渋谷の交差点で
スマホで顔隠しても隠れないが、藁にもすがる思いで日差しを隠しながら渋谷を歩いていた夏の話
暑いからといって猫背になってはいけないと思い、背筋を伸ばし、信号が変わるのを待っていた。
突然後ろから声をかけられた。
「交差点、一緒に渡ってくれませんか?」
「どの方向ですか?」自分でもビックリするぐらい自然に返答をしていた。
「センター街の方です」
「分かりました」顔を見られて引かれるのが怖く、前を向いたまま会話を続けた。
ここで位置関係を記しておこう。
渋谷にはハチ公前、というのがある。その近くにスクランブル交差点への入り口が待っている。場所的には広い方なので、人が多いと交差点に出るまでに前から来る人波に押し返される事もある。
ないか、、、
ハチ公前からセンター街の方には対角線上に向かう為、距離はそれなりにある。
話は戻る。
私は180cm以上あるので見失いはしないだろうと思っていたが、カッコつけの為と後悔しない様にこう伝えた。
「鞄の紐、握っておいてください」
袖となぜいえなかったのか、、、
「分かりました」
左手に全神経を集中させて重さを感じた。
信号が青に変わる。
「行きますね」
「はい」
少し歩いた所で少し引っ張られる感覚があった。
「少し早いです」
ゆっくり歩いていたつもりだったが、心拍数爆上がりの状態では無理だった。
「ごめんなさい」
交差点の真ん中まで差し掛かった時だ。ふと左手が軽くなった。反射的に振り返る。
そこには右手を出したまま止まっている女性がいた。
「ここです」
どこだと言うのだ、、、
彼女の手を取り、渡り切るまでの時間は時間にして数秒、あっという間だった。
「あの、、、」
「あぁぁ、ごめんなさい」悪い事はしていない。
「ありがとうございました。貴方だけでした、渡らせてくれたのは」
「いえいえ」
どんな人に声を掛けていたんだ、、、
「これから面接なんです、間に合いそうで良かったです」
「それは良かったです。頑張ってください!」
「はい、あの良かったら今日の夜お時間ありませんか」
えぇぇ、今日に限って空いてないと言う男
「こちらにいつぐらいまでいるんですか」
「面接に受かったらずっといる予定です」
ずっと、って良い響きだ。
「そしたら、連絡やり取りしながら合わせましょう」
「はい」
そんなこんなで彼女はセンター街へと消えていった。
少しは夢、見ても良いですか
続きはまた書こうと思います。
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