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映画史上最大の生殺し『ジャスティス・リーグ ザック・スナイダーカット』を観たよ。

 観よう観ようと思いながらも4時間の長さに尻込みし早数か月。好きな時に止められる/DISCを出し入れしなくていい配信のメリットが大きく、ようやく食指を伸ばしました。真っ暗すぎてモニターの明度を上げるか迷いながら数回に分けて観たので、ふんわり感想書いておきますね。

最も贅沢な見比べ体験

 本作の公開までの経緯や、起こったイザコザは有名なので、全部端折りますが、劇場公開版においてどこからがジョス・ウェドンが持ち込んだカラーだったのかがハッキリした点で、大きく興味を誘いました。途中に挟まれるユーモアや有名なエンドロール後のオマケシーンはもちろんのこと、冒頭の「Everybody Knows」が流れるオープニングがない=アレはジョスの仕事だったことが判明した時は、本当にビビりましたね。劇場公開時、「ザ、ザックの映画を観ている~~~~~↑↑」とか喜んでいた当時の俺を殺してくれ。

 それだけでなく、劇場公開版にあったシーンも構成が変わることで意味合いが足されていたり、映像の彩度が低い&画角がスタンダードサイズであることから生じる「観たことあるのに観たことない映画になっている」感には、頭がクラクラしました。同じ素材でも、調理が変われば味は微細に、時には大胆に変化する。

 配信という、スクリーンの拘束時間に囚われない形態だからこそ世に出たであろう『スナイダーカット』は、どこまでもザック・スナイダーとザック・スナイダーのファンのためのもので、一切の遠慮がないからこそ味付けも当然過激なものに。冒頭のワンダーウーマン様の活躍もあれだけBVSで男共が悩んでいた「正義的活動の犠牲」を考慮しないパワー解決だし、全編シリアスに、よりダークに。バリーくんがどんなに面白いこと言っても「なんか笑っちゃいけない空気」を感じてしまい、クスリとも笑うことは出来ませんでしたね……ラストのマーシャンくんは除く。

ステッペンウルフ、悲哀の平社員

 アベンジャーズよりも歴史の深いヒーローチーム・ジャスティスリーグのラスボスに選ばれながらも、「小物すぎる」「目的がよくわからない」「寝起きのスーパーマンが強すぎる」の三連コンボを喰らい今一映画の盛り上がりに寄与できなかったステッペンウルフくん。彼もまた鎧が新しくなる&説明シーンが大幅増加という好待遇により、少なくとも前述の「目的がよくわからない」は解決しました。……解決した結果より小者臭が増すとは予想外でしたが。

 原因はやはり、新規シーンにて真のラスボスであるダークサイドがついにお目見えしたことでしょうか。それにより我らがステッペンくんは「前座」であることが強調され、しかも彼は上司であるダークサイドに見限られているという状況から物語がスタート。それを見返すために例の箱を取り返すぞ!と意気揚々地球に営業を吹っ掛けある程度の売り上げ(マザーボックス)を取ってきても上司は誉めてはくれないどころか電話にも出てくれず、連絡は中継ぎ役(デサートさん)を通してしか出来ないという徹底的な信用の無さ。

 それでいて最終的な結末は変わらないわけですから、寝起きのスーパーマンとその仲間たちにまたしても負けるわけです。頑張っても出世できないサラリーマンの悲哀を背負って数年越しに我々の元に帰ってきた、愛しの愛しのステッペン太郎。もういいッ…!休めッ…!と言ってあげたくなるヴィランは初めてでした。

まだ見ぬスナイダーバース

 こうして、ついにザックが手掛けた本来のジャスティスリーグは観られた。が、当初のDCエクステンデッドユニバース構想に戻ることは、もはや難しいだろう。『ジョーカー』がユニバースとはハッキリ一線を引いて一本の映画としてのクオリティを高めて評価を得たり、『スーサイド・スクワッド』にジェームズ・ガンを抜擢して新生させたりと、今の状況を鑑みれば『スナイダーカット』は一回こっきりの“特例”としての印象がより強まっていく。そういえば、『ジャスティスリーグ』は当初二部作で制作され、MCUで言う所のサノスの立ち位置になるダークサイドとの闘いが複数の作品をかけて語られる予定だった……という話を聞いたことがある。

 それを踏まえれば、本作のエピローグは「もはや実現しない幻のジャスティスリーグ2」を幻視するという、全世界のアメコミファンを生殺しにするヤバい映像だった。闇堕ちしたスーパーマンの元に集う、バットマン、サイボーグ、メラ、デスストローク、フラッシュ、ジョーカー。ヒーロー/ヴィランの垣根を越えて集結する新たなチームと、荒廃した世界の映像。もしやDC版『シビル・ウォー』のようにバットマン陣営とワンダーウーマン陣営に分かれて内戦したり、『フラッシュポイント』でのマルチバース導入で別世界のジャスティスリーグと闘ったりする構想もあったのだろうか。いやめっちゃ観たいんですケド!?!?!?!? うっかり #releasejusticeleague2 みたいなタグでワーナーくんに圧力かけちゃうところだった……ってもうあるの?


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