見出し画像

父さんはサンタ

*まず僕が書いてみますね。

超短いエッセイですが、こんなカンジでラフなものでもいいかも、です。

「父さんはサンタ」

クリスマスイブ。

「さっきサンタに会ってな、これ慎二に渡してくれと、あずかってきた」。

父が、僕にそう言いながら、おもちゃのライフルを渡してくれた。

僕は大喜び。

パーン、パーンと弾を打つ真似をする。

ヒーローになったような、いい気分。

まるで西部劇の主人公。

そして、クリスマスケーキをみんなで食べて、

キャンドルを、ふーと、消して、みんなで笑って、

下手くそなクリスマスソングを歌って

テレビを見て、

しあわせな気持ちで眠りについた。

どんな夢を見たんだろう。

プレゼントをもらったとき父に聞いた

「ねえ、どこでサンタさんに会ったの?」

「ああ、大呉の前だ」(大呉は当時、地元で一番大きかった百貨店)

「へえー」

「悪いけど、忙しくて慎二くんの家に行けないんで、これを渡して…と預かった」

「そうか!」

今は事情がよく分かる、よくぞそんなうそを考えた。


まだ、サンタを信じていて、家の煙突が細いので、

これじゃサンタさんが入れないと、

真剣に考えていた。(当時は五右衛門風呂で細い煙突があった)

そんなこんなで、クリスマスも終わり、お年玉がもらえるお正月に。

あのころは、コンビニとか当然なくて、お正月は店も閉まっていて、

母さんはお正月の準備で大忙し。

「正月なんかこなきゃいいのに」とぼやいていたのを思い出す。

無邪気に、いろいろなことを信じられてた幼い頃。

もちろん、戻ることは出来ないし、戻りたいとも思わない。

あれから、幾つかの恋をして、いろんな人に出会って、裏切られたりもして、

仕事をして、結婚して、子供が出来て、少し年老いて、またクリスマスを迎える。

今、あの時の父親の気持ちが痛いほどわかる。

ただ僕を喜ばせたかったんだと。

それは、何の見返りも期待しないで、

こうして欲しいという思いもなくて、

ただ、僕の笑顔をみたかっただけなんだろう、と。

小さな写真になった父に、てれくさいけど、無言でつぶやく。

ありがとう…。