ラブレターを書くような人生ではないと思っていた。机に向かって、お気に入りの万年筆で言葉を綴る今が上手く飲み込めない。頭を悩ませ浮かぶは陳腐な常套句。四十にもなっても語彙の貧しさは出会った頃のまま。妻に送る『ありがとう。今でも愛してます』に代わる言葉を探す穏やかな夜は、僕の秘密だ。

画像1 【140字小説8】

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