Birthday(花葬)

もしもし、こちら地球放送局第二営業所。

好きな人が言っていた言葉を思い出した。
「月夜の踊り場でずっとこの時が止まるまで一緒にステップを踏んでいたい」


これから、調査に行ってきます。

大学の講義をただで聴いてみた。
あの時聴きたかったけど聴けなかった分を聴いてる。あ、あそこの学生居眠りしてる。勿体無いなあ。

流行りの曲を聴いてみたくなった。
私も、聴きたいな。
一瞬だけ、失礼します。
このバンドの音色はきっと世界を救えるね。君はセンスが良いよ。
ずっと君と一緒に聴いてたいけどそろそろ違うところに行くね、ありがとう。


ライブにただで参加してみた。
爆音と、人間たちの色んな感情が溢れていた。景色がカラフルな色で染まっていく。
熱量の中で、のぼせそうになる感覚を思い出した。 
この世に、ありがとう。

優しい人がいたので、傍にいてみた。
私の体は透明だから、気付かないみたい。
気配だけ感じてるみたい。
それだけでも、いいよ。ありがとう。

芽吹く前の才能を見つけたから、絵を教えてあげた。
ここは、青色。ここは、桃色。
君には世界を救う才能がある。私が言うんだから、間違いない。
このふたつの色、忘れないでいて。虚構に色付けしてあげて。自分のことを、信じていて。

夢を見せてあげた。この手一杯に零れる水とチューリップの花束で花冠を作って被せてあげた。
目覚めたら、不思議そうな顔をしながら泣いてくれた。ありがとう、伝わったんだね。


私の声なんて聴こえなくていいよ。
ああ、聴いてくれたみたいだ、ありがとね。

愛犬のリラが目を細めてあくびをしている。
幸せ?生まれてきてくれて、ありがとう。
言葉持たずとも、伝わっているよ。

もやもやした曇天を見つけた。何となく、近づかなかった。

自殺を考えている人がいた。
君は、どうして自殺しようと思ったの?
まだまだこれからの人生は長い。何が起こるかなんて誰にもわからない。
私は君を助ける為にここにいるの。
エゴかもしれないけど、無碍にしないでよ。
一緒に、いようよ。生きて。生きて。

桃源郷を見つけた。森の奥深くで白く煌々と光っていた。楽しそうだった。幸せそうだった。



少しいたずらした。気づいてくれるかな。

あの人のところには行かない。


この世界が戦争や疫病に倒れそうになっても、搾取や蹂躙で悲しみの慟哭をあげていたとしても、どうか生き延びて。
絶対に、君のような人たちが世界を立て直していけるんだ。
私の声を聴いて。

君が直接見て触れて感じれるのは今だけなんだ。心を伝えられるのも今だけなんだ。
世界や誰かを愛し抜いて。
刹那を刻んで呼吸をして。
私から言われるのは、説得力無いかもしれないけど。なんてね。


予約席が空いたらしいのでそろそろいってきます。
あそこの晴れ間の隙間から、下界への階が出てる。
あそこには、春が綻びかけてる。

君の中は春の庭のままでいて。
どうか、全人類へ。
日日是好日、グッドラック。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?