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「小説」を読む効用~娯楽の読書を大切にする理由。


「読書傾向から、あなたに備わっている『文章スキル』がわかる!」と言ったら、聞いてみたいですか?

「読む力」と「書く力」は表裏一体で、「読める文章」以上のものを「書く」ことはできないというのが、私の考えです。つまり、読解力が備わっていれば、もし今「書くのが苦手」「書くことに慣れていない」としても、力を伸ばしていける可能性があるということ。

では、質問しますね。

あなたが好んで読むのは、次のどちらですか?

A.小説などのフィクション
B.実用書やルポなどのノンフィクション


私の場合、編集者・ライターとして仕事をするまでは、小説などフィクション一辺倒の読書でした。

読書=娯楽

そこから何か知識を得ようという読書よりも、現実とは違う世界を「体感」するために、遊園地に行くようなのと同じ感覚で本を読んでいました。

でも、就職した出版社が出していたのは、主に自己啓発や実用書だったのですね。というわけで、社会人になってから渋々(?)そうしたジャンルを読むように。

でも、これはこれで、とても良いきっかけでした。

「伝わる・わかりやすい文章」とは、どのようなものか。

多くのサンプルに接する中から、自然と学ぶことができたからです。

…とここまで読んできたあなたは、「文章スキルが備わっている人」に当てはまるのは、

B.実用書やルポなどのノンフィクション

を選んだ人かと思うかもしれません。

残念ながら、答えはNO(笑)

私がここで言いたいのは、web上で共感を得る文章を書けるかどうか、というスキルの有無について、です。

それが備わっているのは、

A.小説などのフィクション

を好んで読む人のほうではないか、と考えています。

その理由は、

「小説をよく読む人は、登場人物(現実世界で言えば【相手】)の気持ちになって考え、その世界を共有するのがうまい」「そのため老若男女が集う人間関係の中でも、思いやってコミュニケーションがとれる」

と思うからです。

これは、顔の見えない不特定多数がアクセスしてくるweb文章で共感を得るために必要なスキルでもあります。

いわゆる「読者目線」を「体感的」にわかっているのが、小説をたくさん読んでいる人のアドバンテージだと思うわけです。

小説を読む効能を「再確認」したのは、この1冊に出会ったから。

はだかんぼうたち(江國香織/角川書店)


最近、なかなかじっくり腰を据えて小説を読む時間が持てないのですが、翌朝、息子のお弁当作りのない夏休み中は、夜更かして読書を楽しむチャンス!少しずつ味わいながら読みました。

この小説、軸となる登場人物は4人なのですが、彼(彼女)らを取り巻くのべ10人ほどの「老若男女」の視点で、入れ替わり立ち代わり語られていくストーリー展開なのです。

こう聞くと、「頭がごちゃごちゃになりそう」と思うかもしれません。

でも、そこはさすが江國さん。さらっと読めるのに、ディティール細かい描写で、映像を想像させる文体で物語の世界に引き込んでくれます。

1つの出来事をめぐっての感情がこうも違うのかと「自分と別の人間」の心の内を想像する面白さ。それがこの作品の魅力です。

そして、これは現実に生きる自分の世界にも当てはまることなのです。

コスモス

私の「見方」「感情」がすべてではない。

「わかっている」「わかりあえている」と思っている人の心の中でさえ、想像とは違うかもしれない。

もちろん、気を遣いすぎて、本音を書けなかったり、内容がぼんやりする
のでは意味がありません。

でも。

文章を書くときに、

「これを読むのは、自分と同じ価値観の人ばかりではない」

あるいは、

「伝わらないかもしれないけれど、伝えたい」

ということを意識するのと、しないのとでは、選び取る表現や書き方の切り口が少しだけ違ってくるのではないか、と思います。

仕事のための読書は、どうしても実用書や雑誌などフィクションではない「知識を得るための書籍」が主体になりがち。

ですが、ときには、この記事を思い出して、小説を読むことも楽しんでみて下さいね。

読書は娯楽

文章を上達させるために…と目を釣り上げるのではなく、肩の力を抜いて読むことがポイントです



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