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朝比奈ケイスケ
2020年9月25日 18:58
今にも雨が降りそうな曇天。文則は目の前にいる姿を見つめていた。「文則、私と別れて良かった?」 真剣な表情でキミは不意に尋ねた。 文則は返す言葉を模索して、口をつぐんだ。 オレは後悔しているよ。 心に引っ掛かったまま本音は言える訳もない。それは決して口にしてはいけない言葉。分かっている。仮に口に出してしまえば。ダムが崩壊したかのように感情が溢れ出すことは想像に容易だった。 キミは、文則
2020年9月19日 16:38
「あと、何回殺せば、救われますか?」 誰もいない明け方の公園のベンチで誰に向けた訳でもない私の言葉は、頭の中で跳ね返ってくる。自棄にでもなりそうだ。いや、もうなっているか。 殺して、殺し続けたのかを考えるだけで胸の辺りが締め付けられるような痛みが走ることにも慣れつつある自分がいる。心臓なのか心と言う未確認因子なのかは分からないままに、不意にやってくる痛み。付き合っていくことが宿命めいているのは
2020年9月12日 14:16
敷地の端に追いやられた喫煙所。灰皿も撤廃され、今はボロボロになったベンチが二つ並んでいるだけの空間に立ち上る紫煙を見つめながら、ピーマンみたいな会議で挙がった話題を思い浮かべた。「五年目を対象とした研修の内容は何が良いですかね? 皆さんは五年目の時何を思っていましたか?」 僕にとってのその時期は四年前、僕は右も左も分からない場所で一人で仕事をしていた。引き継ぎなんて名ばかりで本質を抜け落ちた
2020年9月4日 22:22
「今年は大恋愛を経験するでしょう」 正月を過ぎた頃、酔った勢いで立ち寄った路上の占い師に言われた一言が胸に残っている。冴えない日常に差し込む希望は、少しばかりの活力になっていたことは否定できない。 それから日々の過ごし方が変わった。本質的には何も変わっていなかったが、外出するときには僅かばかりの期待を抱いていた。でも春が訪れようとした頃、世界は不穏な表情を浮かべ始めた。僕も例外では無くて、不穏