本シリーズはいわゆる近未来SFに分類されるのでしょうか。奇抜な設定ながらも全体を通しては本好きとしてはたまらない設定でもあるのですが、決して絵空事ではないとの事を今回のような現実世界でのキナ臭い動きをみてしまうと実感させられてもしまいます。今のところは好きな本を好きなように読める幸福がありますが、、守りたいものです。

どんな情報も利用者は自分の目で見て判断する権利があります。

出典:『図書館内乱』

続くシリーズ第2巻での題材は「情報活用(リテラシー)」となるのでしょうか。劇中での情報部門設立の動きを踏まえるとなかなかに重いテーマだと思います。最近の情報に対する現実世界の状況を踏まえると、シギント辺りとのバランシングは考えていかないとかな、とも。

その職業者にとっては馴染みの呼称ですから。どこの誰が勝手にそんなもん決めやがった

出典:『図書館危機』

シリーズ第3巻の主題は「言葉狩り」になるのでしょうか。私個人は基礎学問が歴史とのこともあるのか、古くからの言葉に対しての忌避感はあまりありません。時代時代で意味合いの異なってくる言葉も存在しますし、ある種文化的側面とも認識してるからで、その場その場で正しい使い方をすれば、あとは受け手の問題だろうと。

少なくとも思考停止状態での自主規制ってのはちょっと違うのではないかと思います、行き過ぎると「焚書」と同じですしね、、最初に読んだとき、現実の(オールド)メディアでも禁止用語がこんなにあるのか、と驚いた覚えもあります。

小説を書くことは
祈りのようなものなんです

出典:『図書館革命』

シリーズ第4弾は本編の最終巻、主題は「表現の自由」になるのかな。「情報」は受け手がリテラシーを持って処理できなくてはまずいと、そう思います。そして、現実世界でもアレな連中が折々でぶっこんで来る「人権擁護法案」などに代表される動きなど、決してフィクションにおさまらない危機感を喚起させてくれました。

少なくとも、ブラックボックスのまま進ませてはまずいと思いますし、そうならないためにもリテラシーを持って情報に当たっていくよう心がけたいところ、、情報源が誰であっても「盲信者」にはならないよう、批判とまでいかなくても、自分の言葉で再構成するようにしないと、とも。

あと、巻末の児玉清さんの対談が嬉しくもあり哀しくもありました。稲嶺さんのモデルが児玉さんってのは、凄くイメージがあってるなぁなんて思いながら。

この他、外伝が2冊ほど出ていますが、こちらはまぁ、有川さんならではの会話のテンポやベタ甘な展開が面白く、本編が面白かった方であれば楽しめると思います、、そういや、映画もよくできてたなぁ。

とりあえず、くだんのトランスジェンダー本、いつもなら(手間もあるので)アマゾンで済ませるのですが、久々に店頭で探してみようかな、、そうそう、地元の図書館にもオーダーを入れておかないと、ですかね。

なお原作者のアビゲイル・シュライアーさんも今回の動きには注目しているようで、、ジャーナリストってのは、本来こういう方々を指すのではないかと、あらためて。

シュライアーさんは31日のXで「トランス活動家は日本での出版を阻止できなかった。彼らは現在、この本を扱っている書店を焼き払うと脅している」との懸念も書き込んだ。

出典:「「トランスジェンダー本」発売巡る脅迫事件 米国人著者が発行元の産経新聞出版にエール」
(『産経新聞』2024年4月1日)

また少し前に、京アニ事件を想起させる事案があったのも思い出しました。

著者・暇空茜の公式Xでは「アニメイトよりネトゲ戦記の予約打ち切り、店頭販売中止の予告が出るそうです。理由は口止めされてますが、俺の責任で言います。この発言の件で罰を受ける人がいるなら俺の責任です。弁護団もなるくんもKADOKAWAもアニメイトも関係ありません」と前置き。

「理由はアニメイトに、暇空茜の本を販売するなら京アニ事件を起こしてやるとの脅迫が届いたからだそうです。アニメイトが客の安全を考え、こういう対応になったことは残念ですがしょうがないと思います」と報告した。

出典:「アニメイト、書籍『ネトゲ戦記』取り扱い中止 著者・暇空茜が理由説明「脅迫が届いたからだそうです」」
(『ORICON NEWS』2024年2月16日)

「アニメイト」は16日、今月21日にKADOKAWAから発売予定の男性の著書について「諸般の事情」により取り扱いを中止すると発表。男性は16日、自身のXで理由を明らかにしている。

出典:「書類送検「暇空茜」氏「逮捕は必要なかったって事よ」 NHKメモ拡散、著書は一部販売中止」
(『産経新聞』2024年2月17日)

言論封殺以外の何物でもないと思います、産経さんは取り上げていたようですが、その他のオールドメディアではロクに扱っていなかったような気もしますが、さて。

京アニ事件を想起させるような脅迫罪なんて、公安監視対象でもある日本共産党やオウム真理教(現アレフ)と同じカテゴリーに属するとみなされても仕方ない話と思いますが、オールドメディアの皆さまは危機感がないのかな、とも言いたくなります、テロリズムを肯定するのか、と。

オールドメディアが恣意的な情報を垂れ流している存在に過ぎないのは昨日今日に始まった話でもないですが、そういった意味ではSNSのことをとやかく言えるものでもないとの自己分析が出てこないのもまた、どうにも不思議でもあります。

その他最近では、大谷選手への取材の仕方などを見ていると、やってることはいわゆる迷惑系Youtberと変わらないし、、というか、迷惑系Youtberが既存オールドメディア(TV、ラジオ、新聞)の模倣犯なだけとも見てとれますかね、、まぁ、なんにせよ、リテラシーは大事だと、あらためて。

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