第238回 今年の読書体験振り返り

1、今年の歴史書ベスト3

Twitterで

#2018年度歴史書ベスト3

というハッシュタグが流行っているので気になっていました。

年末に向けて投稿が増えていますが、

2018年度であれば3月まであるんですよ!

これから自分の読書体験を塗り替える名著が出版されたらどうするのでしょう。

と言いつつ自分も発信したくてうずうずしたので選んで見ました。

2、増やすよりも絞る方が難しい

まず、選ぶ基準は

・2018年に出版された本
読んだのが今年でも昨年以前に出版されたものを除きます。

・読了したもの
どんなに話題になっている作品でも、
面白くて読み終えたくなくて積ん読しているものでも
読了していないものは除きます。

ホモデウスはまだ前巻しか読んでいませんし、
室町幕府全将軍・管領列伝もまだ途中ですので該当しません。

これでようやく3本に絞りました。

過去のnote記事や読書メーターに書評を公開していたものです。

南三陸の山城と石塔

これは、個人的に思い入れが多すぎて外せません。

著者の田中則和氏は宮城県の中世考古学の先駆者であり、直接的にも間接的にも多くのことを学ばせていただいています。

南三陸町は東日本大震災で大きな被害を受けた町。

集団移転先に選ばれた場所が中世の山城跡。

本来であれば周知の遺跡である場所を避けた復興計画が作られるべきところですが、

これまで大きな開発がなかった町には文化財の専門職員がいるわけでもなく、調整のノウハウも蓄積されていませんでした。

著者は別の自治体の文化財課長まで勤めた立場で、一作業員として調査に参加。

地元の人との交流とフィールドワークを通じて、文献資料が乏しい地域の中世の姿に迫る意欲作。

個人が行う地域研究のケーススタディーとしてももっと知られて欲しい取り組みです。

②辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

普段、対談ものってあんまり手を出しません。

特に専門が違いすぎる方同士の対談だと上澄みというと聞こえはいいですが、なんとなく深掘りが足りないというか、読後に残るものが薄いというか。

その点、この本は読後に何か発信したくなる熱量を受け取りました。

互いに課題図書を選定して読み込んでから対談に臨む「読書合戦」という形式がそうさせるのでしょう。

本当に誰かやりませんか、読書合戦。

今ならスカイプでもなんでも相手の顔を見ながら対談できますよね。

何回かやって盛り上がって行くようなら、配信してみてもイイですし。

私、課題を課されると頑張れるタイプです。

③初期室町幕府研究の最前線
ここまでわかった南北朝期の幕府体制

Twitter経由で知った本として初めて購入した本。

亀田俊和、呉座勇一など気鋭の研究者が揃って論考を載せた骨太な本。

その昔、今谷明の足利義満の王権簒奪論や網野善彦の後醍醐天皇の偉業の王権論に胸を熱くした身としては、

研究の進展に隔世の感を覚えるとともに、まだ熱くなれることに喜びを感じます。

著者群が同世代に近くなってきたことから、肌感覚としても同調できてしまうからツボ、という部分もある気がします。

鎌倉幕府研究の最前線とか早く読みたいです、先生!

考古学も◯◯研究の最前線!とか新書でバンバン出せばイイのにね。それが研究の裾野を広げることになるというのに。

3、選ぶことは自分を晒すこと

結果、時代は全て中世。

①は地域密着型、②は対談企画、③は新書という毛色の違うものになりました。

自分が求めている情報、指向性も見通せる感じですね。

書棚をみると、その人となりがわかる。

どれもゴリゴリの専門書とは違うので、歴史好きの読者の皆様で未読の方がいらっしゃれば是非読んでみて感想をシェアしてくれると嬉しいです。

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